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第六話 隆

第六話 隆

 容子と荷ケツで、弁護士事務所に向かうと、先に、隆は来ていた。ちゃんと事務所の前で待っていて、会釈をしてくれた。小柄だが、見た目は最近のイケてるにーちゃんである。

「こんにちは、山木城です」

「こんにちは、中曽根隆です、お世話になります」

ちゃんと挨拶は出来るみたいだ。

「容子ちゃんから話は聞いてるよ、もうちゃんとしなきゃね」と、説教できる様なぢゃない人間ぢゃ無いくせに、何を言ってるんだろうと、自分で笑いながら、説教たれていた。弁護士事務所には、三人で入った。

「早速ですが、ぶっちゃけ、なんぼくらいお金かかりますかねぇ〜」と、隆は弁護士に言った。

「えーと、銀行三社、サラ金三社の二百八十万で間違いないですか?!そんなもんで済んで良かったですね。毎月の支払いは三万くらいですかね。利息無しやから、と言うと、隆は、

「え〜っ、それで良いんですか?!」と、不安な表情をしながら、拍子抜けしているみたいだった。

 それで自分が、横から口を出した。

「けど、弁護士さんの費用は別やで、六社分、大体、二十万くらいかなぁ〜 弁護士さんと相談やね。それと、返済は五年から七年くらいぢゃね?!、俺の経験からだと」と言うと、弁護士が、「そうですね、大体」と頷いた。

「えっ、城さんも経験あるんですか」

「だから、手伝いに来てんねや」と言うと、

「すいません、お手数かけます」と言った。

 任意整理とかやると、半年から一年弱、債権を止める事が出来る。弁護士と複数の金融機関との話し合いの為だ。

 その間に、債務者は、弁護士費用の支払いと、支払いの為の積み立てを始めるのである。上手く行けば、借金の利息自体は無しになって、減額もあるらしい。

 しかし、隆の場合、滞っていたり、色々な理由で、減額には、なりそうもなかった。弁護士は、債権者の金融機関に、任意整理を開始する事を通告するので、本人には、催促の電話や郵便物で、悩む事は無くなると隆に言った。

「中曽根さん、まず、借金の全てをここに書いてくださいね。全てですよ。一社でも後から出て来たら、その時点で私との契約は終了です。信頼関係なので、必ず守ってください。この、銀行三社とサラ金三社で、間違いないですね」

「はい、あと容子に」、と隆は言った。

「容子さんの分はもう解決しています。あなたのお母さんに、立て替えて貰う事になりました、後でお母さんと相談してください」

「この六社、二百八十万で間違いないです」、

「わかりました、引き受けさせていただきます」と言い、手付け金の二万円だけ、容子が払った。容子が、隆に、

「これは、払ってあげるから、残りはちゃんと自分で、払ってね」と容子に言われていた。

「容子も城さんにも迷惑かけました」とあっさり終わりそうな感じだった。

 まあ、弁護士が入れば、普通の銀行もサラ金も無茶を言ったりする事はない。

「隆さん、良かったぢゃないですか?!、これでぐっすり眠れますよ」と言うと、「ありがとうございます」と言った。なんか変な感じだった。あっさりと行き過ぎと言うか、こっちも拍子抜けしたのである。隆の二百八十万なんてたかが知れていたのである。自分の借金なんかその倍以上はあって、二つの弁護士事務所に分けないと、引き受けてくれなかったのだ。

 七年かかって、副業しながら、必死に返した事に比べれば、逆に?!羨ましかった。実家に帰るなら家賃も要らないし、やたすりゃ飯代だって母親持ちだ。

 でもまあ、上手く行ってバンバンザイで解決出来た。

「はーっ、ぢゃあ、後で飲みに行くか?!」と隆に言うと、「お供します笑笑」と切り替えが早いやつだった。

 とりあえず、自分は容子をバイクで寮まで送くってからホテルに帰り、隆は、早速自宅に帰り、母親に謝って、解決しそうだと報告した。

 夕方四時に隆と待ち合わせした。いかにもの沖縄の居酒屋に行った。

 隆が連れて行ってくれたのだ。三線の音がうるさいくらいだったが、女の子もいたので嬉しかった。

「城さん、女の子大好きでしょ、ここは安いんで、しかも女の子いっぱいなんすわ、ツケで払っときます、遠慮せんと飲んだってください」と、隆は気が晴れて、ええ感じに関西弁に変わってきた。

「わかった、ぢゃあきっちり遠慮んと、呑ませて貰いますわ」笑笑で、『久米仙』と『残波』をかわりべったんで飲んで、女の子達とも仲良くなった。それから、二人で、容子のいないキャバクラに行き、どっかんドッカン、カラオケ歌いまくって、触ったらあかん店で、おねいちゃん達を触りまくってやった。

 最後にホテルの近くの居酒屋に行って、海ぶどうと豚足を食べながら、二人でゆっくりと話をした。

自分自身も遊び人が治らない事や、職場のつまんない事など理不尽なこの糞世の中について語りあった。

 隆とは、完全に仲良くなっていたので、また隆が、落ちついて大阪に舞い戻ったら、太融寺のキャバクラや、西中のキャバクラ行こうと言う話しになった。石垣島から大阪に出て来た時の隆の苦労話も沢山聞いたが、容子の優しい部分も沢山聞いた。

 容子の母親が出て行ってから、弟の面倒で大変だったらしい事や、隆の為に色々な事をやってくれたらしい。

 母親の話は、俺とは、あまり話をしなかったが、本当は母親に会いたいらしい。容子は、満たされない母親の愛情を求める為に、逆に、隆や弟にキツめの愛情を注いでいたのかも知れない。なので、逆になーんの愛情も必要ない、俺なんかと会っていると、少し心が楽だったのだろう。愛する必要がない人だし、ひとりきりが大好きな、愛情のかけらもない人間だったからだ。


 つづく

 

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