表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
就職氷河期世代   作者: 冷やし中華はじめました
【第4章:雪解けと芽吹き 〜連帯と再生〜】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/17

氷の花 - 就職氷河期を生きた女性の物語

第1章:希望と現実


高橋冬美が名門大学を卒業し、大手広告代理店に入社したのは、時代が「就職氷河期」へと突入した頃だった。両親の期待を一身に背負い、彼女はがむしゃらに働いた。入社2年目で手掛けたキャンペーンの大成功は、彼女に大きな自信と、それ以上の重圧をもたらした。


成功を重ねるにつれ、上司である古田の態度は厳しさを増していった。


「こんなレベルの低い企画で、クライアントが満足するとでも思っているのか?」


会議室に響く罵声。人格を否定するような言葉の暴力。それはいつしか「パワハラ」という名の日常になった。冬美の心と体は、見えない氷の棘に絶えず刺されているようだった。


第2章:崩壊


入社7年目、冬美はオフィスで倒れた。診断は「過労による重度のうつ病」。長期休職を余儀なくされた彼女に、会社は追い打ちをかけるように「君の席はもうない」と告げた。


退職後、冬美の人生は転がり落ちていった。部屋に引きこもり、眠れない夜の苦しみを紛らわすために手を伸ばしたアルコールが、彼女を新たな地獄へと引きずり込んだ。貯金は底を尽き、家賃も滞り、気づけば彼女は路上で泥酔して倒れていた。


警察に保護され、迎えに来た母親の涙を見て、冬美は初めて自分がどん底にいることを悟った。


「お母さん……助けて……」


それは、長い間張り詰めていたプライドが砕け散った瞬間だった。


第3章:雪解け


母親の助けで、冬美はアルコール依存症の専門治療を受け、AAアルコホーリクス・アノニマスのミーティングにつながった。そこで彼女は、自分と同じように、社会的な成功の裏で苦しみ、すべてを失った人々と出会った。


「一日、今日一日だけ飲まない。それだけでいいんだ」


仲間たちの言葉と、互いの痛みを分かち合う時間が、冬美の心に凍りついた氷を少しずつ溶かしていった。断酒を始めて1年が経つ頃、彼女は初めてミーティングで自分の過去を語った。話終えた時、若い女性メンバーが言った。


「ありがとう。あなたの話を聞いて、私も一人じゃないって思えました」


その言葉に、冬美は自分の経験が無駄ではなかったのだと、涙がこぼれた。


第4章:氷の花、咲く


社会復帰を目指す冬美は、ハローワークで「就職氷河期世代支援NPO」のスタッフ募集という求人を見つける。


「私の経験が、誰かの役に立つかもしれない」


面接で正直に全てを話した冬美は、その熱意を認められて採用された。NPOでの仕事は、かつての自分と同じように苦しむ人々に寄り添うことだった。


ある日、冬美が登壇した講演会に、思いがけない人物が訪れた。かつての上司、古田だった。彼は深く頭を下げた。


「君にしてしまったことを、ずっと悔いていた。本当に、申し訳なかった」


その言葉に、冬美の心の中で長年凍りついていた最後の氷が、静かに溶けていくのを感じた。


数年後、冬美はNPO法人の理事長として、精力的に活動していた。彼女の歩んできた道は、決して平坦ではなかった。しかし、厳しい冬を耐え抜いたからこそ咲くことができる「氷の花」のように、彼女の存在は、今、同じ痛みを抱える多くの人々の希望の光となっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ