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学校が終わって自宅に帰ると、玄関に見慣れない靴がひとつ置かれていた。
父親が死んでからというもの父の知り合いだったと言う人が仏壇に手を合わせに来ることは何度かあった。
今回も、きっとそのひとりだろう。
新太は特に気に留めることもなく、リビングのドアを開けた。
「おかえり、新太。学校、楽しかった?」
中に入ると、母、永井瀬名がキッチンで夕食の準備をしていたらしく、包丁を持つ手を止めてこちらに微笑んだ。
「まぁ……普通だよ」
「そう、なら良かったわ。」
母はその答えに満足したのか、小さく頷くと視線を元に戻し再び夕食の支度を再開した。
「戸棚にお菓子置いてるから好きに取って食べて。食べすぎちゃダメだからね?」
新太は空返事をしながらしゃがみこんで戸棚から適当にお菓子を物色する。
品ぞろえはポテチに煎餅、ゼリー……今日はポテチにしよう。
ポテチの袋を掴み立ち上がるとふと視線を感じる。
視線の正体を見てみるとキッチンの死角、奥のテーブル、そこに――見知らぬ女の子がひとり、椅子にちょこんと座っていた。
ワンピース姿の小学生くらいの女の子。
黒髪ツインテールで可愛い少女の目がこっちをじっと見ていた。