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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』の初陣  作者: 橋本 直
第三十七章 見守るもの達

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第166話 かえでの『女癖』と転属希望

「それより、かえで。本当にいいのか?惟基の『特殊な部隊』は『特殊』すぎるぞ。お前さんがある意味『特殊』なのは誰でも見ればわかるが、あの『特殊な部隊』に自分で転属を希望したら通るだろうが……二度と甲武国海軍には戻れないと思うぞ。確かにお前の『女癖』で海軍から何度俺がどやされたか分からんが、それだけの実績を上げているんだ。今からでも遅くない。考え直さないか?」 


 西園寺かなめと日野かえでと言う『奇妙な姉妹』の父親、西園寺義基は『父親』の顔でそう言った。


 かえでの『女癖』の悪さは筋金入りだった。特に高貴な身分の若く美しい既婚者と見ると目が無かった。かえでは舞踏会があると聞けば必ずそこに出向いてそう言った女性を物色した。同性愛とは無縁に思える高貴な家の妻達を次々と彼女の美貌と甘い言葉で篭絡して次々と寝取った。


 結果これまで24人のかえでの魅力にあらがえなかった女性の子宮に人工授精で自分のクローンまで孕ませていた。かえではこの悪行を『マリア・テレジア計画』と呼び、いずれはその娘達がかえでの言うことならなんでも聞くように洗脳された母の教育でいずれは高位貴族の当主として、父である西園寺義基等『民派』を支えることになるであろうと、ことがバレて大騒ぎになった時に開き直ってそう答えたのを思い出して西園寺義基は苦笑いを浮かべた。


「僕の浮名の話は良いんです。僕は『お姉さま』を愛するために生きていると思ってます。そして、『お姉さま』の愛しているものはすべて僕も『愛する』んです」 


 義基は娘の反応を予想していたが、あまりに予想通りの反応にただ何も言えずに黙り込んだ。


「それに、あの友達の少ないお姉さまに『下僕』ができたと教えてくれました。僕に見せびらかしたくなるような面白い『下僕』だそうです」

挿絵(By みてみん)

「『下僕』ねえ……なんだかなあ」


 義基はため息交じりにそう言った。


「お姉さまの『下僕』は僕の『下僕』です……いつかしっかりしつけてあげましょう」


 義基は自分の二人の娘があまりに『特殊』な男女観を持っているのは知っていたが、迷惑をこうむるのは自分の政敵の『官派』の貴族主義者なので放置していた。そもそも彼は頭の上がらない『甲武の鬼姫』の二つ名を持つ妻康子の勧めもあって、『特殊』な姉妹の暮らしに介入しない主義であった。 


「へーそうなんだ……まあがんばれや」 


 西園寺義基は奇妙な生命体を見るような眼をしてそう言うと、再び部屋の上座に座った。


「かなめの奴め。アイツは都合のいいところだけ『貴族』を使いやがる……『下僕』なんて言葉は俺は嫌いだね。俺は貴族の位を奴に譲って平民になった。じゃあ俺も奴の『下僕』か?」


 皮肉めいた笑みを浮かべながら義基はそう吐き捨てた。


「お姉さまはお姉さまなりにお父さまを尊敬していると思いますよ。西園寺家の庶民的な雰囲気を嫌がりもせずずっとお父さまを見守っているじゃないですか」


「お前さんの貴族趣味は康子譲りか……アイツにも困ったものだ。今回の近藤の一件も康子は事前に知ってたと思うぞ……ことが俺のところまで回ってくるまでだんまりだ。夫婦ってのはそんなもんじゃ無いと思うんだがな」


 愚痴るようにつぶやいた義基の表情が真剣なものに変わった。


「かえで。早速、陸戦部隊一個中隊を呼んでくれ。この書類は最高レベルの機密書類だ。できれば司法局の作戦終了時まで伏せておきたい。それと……くれぐれも『東和共和国』に戻っても『下僕』のストーカーとして逮捕されないでくれよ。これ以上恥をかかされるのは俺でもごめんだ」 


「承知しました」


 西園寺義基のその言葉を聴くと、すぐさまかえではタブレット端末で海軍省との打ち合わせを始めた。


「さあて……今回の近藤さんの決起で連座する人達をどう救済するか……勝者は情けを持たねえと嫌われるからな」


 『官派』の殺害目標第一位である、『平民宰相・西園寺義基』は人懐っこい笑みを浮かべてそう独り言を口にした。






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