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1946年2月16日・東京・廃墟の街

誠司は、炊きたての米を手に、瓦礫の間を歩き出した。


空はすでに朝焼けから淡い青に変わり、冷たい風が頬をなでる。

「本当に、配るの?」

叶が少し驚いた顔でついてくる。

「……当然だろ」

「でも、お兄さんもお腹空いてるでしょ?」

「……それはそうだが、俺一人で食ったところで何も変わらねぇ」


誠司は、歩きながら周囲を見回した。


腹を空かせた子どもたちが、ぼろぼろの服をまとい、瓦礫の間にうずくまっている。

寒さと飢えで、目に力がない。

「おい、食うか?」

誠司は、手のひらの米を差し出した。

子どもたちは、一瞬驚いたように目を見開いた。


「……ご飯?」

「嘘じゃない?」

「本物だ、食え」


誠司が米を手渡すと、子どもたちは恐る恐るそれを口に入れた。


次の瞬間、表情が一変した。

「……甘い」

「おいしい!」


彼らは夢中になって米を食べ始めた。

たったひと握りのご飯。

それでも、こんなに美味しそうに食べるなんて――


――これが、“奇跡”なんだな。


誠司は、拳を強く握った。

「ねえ、お兄さん」

叶が、じっと誠司を見上げる。

「どうした?」

「お兄さん、本当に”神様”になっちゃうかもね」

「……かもな」

誠司は、自分の左手を見つめた。


もし、この力をもっと使いこなせるようになったら――

この街を、救えるかもしれない。

いや、救うんだ。

誠司は、静かに誓った。


――俺は、この街の”神様”になる。


そして、もう誰も飢えさせはしない。


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