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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』の初陣  作者: 橋本 直
第四十五章 再開する日常

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208/212

第208話 愛称『ダグフェロン』

「でだ、話を変えると実は05式特戦の愛称が決まったんだわ。必要あんのか知らないけど上が愛称をつけろってうるさくてね」


 突然話題を変えた嵯峨に全員が丸い目を向けた。


「なんだ?愛称って」


 かなめは明らかにやる気が無いようにそう尋ねた。


「あってもいいだろうな。現東和軍主力シュツルム・パンツァーにも『ストロングファイター』と言う愛称がある。その方が親しみが持てる。軍も民間人に好感を持たれようと必死なんだ。察しろ」


 カウラは頷きつつ嵯峨の言葉に耳を貸した。


「02式のはなんだかつまらない名前だけど、05式のは……面白い奴だといいわよね」


 アメリアと言えば、とりあえずギャグになるかと言うことばかり考えているようだった。


「僕のせいで法術使用を前提とした名前とかつきそうですね。呼びにくい名前や長い名前は嫌ですけど」


 誠はおずおずとそう言った。誠が遼州人にしかない能力である『法術』を使用してしまったために遼州同盟の『特殊な部隊』の使用シュツルム・パンツァーに変な名前がついてしまうことに少し気後れしているのは事実だった。


「まあな。あんな化け物みたいな力を出したってんで、前々から決まってた名称の正式決定が出たのは事実だから」


 嵯峨はそう言うといかがわしい雑誌の下から長めの和紙を取り出す。

挿絵(By みてみん)

「じゃーん」


 相変わらず『駄目人間』らしいやる気のない言葉の後に嵯峨はその和紙に書かれたカタカナを見せびらかした。


『ダグフェロン?』


 全員が合わせたようにそう叫んだ。


「『ダグ』は古代リャオ語で『始まり』の意味。『フェ』は……ようするに日本語の『の』って感じの意味。そして『ロン』は『鎧』って意味なんだ。この遼州星系にやってきたと言う神が乗ってた『始まりの鎧』って意味。わかる?今は失われた遼州語で付けたんだ。遼州ならではの力を使った神前の影響が無かったとは言えないな」


 嵯峨の出来の悪い子供に教え諭すような言葉に誠達は大きく首を横に振った。


「嫌いか?まあいいや、お前さん達の好き嫌いなんてどうでもいい話なんだから。どうせこんなお(かみ)が決めた名前なんて浸透するわけねえし……これまで通り05式(まるごしき)でいいじゃん」


 身もふたもない嵯峨の言葉を聞いてかなめ達は飽きたというように隊長室を出て行った。


 『脳ピンク』な嵯峨と取り残された誠はただ茫然と嵯峨の持っている『ダグフェロン』と書かれた和紙を眺めていた。


「お役所仕事ね」


「まあ、我々は公務員だからな」


 アメリアとカウラは納得したようにうなづく。


「なんでもカタカナにすりゃあいいってもんじゃねえだろうが……姐御は知ってんのか?」


 かなめはそう言って嵯峨に詰め寄った。


「アイツは愛称なんて別にどうでもいいんだって。どうせ自分の機体は『紅兎(こうと)』って呼ぶんだからってことらしいよ」


 嵯峨のめんどくさそうな返答にかなめは口をへの字にゆがめてうなづいた。


「『ダグフェロン』……」


 誠は嵯峨の書いた文字を見つめて感慨深げにそうつぶやいた。


「いよいようちに染まることが決定してきたね……神前、今が逃げる最後のチャンスだぞ」


 嵯峨は誠がかなめ達と出て行かない様子を見てそう言った。


「何度も言いますけど隊長は僕に逃げてほしいみたいな言い方しますね」


 少し馬鹿にされたような感じがして誠はそう答えた。


「じゃあ俺も何度も言うけど逃げるってのはね。逃げないよりも長生きする可能性が上がるんだ。そうすると少しは『頭を使う』必要が出てくる。だから辛いことも多い。俺は逃げる人間の方が勇気がある人間だと思うわけ」


 嵯峨はそう言いながら出した和紙を静かにたたんだ。


「逃げる方が勇敢だとでもいうんですか?」


 誠の問いに『駄目人間』嵯峨は素直にうなづいた。


「そうだね。逃げたら死なないからね。あの世に逃げ出す機会を失うわけだ。あの世に逃げれば恥はかかないわ、それから先の苦労は考えずに済むはいいことずくめだわな。だから臆病な人間ほど『逃げない』んだ。『逃げちゃだめだ』なんて考えてるなら迷わず逃げなって。その方がよっぽど勇敢だよ。あの諸葛孔明だって、逃げ出したら敵が『孔明の罠だ!』ってビビッて敵が追ってこないんだから。素直に逃げた方がまし」


 嵯峨の『諸葛孔明』の話は歴史に知識のない誠にはわからなかったが『駄目人間』の意見がかなり『特殊』であることは想像ができた。


「でも……僕は逃げ場なんて……」


 誠はそう言って静かにうつむいた。


 そう言う誠を嵯峨は腕組みをして見上げた。



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