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ダークネス・スレイヤーズ~キスから始まる冒険譚~  作者: 電脳筆師


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3.二人の啓示

 リーベル村の朝は早い。


 まだ太陽が昇りきらない時間から、村の広場には人が集まり始めていた。

 今日もまた、神殿の前に人が集まっている。

 理由はひとつ。

 啓示の儀。

 十三歳になった子どもが、自分の適性を知るための儀式。


 神界の力を扱う者。

 魔法を扱う者。

 あるいは、どちらでもない者。

 その未来が決まる日だった。

 そして今日は――


「いよいよですね」


 神殿の前で、エリシアが言った。

 水色の髪が朝の光を受けて揺れる。

 レオンは腕を組んでいた。


「……だな」


 去年、リゼットがここから旅立った。

 あれから一年。

 今度は自分たちの番だった。


「緊張してますか?」


 エリシアが聞く。

 レオンは少し考えて言った。


「……まあ、少し」


 正直だった。

 エリシアは小さく笑う。


「私もです」


 その時。

 神殿の扉が開いた。

 白い衣の神官が出てくる。


「エリシア」


 名前を呼ばれる。

 エリシアは深呼吸をした。


「行ってきます」


「おう」


 レオンが頷く。

 エリシアは神殿の中へ入っていった。


 ⸻


 神殿の奥、石の台座。

 その上には、淡く光る水晶。

 神官が静かに言う。


「手を置きなさい」


 エリシアはそっと水晶に触れた。

 その瞬間。

 水晶が強く光る。

 淡い白い光。

 そして、神殿全体を包むような神聖な気配。

 神官の表情が変わる。


「……神聖適性」


 エリシアの胸が高鳴る。

 神官は続ける。


「非常に強い適性です」


 そして言った。


「あなたは聖導院へ進むことになります」


 ⸻


 神殿の外。

 レオンは石段に座っていた。

 落ち着かない。

 足をぶらぶらさせている。

 その時、神殿の扉が開いた。

 エリシアが出てくる。

 そして、少し照れたように言った。


「……神聖適性でした」


 レオンが立ち上がる。


「おお!」


 笑う。


「すごいじゃん!」


 エリシアも嬉しそうに笑った。


 ⸻


 そして。


「次はレオン」


 神官の声。

 レオンは神殿へ入る。

 少しだけ、胸が高鳴っていた。

 神殿の奥、水晶の前に立つ。

 神官が言う。


「手を」


 レオンは水晶に触れた。


 ――沈黙。


 光は、出なかった。

 神官がもう一度言う。


「……もう一度」


 レオンは再び触れる。

 しかし、水晶は、何も反応しない。

 神官が静かに言った。


「適性なし」


 その言葉は、短かった。


「神聖適性も、魔法適性も確認できません」


 ⸻


 神殿を出たレオンは、少しだけ俯いていた。

 エリシアが心配そうに見る。


「レオン……」


 レオンは苦笑した。


「まあ、仕方ない」


 空を見上げる。


「こういうのもあるだろ」


 だが、胸の奥が、少しだけ重かった。

 エリシアは静かに言った。


「でも」


 レオンを見る。


「レオンは強くなります」


 レオンが笑う。


「どうして?」


 エリシアは迷わず言った。


「レオンだからです」


 その言葉に、レオンは少し照れた。


「……ありがと」


 ⸻


 その後、神官が説明する。


「神聖適性を持つ者は聖導院へ」


「魔法適性を持つ者は魔導院へ」


「そして」


 神官は続ける。


「適性がない者は、一般学院へ進む」


 そこでは戦闘技術、魔物対策、世界の知識を学ぶ。

 だが主には戦闘技術だ。

 なぜなら、この世界は今、魔界の侵略に晒されているからだ。


 魔界ノクスヴェリア。

 そこから送り込まれる魔物は、人間界の中心に眠っているとされている、聖核を探している。


 聖核は世界の心臓、その上には世界樹があり、エーテルを世界へ循環させている。

 魔界がそれを手に入れれば、世界の均衡は崩れる。

 だから人間は、戦う力を学ばなければならない。


 ⸻


 数日後。

 村の入口。

 馬車が止まっていた。


 今度は二台。

 一台は聖導院。

 もう一台は一般学院。


 レオンとエリシアは荷物を持って立っていた。


「行ってきます」


 エリシアが村人に頭を下げる。

 レオンも手を振った。


「またな!」


 馬車に乗り込む。

 馬車が動き出す。

 リーベル村が遠ざかっていく。

 レオンは窓から村を見ていた。

 まだ並行して走っている馬車の窓からエリシアが言う。


「リゼット、元気でしょうか」


 レオンが笑う。


「元気だろ」


 少し考えて言う。


「きっと、魔導院で暴れてる」


 エリシアが笑った。

 

 その頃。

 遠く離れた魔界ノクスヴェリアでは――

 魔王ヴァルザードが静かに言った。


「聖核の探索を続けよ」


 その言葉と共に、 魔物たちは人間界へ送り込まれていく。

 世界は、ゆっくりと動き始めていた。

 

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