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序章

西暦20xx年。地球はある流星群の軌道と交差し、全世界に隕石の雨が降った。幸いなことに「核の冬」を引き起こすほどの大きなものはなく、また相対速度も大きくなかったため運動エネルギー的にも生物層絶滅を引き起こすような大災害とはならなかった。しかし別の意味で大災害は発生した。

隕石は平均して直径1メートルほどで最大でも5メートルほどだった。本来大気圏でその70%が燃え尽きる筈であったが、実のところ燃え尽きたのは全体の30%にも満たなかった。この流星群の隕石には特殊な鉱物成分が豊富に含有されていたため、そういった隕石は燃え尽きなかったのである。

隕石はまる1昼夜降り注ぎ続け、そして二次災害が発生した。都市部に隕石が落ちてからしばらくすると、地鳴りが起こり、大地が裂け、次の瞬間大都市がまるごと地盤から引きはがされて空に浮き上がったのである。大都市だけではない。ある程度の人口があつまった地域に複数の隕石が落ちると同じように大地が浮かび上がった。世界中で同じ現象が多発し、地球の空は浮き上がった都市や町だった土塊に埋め尽くされた。

実は隕石に含まれている特殊な鉱物は一種の鉱物生命体であり、人の生命エネルギーに反応して重力を制御するフィールドを形成する本能を持っていた。そのため、人が多くいる場所に落ちた隕石はそのフィールドを形成し、地面ごと、町ごと、都市ごと人を空に舞い上がらせたのである。

この大災害により事実上それまでの地球上の国家や人種、宗教などによる勢力図は完全にリセットされてしまった。空に舞い上がった地面は落ちた隕石の数や重さと人の数により高度100メートルから7000メートルまでの間を浮揚し出していた。また浮き上がった後、バランスが崩れることで土台となる地面が崩壊して落下したり、高々度に上がったことによる大気圧の変化や気温低下により大勢死亡したことが原因で隕石による重力制御のパワーが低下して落下するケースも相次いだ。

単純に隕石落下の災害で死亡した人々も合わせると、この一晩で地球人口は70億から3億に激減したのである。運良く地上に残れた者にも次の災害が待っていた。地球のようなプレートテクトニクス型の惑星において、今回のような大量の地殻がプレート上からなくなることは、微妙なバランスを保って均衡していたプレートの動きを加速させることになる。地上ではひっきりなしにマグニチュード9クラス、震度にすると7強を超える地震が世界中で頻発するようになってしまった。実にこの地上に残った人々の70%がこの絶え間ない地震により命を落としたのである。


未曾有の大災害から10数年、国も組織も根こそぎ無くなった状態で人々はそれでも懸命に生きようと努力し、2つの世界を生み出した。一つは地上で数少ない安定した地盤を持つ場所に集まって作られた集団である。比較的地盤が安定し、人が少なかったグリーンランドや南極に移住してそこに落ちた隕石を処分しつつ過酷な環境で生活をしていく人々。もう一つは地面ごと浮かび上がった町でそのまま暮らす人々である。徐々に大災害の全容が明らかになり、隕石と人の組み合わせがこの浮揚現象の源であることが理解され始め、自分たちの町を、気圧や気温が生活に支障がない程度に保たれる高度に動かす術も見つかり始めていた。要は隕石の質量と配置、人の数でコントロールするのである。


そうして更に数十年。ようやく世界的に人々の生活が落ち着き始め、いざ調査してみると人口は3千万を切っているという有様であった。地上の人々は地殻が安定している狭い地域で、それでも地震の脅威におびえながら細々と集落を作り暮らしている。空の人々の方がまだ文明的な暮らしをしている方であった。徐々にではあるが隕石(通俗的な名前としてグラビゥム、もしくは単に"G鉱石"と呼ばれた。Gは重力加速度を現すGであるが、一部ではジェノサイドのGとも呼ばれた)の性質を利用した科学も生まれ始めていた。その一つが一種のバリアである。このバリアは隕石が発する重力制御場を応用したもので、球形をしておりその中に気体を封じ込めることができる。これを応用して各浮揚都市(そんな言葉が生まれていた)は自分の都市を覆い、多少高度や地域が変わっても一定の気圧と気温を保てる技術を編み出していた。必要は発明の母という言葉はこの場合見事に当てはまったのである。また重力制御場のコントロールにも一部成功し、都市の移動(非常に緩慢であるが)を制御することにも成功した。それでも食料と飲み水の確保は難しく、各都市はその確保を地上に求めざるを得なかった。例え度々の地震により地形が激しく変わることになろうとも水源と耕作地の確保はどうしても必要であった。

この後、浮揚都市単位での自治組織がうまれ、更に都市間での水と水場、食料と耕作可能な土地をめぐりあまたの戦いが繰り広げられることになる。戦いがあるところ他の都市との連帯や裏切り、同盟や分裂が発生し、100年も経つ頃には地球上に大きくいくつかの浮揚都市の連合勢力が生まれていた。いまだ人は地上には戻れず、浮揚都市での不安定な生活によるストレスは人類を新たなステージに導くことになるとは誰も想像していなかった。人類は気付いていない。グラビゥムには人のような意志はないが、れっきとした生命体であり、人類は既にファーストコンタクトを果たし、宇宙由来の生命体と長きにわたって歩んでいることに。そしてグラビゥムが生み出すフィールド内で生活している人類の脳におおきな変化がおきつつあることに。


やがて、後に"天翔種"と呼ばれることになる、石を媒体に重力を自在に操る人々が生まれつつあることに。


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