第25話「指揮権」
「このままじゃ持たない」
氷室の言葉が残る。
現場の空気は重い。
誰も動かない。
(完全に止まってるな)
「どうする」
氷室が聞く。
周囲の視線が集まる。
期待。
依存。
(終わってる)
俺は一歩前に出る。
「簡単だ」
全員を見る。
「俺が指揮を取る」
空気が凍る。
「は?」
係長が声を上げる。
「何言ってるんだお前――」
「黙れ」
一言。
場が静まる。
(通るな)
「今のやり方じゃ遅い」
「証拠、手続き、確認」
一つずつ言う。
「全部、無駄だ」
係長が怒鳴る。
「ふざけるな!それが警察だ!」
「だから失敗する」
即答。
沈黙。
氷室が口を開く。
「……続けろ」
(乗ったな)
「指揮系統を一本化する」
「判断は即断」
「責任は全部、俺が持つ」
公安の男が言う。
「権限がない」
「関係ない」
即答。
「結果で証明する」
沈黙。
氷室がゆっくり言う。
「……一時的に認める」
空気が変わる。
係長が叫ぶ。
「管理官!?」
「現場判断だ」
一言で封じる。
氷室がこちらを見る。
「外したら終わりだ」
「外さない」
短く返す。
(決まったな)
全員に向けて言う。
「全員、聞け」
視線が集まる。
「今から指揮は俺が取る」
誰も反論しない。
(支配完了だ)
「まず動く」
「南を封鎖しろ」
「次に北を監視」
「東は放置でいい」
指示が飛ぶ。
全員が動き出す。
(早いな)
氷室が小さく呟く。
「……これが本来の速度か」
(やっと気づいたか)
数分後。
無線が入る。
「対象、確保!」
静寂。
そして――
空気が一変する。
係長が呟く。
「……本当に当たるのか」
(今さらだ)
氷室が言う。
「これで分かったな」
公安の男も黙る。
完全に流れが変わる。
俺は一言だけ言う。
「次からは、俺のやり方でやる」




