第13話「介入」
「その件、引き継ぐ」
現場の空気が変わる。
振り向く。
黒いスーツの男。
警察とは違う、無駄のない気配。
(来たか)
「所属は?」
氷室が問う。
「内閣情報調査室――公安だ」
静かな声。
だが圧がある。
「これは国家案件だ」
(やっぱりな)
「ここから先は我々が処理する」
氷室が一歩前に出る。
そして口を開く。
「こいつは私の管轄だ。介入は認めない」
空気が張り詰める。
公安の男がわずかに目を細める。
「……現場の判断で拒否するつもりか」
「権限の範囲内だ」
即答。
一歩も引かない。
「この案件はすでに警察の手にある」
公安の男が首を傾ける。
「もう越えている」
「国家レベルだ」
氷室は動じない。
「だからどうした」
沈黙。
圧がぶつかる。
公安の男の視線が、ゆっくりと俺に向く。
「その男か」
(来るな)
「通常の捜査ではあり得ない動きをしている」
「予測精度が異常だ」
氷室が言う。
「問題ない」
「結果は出ている」
公安が一歩近づく。
「説明しろ」
「断る」
即答。
空気がさらに冷える。
公安の男がわずかに笑う。
「やはりな」
「協力しろ」
「断る」
沈黙。
数秒。
「国家の命令だ」
「関係ない」
氷室が横から言う。
「言ったはずだ。こいつは私の管轄だ」
公安の男が息を吐く。
「……いいだろう」
一歩引く。
だが視線は鋭いまま。
「監視下に置く」
(想定通りだ)
「勝手にしろ」
俺は言う。
氷室は小さく笑う。
「逃げるなよ」
「逃げるのは犯人だ」
短く返す。
公安の男が呟く。
「……危険だな」
(今さらだ)
氷室が言う。
「だが使える」
沈黙。
そして――
三者の関係が決まる。
警察。
国家。
そして俺。
(面白くなってきた)




