第十話 青島
第十話 青島
眠い。
阪神尼崎からは間に合わないので、始発で梅田に行き、五時代のバスに乗った。眠っているうちに関空まで連れて行ってくれる。
今回、中国東方航空に乗る。以前、一度乗った時に、結構居心地良かったので選んだのだ。けれど、帰りはANAだ。別にどの航空会社でも良かったのだが、なんかやっぱり帰りは日本の航空会社が安心するって感じがするからだ。
東方航空も乗り心地良かったが、着陸体制に入る前に山の景色が見えた。日本の山なら普通になんもないが、中国の山には至る所に軍事基地がある。昼間でもわかる。
青島まで、三時間なので、まだ午前九時くらいだが、明らかにはっきりわかる。夜なら光って、綺麗なくらいだ。別に機密情報をバラしている訳でもなく、誰が観たって軍事基地だ。
けれど、飛行機の窓からスマホで撮影していると、おっさんになんか言われて、撮影を中止した。「お前らスパイ仕放題の癖に何言うとんねん」と日本語で言ったが、誰も日本語わからなそうだった。
まあ、撮影禁止のアナウンスがあった訳でもないので、「ほっとけや」と言いたかったが、後々に、何癖つけられても困るので消しておいた。それから飛行機は無事青島に到着した。
さて飛行機も無事着いて、リョウちゃんに電話した。
「えっ、飛行機早く着いたのね」
「うん、天気良かったからね」、晴れていると当時の中国行きの飛行機は時々少し早く着くし、帰りは下手すりゃ一時間近く早く着く事があった。気流の関係だろう。
行きなので、そんなに言うほど早くは着いてないが、予想より少し早かったのだろう。
「どこに居たら良いの?!」と言うと、イミグレ出てからの指示を貰った。入国のシートを着陸前に貰っていたが、書いた内容に不備があったらしく、女のイミグレーションに怒鳴られてしまった。
外国あるあるだが、何処の国も、女のイミグレーションは、結構むかつく。偉そうだし、ヒステリーの捌け口にされてるみたいな感じがする。
特に第三世界的な国では多い。
エリートでプライド高いんかどうか知らんが、こっちは知らんて!!笑笑、男の職員はそうでもないが、後で書くが、更に帰りも一悶着あったのである。
しかし、中国の空港には、あちこち人の良さげな日本人がいるので、「すみません、書き方教えて貰えてます?!」と言うと、「うん、こんな感じ、大体でいいよ」と教えてくれた。「観光っすか?!」と尋ねると、「結婚式!!、中国人の嫁の妹の結婚式だから、遅れたら怒られんのよ」と、人の良さげな日本人の顔の上に、気の強そうな奥さんの姿が浮かんだ。笑笑、
一応書き終えて、その人に見せると、「それで大丈夫だよ」と、言ってくれた。
こんな優しい人が、奥さんの尻に敷かれてんのやなぁ〜と思いながら、お礼を言って、さっき怒られた女のイミグレのところがに行って、優しくにこにこしながら笑顔の日本語で、「○んでしまえ、てめえ」と言って渡した。無事通過した。ざまあみろだ。笑笑
指示された場所で待っていると、
「城ちゃん、来てくれたの、ありがとう」、
「たり前よ、あなたの事を忘れる訳がない、死ぬほど会いたかったわ」と言うと、
「私、ちょっと太った?!」
「全然、可愛いよ」と言うと、抱きついてキスして来た。こっちもがっつり抱きしめてキスをした。安っぽい映画みたいだったし、日本語も飛びかっていたので、周りがドン引きしていた。
その頃の青島は、上海とかに比べれば、空港はちょっと田舎っぽかったが、街の中は宇宙だった。
ガンガン工事が進められていて、東京負けてんぢゃね!!くらいの勢いだった。
とりあえず早く来たのは、会社のひとに会うためで、「今から会社の人に会える?!」と言うと、「明日でいいわよ、そのかわり一緒に出社して。そう言う風になってるから、今夜はゆっくりして来いって言われている」
「やるなぁ、上司、気が効くやん」、
「昼ご飯の後に買い物行こうね」笑笑、
「そっちかい」笑笑、リョウちゃんも抱きつきなが爆笑していた。
「なー昼ご飯って何処行くの?!」
「海鮮行こうか?!、この時間なら、そんな並ばなくていい、有名店だよ」と言う。
「地元民しか知らない所が良いな」と言うと、
「日本人なんか誰も来ないわよ」と言う。
「ぢゃあ、そこ連れて行って!!」と言うと、
「うん」と手を引っ張ってくれて、中国までわざわざ来てくれたのが、よっぽど嬉しかったのか、いつもよりいちゃついてくれた。しかも、相当の美人なので、気持ち良かった。周りに、ドヤ顔どころではなかった。
この姿を、容子に観られたら確実に縁切られるのは間違いなかった。ただの鉄板と、金の延べ棒くらいに、容姿の違いがあるのだ。(酷い言い方だが)
まあ、もちろん、四四歳にもなったら、容姿だけでは判断などしないが。
広い通りに出て、タクシーを拾った。白タクだ。
日本語が少し出来る人だ。リョウちゃんの知り合いで、来てくれたらしい。
それから、二十分くらい走って、なんて言うのか、高級海鮮店の中に、市場もあるよ的な、要は、デカい水槽だらけの中で選んで注文するのである。しかも凄い人だらけなのである。
並んでいるひとの列も長い。しかも、店の玄関前に、お菓子の山が積んであって、小学校五年生くらいの子供や、年配の女の人が時々、とことこやって来て、スコップでお菓子をすくって、がっと皿に入れ、それを、元来た場所に帰って、バクバクと食べているのである。
待ってられない人が暴動起こさないために、お菓子食べ放題になっているのである。
女の子も年配の女性もお腹膨れたら海鮮食べれないだろう、と思ったが、それは普通らしい。
そんな光景、日本で観た事ないわ、と思ったが、それでも、海鮮をがっつり腹いっぱい食べれるくらい美味しい店らしい。早くから並んでいたので、十五分くらいで中に入れた。楽しみぢゃ〜ん。
続く〜