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就職氷河期世代   作者: 冷やし中華はじめました
【第4章:雪解けと芽吹き 〜連帯と再生〜】

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実りの季節

第1章:失意の果て


高橋直人(46歳)の人生は、公園のベンチの上で行き詰まっていた。就職氷河期に大学を卒業して以来、非正規の職を転々とし、半年前、ついに完全に仕事を失った。家賃を払えずアパートを追い出され、ネットカフェ生活も底をつき、路上へ。家族とは縁が切れ、友人にも助けを求められない。プライドという名の薄い毛布だけが、彼の心を覆っていた。


「俺の人生、どこで間違えたんだろう……」


その問いに答えはなく、ただ空腹と孤独が現実として横たわっていた。


第2章:温かな一皿


9月のある朝、直人はふらふらと歩く先で「フードバンク」の看板を見つけた。NPO法人「セカンドハーベスト」が運営する炊き出しだった。ためらいながらも行列に並び、差し出された一杯のカレーライスを口にした瞬間、直人の目から涙がこぼれ落ちた。温かい食事が、これほどまでに心に沁みたことはなかった。


その出会いをきっかけに、直人は定期的な食料支援プログラムに登録した。ただ空腹が満たされるだけではない。スタッフの「高橋さん、こんにちは」という何気ない挨拶が、社会から消えかかっていた自分の存在を認めてくれるようで、何よりも嬉しかった。


第3章:再生への道


ある日、直人はボランティアスタッフから「一緒に活動してみませんか?」と誘われた。支援される側だった自分が、誰かの役に立てるのだろうか。半信半疑で始めた食料の仕分け作業だったが、その中で直人は新たな自分を発見する。


「高橋さんの作業、丁寧で助かります」


若いボランティアからの言葉に、直人は胸が熱くなった。自分にも、まだできることがある。人のために働く充実感が、彼の中に眠っていた活力を呼び覚ました。


直人の誠実な働きぶりは、やがてNPOのコーディネーターの目に留まった。


「高橋さん、うちのスタッフとして正式に働きませんか? あなたには、支援を必要とする人々の気持ちがわかる、私たちにはない強みがあります」


その言葉は、直人の人生を根底から揺さぶった。


第4章:実りの季節


直人は、セカンドハーベストの正式なスタッフとなった。彼の仕事は、自身の経験を活かし、同じように困難な状況にある人々に寄り添い、支援の輪を広げていくことだった。企業を回って寄付を募り、支援プログラムを企画する。かつて社会から弾き出された自分が、今度は社会を繋ぐ役割を担っている。その事実は、直人に大きな生きがいを与えた。


一年後、春。直人はアパートの窓から満開の桜を眺めていた。ちょうど一年前、同じ桜を公園のベンチから見上げていたことを思い出す。


「失われた20年じゃなかった。実りのための、長い冬だったのかもしれない」


直人は静かに微笑んだ。彼の人生は、再び実りの季節を迎えていた。セカンドハーベストという希望の種が芽吹き、今、多くの人々を支える大きな樹になろうとしていた。

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