動画をずっと見てる
今日は妻ちゃんの様子をちらちら見る。
基本的に妻ちゃんは
ずっと動画をみている。
そして動画が終わると
ニャー
と僕を呼ぶ。
そして別のを見せろとせがむ。
僕は指定の動画にかえて
その場を離れる。
この繰り返しだ。
猫になったのだから
猫の動画とか
魚の動画とか
見ると思うだろう。
しかしまったく前と変わらん。
旅のブイログや中国や韓国のドラマが好きだ。
こないだなんか。
一日同じドラマを見ていた。
中国ドラマは50話とか平気であるので
見るのが大変そうだ。
基本的に
外の世界が好きで
旅行に行きたいとよく言っていた。
ただ作家という稼業は
ヒマなようで
なかなかコントロールが難しく
あまり旅行にも連れていけてない。
妻ちゃんは
よき妻ではあるが…
夫ちゃんの
ほうは
ダメダメなのかもしれない。
もう少し
器用に立ち回れたらなと反省しきりである。
しかしなぜ猫だったのだろうか?
古代エジプトではバステト神(猫の女神)が 生命・再生・守護 の象徴だった。
何かを再生させる??
夫婦関係の再生なのだろうか…
ただ妻ちゃんが猫になったことで、いつも見落としていた妻ちゃんの別の側面は見えてきたと思う。
それは甘えだったり、依存であったり、繊細さだ。
妻ちゃんのことを観念的には愛している。
と思っていたが、
この事がなかったら、ここまで妻ちゃんの事を考えなかったかもしれない。
僕にとって、この黒猫の妻ちゃんとの生活は
とても貴重な経験になった。
猫とは、愛情と自由、癒しと神秘、日常と異界、そのすべての「境界に立つ存在」だ。
なにかのターニングポイントになっているのは
違いない。
僕はそう思った。
そうこうしていると
妻ちゃんが
全力疾走でお腹に飛び込んでくる。
バス
お腹にささった。
どうしたの?というと
この動画を再生しろ。
と言っている。
するどい目つきだ。
これは…。
なにか元に戻るヒントがあるのかもしれない。
ゴクリ。
唾を飲みこむ。
―――10分で簡単手がるにできるチーズケーキ――――
はっ?
妻ちゃんは俺をしきりに押す。
そしてメモ帳を持ってきた。
書けと。
そして
作れ…
なるほど
これが食べたいの?
そう聞くと
ほっぺにチューをしてきた。
なにこのカワイイ生物。
僕は冷蔵庫を確認し
ショッピングバックと財布を持ち出し
街にむかった。
まってろよ。
妻ちゃん。
オイシイケーキを作ってやるぜ。