7.新たな力
森の静寂が戻っていた。
先ほどまでの激しい戦いが、まるで嘘のようだった。
レオンは深く息を吐いた。
「……終わったか」
体が重い。
さっきの戦いのあと、急激に力が抜けるような感覚があった。
足が少しふらつく。
「大丈夫ですか、レオン!」
エリシアが慌てて駆け寄る。
水色の髪が揺れる。
「平気……ちょっと疲れただけだ」
レオンは苦笑した。
その横で、リゼットは腕を組んでいる。
「疲れるの当たり前でしょ」
赤いツインテールが揺れる。
「アンタ、自分の魔力どれだけ流してると思ってるの?」
レオンは肩をすくめた。
「魔力か……初めてだからなぁ、知らないよ」
リゼットはニヤリと笑う。
「ほんと、とんでもない能力ね」
エリシアはまだ顔が赤いままだった。
「……あの」
小さく呟く。
「さっきの……」
レオンの頭に浮かぶ。
エリシアとのキス。
そしてリゼットとのキス。
「……忘れてくれ」
レオンが頭を抱えると、リゼットが吹き出した。
「無理よ」
「むしろ忘れるわけないじゃない」
エリシアの顔がさらに赤くなる。
「リ、リゼット!」
「はいはい」
リゼットは軽く手を振った。
「とりあえず村に戻りましょ」
「さっきの魔族の話、報告しないと」
三人は森を歩き出した。
⸻
リーベル村の入り口に差し掛かると、見張りの村人が気づいた。
「おお!三人とも!」
「無事だったか!」
レオンは軽く手を上げた。
「大丈夫だ」
「ちょっと魔物が多かったけどな」
村人の表情が曇る。
「やっぱりか……」
「最近森の様子がおかしいんだ」
三人はそのまま村長の家へ向かった。
⸻
村長の家で話を聞いた村長は、深く息を吐いた。
「……魔族か」
重い声だった。
レオンは頷く。
「間違いない」
「それに、七魔将の一人にも会った」
エリシアが小さく息を呑む。
村長の顔が厳しくなる。
「七魔将……魔王直属の幹部だ」
リゼットが眉をひそめる。
「やっぱり有名なのね」
村長は頷いた。
「魔界ノクスヴェリア……魔王が支配する世界、奴らは長い間、人間界を狙っている」
そして続けた。
「理由は一つ……聖核だ」
エリシアが小さく呟く。
「世界の心臓……」
村長は静かに頷いた。
「聖核は、この世界の中心にある、そこからエーテルが流れ、世界樹を通して人間界へ循環している、その聖核を魔王が手に入れることで、人間界を滅ばし、神界へ攻めようとしているのだろう」
レオンが腕を組む。
「だから魔界は聖核を狙うのか」
「その通りだ」
村長は言った。
「最近、魔物が増えているのは、おそらく魔界が聖核の位置を探っているのだろう」
部屋に沈黙が落ちた。
やがて村長が言う。
「三人とも、今日はもう休め」
「無理をするな」
レオンは頷いた。
「分かった」
⸻
村長の家を出た三人は、夕暮れの村を歩いていた。
その時だった、リゼットが急に立ち止まる。
「ねぇ」
レオンが振り返る。
「なんだ?」
リゼットは少し考えてから言った。
「アンタの能力、検証しない?」
レオンが眉をひそめる。
「検証?」
エリシアが慌てる。
「け、検証って……」
リゼットは笑った。
「決まってるじゃない」
「さっきの、キスよ」
エリシアの顔が一気に赤くなる。
「き、キスって……!」
レオンは頭を抱えた。
「お前なぁ……」
だがリゼットは真剣だった。
「アンタの魔力、普通じゃない、ちゃんと調べないと危ないわよ」
レオンは少し考えた。
確かにそうだ。
あの力は、自分でも分からない。
やがてレオンは頷いた。
「……分かった」
リゼットはにやりと笑う。
「よし」
「じゃあ明日」
「森で実験ね」
エリシアが小さく呟く。
「も、森で……?」
リゼットは肩をすくめる。
「人に見られたら困るでしょ?」
そしていたずらっぽく笑った。
「アンタのその力」
「ちゃんと調べないとね」
レオンは空を見上げた。
自分の中にある、あの膨大な魔力。
それが何なのか。
三人はまだ知らない。
1晩寝てから、その秘密を確かめることになる。
――森の中で。




