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第22話「遅れ」
現場に着いた時には、もう終わっていた。
規制線の内側。
担架で運ばれる被害者。
「被害者、重傷です」
(間に合わなかったか)
氷室が低く言う。
「なぜ分からなかった」
「条件が揃ってなかった」
「何が足りない」
「情報だ」
沈黙。
公安の男が口を開く。
「つまり、お前は全てを見ているわけじゃない」
「当然だ」
即答。
氷室が拳を握る。
「だが今までは止めてきた」
「運が良かっただけだ」
「違う」
氷室が否定する。
「再現していた」
「だが今回は止められなかった」
(正確には違う)
「“遅れた”だけだ」
氷室がこちらを見る。
「違いは何だ」
「結果だ」
沈黙。
重い空気。
周囲の警官たちも言葉を失う。
(崩れ始めたな)
公安の男が静かに言う。
「依存していた」
誰も否定しない。
氷室が小さく息を吐く。
「……立て直す」
その言葉に、力はない。
(無理だな)
無線が鳴る。
「次の通報、入りました!」
氷室が顔を上げる。
「行くぞ」
(どうなるか見ものだ)




