六、卒業式の日に 前
卒業式の日。
あれから、まだひと月も経っていないなんて。
西村と僕の彼女が二人でいるのを見てしまった。まだ進学先が決まらないまま卒業式を迎え、情けない気持ちで終えた、高校からの帰り道。
部活の後輩たちから花束をもらって、先生と話しているうちに西村も彼女も見当たらなくなって、探すのを諦めて校門を出たところだった。二人を見つけた。
西村とは高校三年間同じクラスで、部活は違うけどずっと友だちだった。
部活の仲間ともそれなりに遊んだけれど、それよりも西村と学校と駅の間にある公園で好きな芸人の話をしたり、アニメの話をしている方が楽しかった。
三年になってからは受験についての悩みを打ち明けあった。予備校も同じところだった。周りが学校推薦に受かっていく中、お互い一般入試ということもあって仲間意識が高くなっていった。
苦しいとき、ずっと話を聞いてくれたのは西村だった。
あの公園のベンチで二人で真面目な話を延々と喋った。
西村が親に第一志望を反対されたときは、こちらが話を聞いた。聞いたあと、あんまり照れくさくて、ヤケクソで見始めた漫才の動画でゲラゲラ笑った。
そして、合格したら二人でここで花見をしながらコーラで乾杯しようと約束した。
西村は、ずっと友だちだった。
卒業式で渡された花束を紙袋に入れて、人通りのないの道を二人は並んで歩いていた。
あれはただの知り合いの距離じゃなかった。
信じたくなかった。
彼女とは、高二の終わり頃から付き合っていた。
僕と同じ大学を目指していた。
彼女は受かり、僕だけ落ちた。
落ちてから、勉強に集中するため会うのも連絡を取るのもしばらくやめようと言ったのは、僕からだった。
「西村には会うくせに」
と、彼女にいわれた。
あの卒業式の日、三月なのにものすごく寒くて、雪がチラチラ降ってきて、灰色の空が黄ばんで見えた。
僕が後ろをゆっくりと追いかけていることも知らず、西村と彼女は自然と手をつなぎ、降りしきる雪に隠れて、キスをした。
僕はその場にしばらく立ち尽くしたあと、静かに背を向けた。
その日は遠回りして帰った。
そして、その日の夕方に西村から連絡があった。
ーー第一志望、なんとか受かった。
僕はまだ一つも合格していなかった。最後に受けた滑り止めの結果を待っていたけれど、絶望的だった。
西村から連絡は続く。
ーー今から会える?
浪人ほぼ決定の相手に向かって、予定なんてきくなよ。そう思った。
西村は、四月から第一志望の大学へ通う。
こっちは?
受けた大学はほとんど全て落ちた。
一年とちょっと付き合った彼女は友だちとキスをしていた。
こんな冷たい雪の日に。
僕の体を支配したのは激しい憤りだった。