見えない線の帰り道 【詩小説版】
このシリーズは「線」「距離」「光」をテーマにした短い連作です。
童話版と詩小説版が対になっていて、同じ冬の帰り道を別の角度から描いています。
そっと読んでもらえたら嬉しいです。
【詩小説版】
放課後の校庭は しんとして
足音だけが ぱたぱたひびく
となりを歩くきみの息が
白くて なんだかおもしろかった
自販機の前で ココアを買うきみ
あったかい缶を そっと胸にあてて
「ふーっ」って息をはくたび
空に小さな雲が生まれる
きみはいつも ちょっとだけ
わたしのうしろを歩く
でもその気配が
なんだか安心だった
ねえ 知ってたよ
きみが言いかけてやめた言葉
ポケットの中で ぎゅっと丸くなるみたいで
わたしはなんだか
胸がくすぐったくなったんだ
見えない線が そっとつながる
冬の帰り道
「いちばん光ってる星、あれだよ」
そう言ったら きみは空を見て
どれかわからないのに
まじめな顔で探してた
その横顔が なんだか好きで
わたしは星よりそっちを見てた
知らない銀河の話なんて
ほんとは考えてないよ
ただね
きみと同じ空を見てるのが
うれしかっただけなんだ
ねえ ほんとはね
半歩前を歩くのは
きみが迷わないようにって
それだけなんだよ
わたしの背中にくっついてくる
その気配が
冬の風よりあったかかった
明日になったら
またちがう空が広がるけど
今日の足あとだけは
雪が降っても消えないよ
きみと歩いた時間が
胸の中で ちいさく光ってる
ねえ ありがとう
言わなくても伝わるかな
この冬の空に そっとのせておくね
ぴったりじゃなくていい
少しはなれててもいい
きみとわたしのあいだにのびた
見えない線が
そっと夜を照らしてる
冬の補助線
次話:冬の補助線【詩小説版】
2026/2/07 20:00に更新します




