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第八話 コンタクトレンズ

第八話 コンタクトレンズ

 次の日仕事に行った。

城の仕事は、主にコンタクトレンズの通販会社だ。

元は郵便局で働いていたが、嫌がらせの転勤を五回もやられ、頭に来て辞めたのである。三十九歳の時だった。

 総務部長や副局長、局長などと喧嘩すると確実に飛ばされる。今なら完全にパワハラだが、当時は公務員だったので、人事権を盾に裁判もすぐには出来なかった。

 公平審査会とかが、裁判の前に行われるのである。すぐに裁判もできない、言わば、がんじがらめだったのだ。それも含めて、とにかく色々な事で、嫌気がさして辞めたのだが、誰かの紹介で、タイミングよく、コンタクトレンズの通販のアルバイトに入れたのだ。

 最初はピッキングや、封筒にコンタクトレンズを入れるだけの仕事であったが、周りのバイト連中が、指サックも使わずに封筒にコンタクトレンズを入れる姿が不思議だった。

 局にいる時には、指サックをつけて郵便物を触らないと仕事にならない。スピードが全然違うのである。

 それで、その作業場で、指サックつけて、ビュンビュン注文のコンタクトレンズを入れていると、「凄いね」と職員が声をかけてくれるようになったのである。

 他のバイトのニ倍くらいのスピードで、毎日伝票を確認しながら入れていた。今まで、秒単位で、一日に何千通もの郵便物を触っている人間からしたら、数百個のコンタクトレンズを触るのなんて、訳がなかったのである。

 それから、管理、指導する側に回されて、中に直で回収して配達に向かう、大手の物流の会社が入り込んでいるのであるが、その連中とも元は同じ業界なので、すぐに仲良くなって、付き合いが出来、外の営業にも行かされるようになったのだ。

 そんな感じで、気がついたら社員になって、梅田の本社に移動になってしまった。

 梅田のオフィスはそんなに忙しくはなかった。

けれど、コンタクトレンズで一発儲けたのは良いが、最近、追随する業者が増えてきて、会社として生き残る為には、何か新しい事を考える必要があったのだ。

 なので、アイディアを出して、とにかくプレゼンしろ、と言われて、色々と考えていたのである。

 容子に相談すると、「知らん」と言った。

「おい、役に立てよ!!」と言うと、

「テンガでも通販で売ったら?!」と言う。

「それ男だけだろ?!」、

「女の子用もなんかあるぢゃん」、

「まあ、確かに、でもそれなら必要な時に『密林』で買えば良いぢゃん」と言うと、

「そうね」、

「終わりかよ!!」と全然協力的ではなかった。笑笑 まあ、別にそのうち思いつくから、どうでも良かったが。とにかくなんかヒントが欲しかったのだ、沖縄旅行も休暇とは言え、本当は、何かのきっかけが欲しかったのだ。

 しかし、最近容子と付き合いだしてから、遊びを控えるようになると、発想力が劣っていくような気がした。

 まあ、付き合ったぐらいで、大袈裟な話かも知れないが、容子は母性と言うか、もろ母親みたいな力があるのである。自分の年齢も四四歳だし、ここで落ち着くかと思うと、発想力が潰されていくかなぁ〜と、結婚したくない理由を探しているのも事実だった。

 そんな時に、別れた中国人の元カノから、WeChat でメールが来た。

「何してんの?!青島に遊びに来て」、色々な事情で元カノは中国に帰ってしまったが、いつか中国に来てね」と、言われていたのである。

「あっ」、っと、ここで、オモロイ事を思いついた。

 逆転の発想だ。コンタクトレンズでも何でも良いが、日本の高級な商品を、通販で外国に送ったらどうだろうか?! 医薬品や、化粧品なら日本製が好まれる。ヨーロッパやアメリカはいずれ狙うとしても、アジア市場はどうだろうか?!

 タイとか中国なら、庶民でも、今や豊になって来ていて、高級志向が芽生えているので、ちゃんとした日本の製品を、庶民をターゲットで通販をやったらどうだろうか?!

(これで、中国営業行けるなぁ〜)と確信した。笑笑

 事実、中国人の元カノ『リョウ』ちゃんの会社は、日本の釣具や、プレジャーボートや漁船の部品を輸入している。(ちょいと、一攫千金狙えるかぁ〜)

 で、次の日、早速会議で、中国とタイで、釣り道具と高級コンタクトレンズと化粧品の通販を始めようと、プレゼン切ったのである。

 社長は、「なかなか面白いが、最初のとっかかりと言うか、現地のツテはあるのか」と言って来たので、「まかしてください、現地に友人がいます」、

「女かよ、笑笑、まあ、行って来い、うちも現状維持の満足では、進歩がないからなぁ〜」と、とんとん拍子に進みそうだったが、やはり、専務など、他の管理者達の中で文句を言う奴がいたのである。

「もう、中国の大手がやってるしょ?!」とかだ。確かにありとあらゆるものが、通販大国だけに、既に売られているかも知れないが、まだ、隙間はあるはずだ。

 不良品のない、絶対的に信頼出来る通販なら強いはずだ、優良な商品なら絶対に金を惜しまない。

「新しい事をやりましょうよ、国内の通販の利益は安定しているし、失敗しそうなら、すぐに辞めたら良いし」と、他の管理者達にも、久しぶりに熱くなって語った。

 で結局行けるようになったのだ。

半分、女に逢えてしめしめだが、新たな市場にも興味があったのだ。

どーせ公務員辞めたんだったら一攫千金を狙いたい。

 出発は、二週間後に決まった。


 続く

 

 

 

 

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