よくある普通のざまぁです……
「アンナ、お前との婚約は破棄させてもらう、この私に相応しいのは、もっと美しき令嬢だからだ、つまりクロエほどの令嬢である!」
貴族のパーティーでこんな宣言をされたのは、私の婚約者であるエリック公爵令息であった。
そしてクロエとは、今エリック公爵令息の隣にいる男爵令嬢である。
私は思った、こんな婚約破棄をみんなの前でした上で、さらに相手が男爵令嬢なんて正気かと……
しかし私は侯爵家の娘に過ぎず、さらにこの婚約の力関係は、お父様が公爵家に申し込んだ形なので、このまま押し切られては、私の恥と家の損になってしまう……
どう言い返すべきか……
とっさのことで悩んでいると……
「あらアンナ様、エリック様を奪ってしまって申し訳ないですわ。でも私達愛し合ってるから仕方ないわよね、祝福して下さる?」
などと煽って来るクロエ嬢……流石に男爵令嬢ごときにこんな言われをされることは、
普段身分差を理由にそこまで怒った経験の無い私ですら、怒りに燃えてきたのであった!
「ふ……クロエよ、我々が愛し合うことで、アンナが嫉妬してしまうでは無いか!だがみなに我々の真実の愛を見せあおうでは無いか!」
などと言って抱き合っている……
行きつく所まで行きついたのか!
あきれ果てているが、このパーティーはエリックの家の主催であり、さらに公爵家が相手と言う事で、また突然過ぎる状況で、他の貴族達も茫然としているのであった……
公爵や公爵夫人が今席を外しているから、戻ってきたらどうなることなのか……
いや無いとは思うけど、公爵公認でこれをしているのなら、それこそ私は単に辱められるだけになってしまうのでは?
……いや落ち着け、きっと私も突然のことで頭が回っていない。どう対応すれば……
こんな感じでグルグルと頭が巡っていたら……
「あらエリック様、アンナ様は祝福もして下さらないですわ、きっと嫉妬で気が狂っているの、可哀そうだと思いません?」
「はっはっはークロエよ、私はモテるから仕方ない!だが案ずるが良い、私の愛はクロエだけだ!」
もう完全に2人だけの世界にいってるのだが、いちいち私を侮辱しようとしてくる、クロエには、流石に切れ気味に私もなったのであった……
だが、落ち着け、ここであいつに切れたら、私が嫉妬しているってことにならないか?
正直こんな光景を見せられて、エリックにエリック様ということすら嫌なくらい嫌悪感があるのだが、
そんなこと分かりゃしない。
私がクロエに怒ったことが、嫉妬だから何て解釈されたら、私の一生の恥だ!
ふざけるな……
どうしたら……また悩んでいると、
「アンナ様には相手もいないから可哀そうですわ。どなたか立候補して差し上げたらどうですの?」
などとどこまでも侮辱してくるクロエ……
……いいでしょう、ここまで言われたら嫉妬しているとか周りに勘違いされても構うものか、
こいつだけは罵倒してやる!
私がこう誓った所……
「よかろう!私がアンナの婚約者に今立候補しようでは無いか!」
などと遠くから声高に宣言する声が聞こえるのであった!
え?どういうこと?どなた!?
私はクロエに怒鳴りつけようとしていた気持ちすら飛ぶほどの驚きを得て、その声の持ち主にみんなの視線が集まったのであった!
その声の持ち主は……小さかった……
だってフィリップ王子9歳なのであったからだ……
「きゃははははーあんな子供に婚約を申し込まれるなんて、アンナ様に相応しい相手ですわ、アンナ様のお体は貧相ですからね!」と自分の胸を強調するクロエだが、エリックが飛びあがるレベルの驚きをして、
クロエの頭を掴み、地面にたたきつけ、自分も土下座を開始したのであった……
「フィリップ王子申し訳ありません!この愚かな女が、まさかフィリップ様を侮辱するなんて!」
青ざめまくって真剣な土下座である。
そう、フィリップ様は王妃様の2人の息子の1人であり、兄に王太子様を持ち、さらに仲の良い兄弟なのである。
私のお兄様が、王太子様と同い年なので、側近を務めさせてもらっていて、その縁で、私も小さいフィリップ様を遊んであげたことがよくあったため、親しい関係ではあったのだ。
まさかあんなことを言い出したことは予想もできなかったが……
つまりフィリップ様を侮辱するということは、王太子様、そして王妃様、いや陛下すら侮辱する行為であり、いかにこんな狂気な婚約破棄劇をしたエリックと言えど、できるわけがないのである……
「痛い、何をするんですか……」
暴れるクロエを無理やり押さえつけて、土下座を続けるエリック……
するとフィリップ様は仰る。
「私はアンナが好きだったが、婚約者がいると結婚できないんだろ?でもお前は婚約破棄をした、ならば私がアンナと結婚しても文句は無いな?」
「……もちろんでございます、どうぞアンナとご結婚なさって下さい……」
エリックは青ざめながらそう申す……
その時少し力が緩んだのか、クロエは土下座から脱出して怒り出す……
「エリック様!何ですか!貴方は最高の公爵令息でしょ?どうして私がこんな目に合わないといけないの!
このパーティーの主役は私達でしょ!?」
「黙れ馬鹿女が!お前ごときが口をきいていいお方ではないのだ!」
「なんですって!?これが愛する者に言う言葉なの!?」
などと喧嘩がおっぱじまり、クロエはもっとも愚かな発言をしたのであった……
「あんな子供にビビるなんて情けない!」
そういうとエリックの怒りに触れたのだろう、何とエリックは思いっきりクロエの顔を殴りつけたのであった……
「馬鹿者が!貴様のような不作法ものこうしてくれるわ!」
……もちろん圧倒的にクロエが悪い、悪いけど、流石に公衆の面前で令嬢を殴りつけたエリックも、傷害として絶対的に問題視されて失脚したのであった……
そしてフィリップ様は私に言う。
「私は本気だ、アンナよ結婚してくれ!」
「……あのフィリップ様、私とフィリップ様では年齢差も離れていますし、それに……」
まさかこんなことを言われるとは思わず、当然私はフィリップ様の事を子供としか思っていないので、どうしようかと困っていると……
「何を言うか、私は聞いたぞ、愛があれば年の差など問題無いと!」
……どこでそんな言葉を覚えたのでしょうか……
「案ずるな、まもなく私も結婚できる年齢になる!そうは待たせないさ!」
などとませたことを言い続ける……
まぁフィリップ様はきっとカッコよくなりそうな雰囲気をしていますし、確かに数年後に迫られたら、私きっと断れない気がすると、今から恐怖と、否定したいけど否定できない喜びを感じるのであった……
私はショタコンじゃない!




