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ヒーラーしかいないっ!  作者: ぺろりんがー
ハイレベルにハイ論破!(ごり押し)
48/57

第48話

「そもそも、だ。ヒーラーのみで構成されたパーティが、実戦で機能するはずがない」


「…………」


「お前たちに()()()()()()()()()()ことは、すでに調査済みだ。敵を排除する手段が皆無である以上、戦力としての価値はない。――かつて"聖女"とまで呼ばれたお前なら、その程度の判断はつくものと思っていたがな」


 たしかに。ほんの少し前までは、私もそう思ってた。

 平和な時代になったのなら、それでも別にいいんじゃないかって。


 でも、今はもう違う。

 こんな私たちでも、戦える可能性があると――本気で信じてる。


 それに……ひとつ気になる点がある。

 『攻撃手段が存在しない』――と、そう認識されているということは、もしかして()()()()()()()には気づかれていない……?

 加えて、私たちが()()()()()()()()()()()も、どうやらまだ報告には上がっていない様子。

 ならば、いざという時の()()()として使えるかもしれない。


 私は片手に酒瓶を持ったまま、再び席へ腰を落とす。


「お前が有している規格外の回復魔法、そして、あの騎士団出身の若い"エンライトプリースト"の技量……いずれも、今の時代においては貴重なリソースだ」


「あら、ずいぶん私たちを買ってくださってるのね」


 皮肉めいた笑みを浮かべ、中の液体をひと揺らしする。


「……平和が続いた反動で、前線で通用するほどの実力者が枯渇してる。ゆえに、限られた戦力を最適に生かす構成と統率が不可欠だ」


「要するに、人手不足ってワケね」


「その通りだ。――例の()()()()()()()()、既にお前にも情報は入っているのだろう?」


 私は酒瓶を少し傾け、口をつけた。


「わかってるわよ。そんな現状、頭ではね」


 そこで言葉を切ると、私はレノワールに真正面から視線をぶつける。


「だけど、私はこのパーティで戦うことを決めたの。どれひとつ欠けても成立しない、私たちだけの唯一の戦い方……そして、それが今の私が信じる選択よ」


 レノワールの表情がピクリと動いた。


「……ほう。人々の命を最優先に掲げた『灰燼アッシュダスト』の一角が、再び訪れる世界の危機を前にして、そんな自己満足を優先するとはな」


「『灰燼アッシュダスト』は、もう解散したわ。今の私は――『ぷいち☆えんじぇるず』のミレミよ」


 その瞬間、彼はわずかに眉間に皺を寄せる。


「理解が及ばないな。今の()()()()()()()に、何ができるというのだ?」


「支え合うことができるわ。それこそが、ぷいち☆えんじぇるずの強さよ」


「……だから何だ? その"支え合い"とやらが、どれほどの戦果に結びつく? 逆に言えば、()()()()()()()には、もはやそれ以外に語れるものがないと、自ら認めるということか?」


「あーもう! 鬱陶しいわねっ! まだ結成したばかりなんだから、これからやっていくしかないじゃないの! そもそも、『お前のパーティ』じゃなくて、ぷいち☆えんじぇるずっていう立派な名前が――」


 ――ん?


 ……妙ね。

 彼のその物言いに、ほんの僅かに引っかかりを覚えた。

 これは、もしかして――。


 私は少しだけ首をかしげ、声色を変えた。そして、試すように問いかける。


「お前のパーティ、ねぇ。……ちょっと、ひとつ聞きたいんだけどぉ」


 茶化すような口調で、わざとらしい笑みを浮かべてみせる。


「一体、()()解散すればいいんですか~?」


 レノワールはしばらく間を空けた。


「……説明は不要だろう。そのままの意だ」


 返答を聞いた途端、胸の奥でくすぶっていた予感が、()()へと変わった。

 視界がぱっと開ける感覚――思わず、身体が前のめりになる。


「へぇ~! 論理を重んじるあなたが、まさか()()()()をお答えになれないんですかぁ?」


「…………」


 自分でも驚くほどに、声が弾んでいた。


 やっぱりそうだ。『ぷいち☆えんじぇるず』って名前が()()()()()()()()()()んだ、このおじさん。

 ぷぷーっ! 精神年齢、思春期かっての! ダサすぎるでしょ!


「ちゃんと正式名称を言ってもらわないとぉ、全く別のパーティとか解散しちゃったらぁ、どう落とし前つけるんですかぁ~?」


「……………………」


「ほらほら、言いなさいよ! 私たちのパーティ名を! ほら、早く!」


 レノワールの表情は、鉄面皮のままだった。

 ただ、わずかに目を閉じ、眉根を寄せ――


「…………ぷいち☆えんじぇるず…………」


 吐き捨てるように、呟いた。


「……ん~? ごめん、ちょっと聞こえな~い」


 私はここぞとばかりに身を乗り出す。


「もう一回、言ってもらってもいいですかぁ~!? ちゃんと大きな声でお願いしま~すっ!」


 彼は再び目を開けると、低い声で、はっきりと口にした。


「ぷいち☆えんじぇるず……を、今すぐ解散しろと、俺は言ったんだ」


 静寂。


 マスターが空気の重さに耐えかねて視線を泳がせていた。


 沈黙を断ち切ったのは、コーヒーカップをカウンターに置く音だった。

 カタン、と陶器が触れる乾いた音。レノワールが椅子から立ち上がった。


「……もういい。明日、再び答えを聞きに来る」


 ポケットから取り出した金貨を一掴み。無造作にカウンターに置く。


「それまでに、仲間へのお別れでも済ませておくことだな」


 レノワールが背を向け、酒場を後にしようと歩き出す。


「ちょ、ちょっとあんた! お釣り!」


 マスターが思わず呼び止めるも、レノワールは振り向きもせず、


「……いらん」


 とだけ残し、姿を消していった。


「――はい、論破ァ!!」


 拳を高々と掲げて胸を張り、これ以上ないほどの勝ち誇ったポーズを決める。

 勝った。完全勝利。


「……論破って、言えるのか……?」


 マスターの乾いたツッコミが、背中に突き刺さった。

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