表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーラーしかいないっ!  作者: ぺろりんがー
歴史が光れば影に黒歴史
42/57

第42話

 そうか。

 そうだったんだ。


 私はずっと、あのときから――"聖女"として戦おうとしていた。あり続けようとしていた。


 でも、違う……違った。

 守るとか、背負うとか、そんな言葉に囚われていただけ。


 シドファ。あなたのその声が、私を過去から引き戻してくれた。


 灰燼アッシュダストのように、"最も軽い命"でもない。

 私が勝手に決めつけていた、"守るべき存在"でもない。

 私たちのパーティの形は――。


「――ええ、そうね。ようやく気がついたわ」


 私はふっと力が抜けるのを感じた。

 知らず知らずのうちに息を詰めていたらしい。ゆっくりと息を吐き出した。


「……正直、最初はこのパーティの構成、どうなの? って思ってたわよ。バランスが悪いなんてもんじゃない。でも……」


 私は穏やかな気持ちで口を開く。


「誰かが傷ついたら、すぐに手を伸ばして癒やしてあげられる。混乱しても、苦しくても、その不調を払ってあげられる。失った活力も、再び湧かせて、また歩かせてあげられる。――そうやって()()()()()()()()のは、私たちだからこそ、よね」


 そして、笑いながら続ける。


「だって、私たち――()()()()()()()()()もの」


 私はそう口にして、胸の奥が軽くなるのを感じる。


 ――大丈夫。もう、私は救うだけじゃない。

 救われてもいいんだと、気づけたのだから。


 ずっと真剣な面持ちだったシドファの表情が、ふいにゆるんだ。泣きそうに揺れる瞳の奥に、それでも確かな安堵が宿る。

 微笑みとともに、そっと小さくうなずいた彼女は、ひとつ呼吸を詰め、視線を真っ直ぐ戻してから――深く頭を下げた。


「ミレミさん。あたし……生意気言ってごめんなさいッス」


「えっ、ちょっと! 謝るのは私の方よ! ごめんなさい、あなたの気持ちをないがしろにした。それに……ありがとう。仲間を信じるって、こういうことなんだって――やっとわかった気がするの。だからもし、大きな戦いになったら……一緒に来てくれる?」


 その問いに、シドファは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐにぱあっと明るい笑顔を弾けさせる。


「もちろんッスよ、ミレミさん! あたしにできることなら、なんだってやるッス!」


 その無邪気な笑顔につられて、私もつい笑みをこぼしてしまった。

 けれど、不意にシドファの視線が私に留まっていることに気づいて、首をかしげる。


「……何? 私、変な顔でもしてた?」


 シドファはくすりと笑い、少しだけ照れたように、


「いーえ。あたしは確かに、昔のミレミさんの笑顔に救われたッス。――でも、今みたいに()()()()()()()ミレミさんが……あたしは一番好きッス」


 と、あまりにもまっすぐに言うものだから、私はびっくりしてぽかんとしてしまう。そんな私の様子を見た彼女は、「もう!」と小さく声を上げ、頬を赤らめてぷいっとそっぽを向いた。


「――それよりも! 遅くなっちゃったスけど、今から"ワタボコリーヌ"を助けに行くッスよ! まだ召喚が切れるまで、時間はあるはずッスから!」


 勢いよく話題を切り替えるシドファに、私は一拍遅れて聞き返す。


「ワタボコリーヌ……って?」


 するとシドファは大げさなほどに肩を落とし、呆れ果てた声をあげた。


「はぁ……あんたが名前をつけた召喚獣でしょうが! 屋台で呼び出した、フワフワのやつッスよ。すっかり忘れてるじゃないッスか! 今ごろそいつが、ラミシーにあれやこれやとされてるはずッス」


「え? ……ああ! あの子ね! 中々いいセンスの名前だと思ったら、私が名付けたんだったわね」


「いや……センスどこッスか。まぁいいッス。思い出したなら、さっさと行くッスよ!」


 と、シドファは勢いのまま走り出してしまう。軽快な足音が遠ざかり、私は慌ててその背を追いかける。


「ちょ、ちょっと待ちなさい! 私はあなたと違ってアラフォーの飲んだくれなのよ! 言わせんじゃないわよ! ――そんな早く走るなって言ってんのー!」


 息が上がりそうになりながら、私は声を張り上げて叫んだ。

 ふらつく足取りで、その背中を追って必死に駆けるのだった。


 ――私は、ようやく"仲間"の意味を知った。

 この絆なら、どんな困難だって乗り越えられる。


 ……はずだったのに、まさか()()()()()になるなんて――!



  ◇◇◇◇



 ――厄災の訪れは、突然だった。


「マスター、もう一杯! もっと度数の強いのちょうだい!」


 隣の席からは、カップがテーブルに置かれる音がまた響く。


「こちらも、ブラックコーヒーを頼む」


「あんたねえ! 一体それ、何杯目よ!? コーヒーコーヒーコーヒーコーヒーって、どんだけ目ぇ覚ましたいのよっ!! こちとら見てるだけで酔いが醒めるっつーの!」


「これは十二杯目のコーヒーだ。そして、俺がコーヒーを繰り返し飲む理由は、カフェインによって思考を加速させ、認知機能を維持するため。……一方で、お前が飲んでいるそれは、アルコールによって判断力を鈍らせ、行動の最適性を著しく損ねている。非常に、非効率的で、非合理的で、非生産的だとは思わないか?」


「うるッさいわねッ!! あんたの顔を忘れるために飲んでんだっての!」


 ……そう、魔王討伐後。

 もう二度と会いたくなかった男。

 もう二度と顔も思い出したくなかった男。


 ()()()()()()()()()――レノワールとの再会だった。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!


たくさんの方にブックマークや評価で応援していただき、感謝感激です。

毎回、いただく反応を見るたびに、本当に励まされています。


さて、お知らせなのですが――

執筆ストックがそろそろ尽きそうなため、今後の更新は基本的に週1回ペースになる予定です。

とはいえ、更新の頻度には多少の前後があるかもしれません。


ぜひ、今後ともお付き合いいただけたら嬉しいです!

どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ