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首輪事件

僕は一つの問題に直面していた。


首輪問題だ。

基本的に飼い猫は首輪をするものらしい。


首輪のない猫が外で見つかったばあい

悲しい結果になることも多いと聞く。


もし妻ちゃんが外に飛び出して

首輪のないことで

悲しい結果になったとしたら…


そう思うと

いてもたってもいられず

外に飛び出した。


だが外に飛び出したはいいが…

どうしよう。


幸い近くに猫がマスコットのタバコ屋があったので

そこで聞いた。

なにも買わずに聞くのは

申し訳ないので…。

ミントタブレットを買う。

「すみません。

この猫の首輪ってのは

どこで売っているのですか?」


タバコ屋のおばあちゃんは


「この子の首輪は息子にもらったもんだけど…

そうだね。

商店街にペットショップがあるから、そこで聞いてみたら」


と教えてくれた。

そりゃそうだ。

ペットショップだ。

妻ちゃんのピンチだと思うと

頭が上手く回らない。


完全にてんぱっている。


急ぎ商店街にむかう。

商店街は平日の午前中というのもあって

人もまばらだった。


僕はペットショップを見つけた。

ちょうど開店したところだった。


「あのーすみません。猫の首輪ってありますか?」


と訊ねると店員さんが案内してくれた。


カワイイ首輪が沢山ならんでいた。

妻ちゃんにはどれが似合うかな。

黒い毛並みだから

真っ赤にしてアバンギャルドさを

だそうかなー。

とか考えていると

とんでもないことに気が付く。


これ首輪している最中に

元に戻ったら…

首がしまってしまうのでは…


――――しまった―――――


完全に詰んでしまった。


どうしよう。


店員さんが笑顔で

「お困りですか?」

と訊ねてくる。


「あのー。

もし猫が急に大きくなって

首がしまるってことないです」


しまった。

完全におかしな人だ。


店員さんは困惑している。

「まーそんなことは

絶対にないとは

言い切れないですけど…

猫ちゃんが急に成長することは

あまり聞かないので

苦しそうだったら、

また新しいサイズにするか

それか

サイズに余裕のあるものを

選ばれては?」


うんうん

普通そうなるよね――――

ごめんなさい―――

僕がヘンなんです…


しかしそれで諦めるわけにはいかない。


僕がもじもじしていると


店員さんが何かを察したのか

店長を呼んできた。


「お客様――

例えばですけど。

小さい猫ちゃんが

仮に人間くらいのサイズになる。

まぁそんなことはないですけど」


いやいや―――

それがありえるんですよね――

なんて言えねー


「そういう可能性が万が一にもあるのなら

たとえばリボンで後ろをゴムにするってのは

いかがですか?」


「お――店長さん

天才すぎます。

それ売ってます。買います」


「こちらです、ゴムのサイズ感が合わなければ手芸用品

で売っていると思います」


「ありがとうございます」


僕は何度も頭を下げ、ペットショップを後にした。


その後手芸用品店に行き、ゴムと念の為リボンを何本か買う事にする。


そういえばお腹が空いてきた。

もうお昼だ。

僕は昼ごはんと妻ちゃんのために

フライドチキンを買う事にする。

僕も好きだが、妻ちゃんもフライドチキンが好きだ。


猫になっても食べるかな。


まー食べなかったら、僕が晩御飯にするよ。

妻ちゃんの好きなビスケットも買い

さっそうと家に帰る事にする。


ドアを開けると

妻ちゃんはまた

僕に飛び込んできた。


ぐふ―――


みぞおちに直撃する。

そしてそのまま

ニットにひっかかり

伸びた。


その姿は情けないネクタイのようで

思わず笑ってしまった。


そういえば

最近笑っていなかった。


仕事が忙しかったからだ。


妻ちゃん

ありがとう

身体を張って

笑わせてくれて。


忙しいは、

漢字で心を亡くすと書くけども


僕は妻ちゃんに対して

心を亡くした対応を取っていなかっただろうか。


ふとそんな反省をする。


妻ちゃんは

すでに床に座り

不思議そうな顔をして

こちらを見ている。


そして僕の周りを一周したと思うと


袋のニオイを嗅ぎ

フライドチキンに飛びつく


「やっぱり妻ちゃんだ」


僕は無性にうれしくなった。


フライドチキンをほぐしながら

危険そうな場所を取り

妻ちゃんに与える。


念のため肉のところだけ

僕は外側を食べる。


一通りたべ

満足したのか。

次はリボンに興味を持ちだした。


僕は妻ちゃんにリボンをあてがい

どれが一番似合うか確認する。


すると妻ちゃんはズボンのすそを噛み

どこかへ引っ張っていこうとする。


「あっそっか。

鏡が見たいんだね」


そういうと

鏡のほうに向かって行った。


僕も妻ちゃんを追いかける。


鏡の前でいろんなリボンをあてがう

妻ちゃん。


人間だったころの事を思い出す。


妻ちゃんも色々着ては脱ぎして

どれがいいか何度も聞いてきたな。


懐かしく思えた。

そしてもしかしてこのまま妻ちゃんが

猫だったなら、もうその姿は見れないんだなと

悲しくも思った。


最終的に妻ちゃんは僕が始めに選んだ

赤いリボンを選んだ。

ゴムを自分のクビにあてがい

猫のサイズでも、人間のサイズでも

ダイジョブなくらいに調整する。


良しこれならダイジョブ


妻ちゃんにつけると

非常に満足そうだった。

妻ちゃんは僕のスマホを引っ張りだし

写真を撮れとせがむ。


たしかに…

自撮りできないもんね。

僕は妻ちゃんの写真を何枚も撮り

一緒に眺める。


思えば妻ちゃんと

こんなに写真を撮ったことは

あんまりなかったな。


そう思うと

少し泣けてきた




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