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我が国最強の魔術師が王女であるわたくしを狙っています!  作者: 古堂素央
第一部 家庭教師と教え子編

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第27話 魔力開放

 これまで感じたことのない力が全身を包んでいる。ユスティーナ目を見開いた。


「ユス、防壁の修復を!」

「え、でも、だって」


 亀裂が広がる防壁を見上げ、巨大な魔に足がすくむ。

 王笏はもはや飾りの宝玉のみとなっていた。口から細い管を出し、虫型の魔は宝玉を吸っている。


(魔力を取り込んでいるんだわ)


 吸われるたびに宝玉から大勢の叫び声が響いた。

 スロ王の王笏には処刑された者の魔力が集められている。ぞっとして震えが止まらなくなった。


「ユス、わたしの領域と同じです。あそこでの感覚を思い出しなさい」

「シルヴェステルの?」

「そうです。貴女ならできます。防壁にのみ集中を」


 このまま黙って見ていても魔の餌食なるだけだ。

 覚悟を決め、魔術展開に意識を傾けた。


(逆行した火を消すには水……? いえ駄目よ、そうすると余計に防壁が脆くなる)


 ユスティーナは思い切って風属性の術式を唱えた。途端に疾風が生じ、防壁に編まれた術式に勢いよく取り込まれていく。

 風に煽られた火が網目を高速で巡り、防壁の術式が書き換えられた。


「すごい……」


 ひび割れていたのが嘘のように、そこだけが強固な壁と化している。

 自分が生み出した魔術の威力にしばし呆然となった。


「ユス、集中を!」


 チョーカーから聞こえる声にはっとなる。

 宝玉の輝きは褪せ、怨嗟の叫びも途絶えてしまった。


(防壁に穴が!)


 ひび割れそうな宝玉に焦りが生じる。

 背後に迫る魔の群れに、かざす手のひらが小刻みに震えた。


(早く……早くしないと……)


「落ち着きなさい! 薄くてもいい、いちばん内側に防壁を展開するんです」


 言われるがまま術式の言霊を唱える。その間にも宝玉に亀裂が走って行く。

 動揺で思考が鈍り、ユスティーナは感覚だけ魔力を放った。


「ユス、基本を守って術式は丁寧に! 大丈夫、きちんとやれています」


 励ましに力が湧いて来る。

 広く視野を保ち、今にも崩れそうな範囲に目を向けた。


(基本に忠実に。落ち着いて、薄くてもいい、内側に魔術の防壁を……!)


 あらゆる属性の魔力をひと所に集め、すべてを適した場所へと展開する。その術式は極彩色の幾何学模様となって防壁に広がった。

 宝玉がパキンと砕けるのと同時に、見事な美しい網目状の防壁が造り上げられる。


(間に合ったの?)


 ユスティーナの張った防壁に阻まれて、魔たちはギチギチと耳障りな音を立てた。

 ほっとするのも束の間、魔が執拗に薄い場所にかじりつき、防壁が軋むようにたわみだしている。


(駄目だわ、もっと厚く張らないと!)


 思いとは裏腹にユスティーナから力が抜けていく。霞む視界に倒れるのを覚悟した。

 その寸前、あたたかな腕に抱き留められる。


「よくやりました、ユス。あとはわたしに任せなさい」

「シルヴェステル……」


 気が遠くなる中、シルヴェステルの魔術で見る見るうちに防壁が厚くなっていく。

 それを見届ける前に、ユスティーナは意識を手放した。



 *†*



 気づいたときにはもう寝室にいた。

 重い体を起こすと、侍女が安堵した様子で駆け込んでくる。


「よかった。ユスティーナ様、さ、早くお支度を」


 寝ぼけ(まなこ)のまま、強引にベッドから降ろされる。

 部屋にはさらに何人もの侍女がいた。普段はふたりもいればいいところだ。


「一体何事なの?」

「正午に謁見のご予定が。ユハ王に呼ばれておいでです」

「お父様に?」


 急かされるまま食事を取り、次は湯あみ、着替えに化粧と支度をさせられる。大勢の侍女の手によって、あっという間にユスティーナは王女の正装姿となった。

 謁見の前にシルヴェステルの元に行くよう言われ、訳も分からず勉強部屋へと向かう。


(どうしてここに来てお父様が?)


 もう何年も父親の顔を見ていなかった。

 しかしマリカが起こした一連の騒ぎで何か聞かれるのかもしれない。そう思い当たるとユスティーナは瞳を輝かせた。


(そうよ、わたくし魔術を使ったんだわ!)


 ユスティーナは魔術で防壁を修復し、見事魔の侵入を阻止した。

 それで父王に呼ばれたのだ。魔力を持った王女の功績を、皆の前で褒め称えるために。


「ああ、ユス、起きたのですか」


 勉強部屋に行くとシルヴェステルが待っていた。

 魔術師の正装をしているところを見ると、シルヴェステルも王に呼ばれたのだろう。


「何よ? 残念そうに」

「いえ、そのまま眠っていただいていた方がわたしとしては都合がよかったものですから」


 ふっと笑いながらユスティーナの首元に手が延ばされる。

 何か術式の言霊を唱えると、シルヴェステルの触れるチョーカーの輝石が仄かに輝いた。


「防御の魔術です。すっかり使い果たしてしまいましたからね」

「そう言えばマリカとリュリュはどうなったの?」

「ふたりとも無事ですよ。マリカ王女は重症のようですが」


 これまた残念そうに言うと、シルヴェステルは手を差し伸べ丁寧に腰を折る。


「では参りましょう、ユスティーナ様」


 聞きたいことはまだ山盛りだったが、今はそんな時間もなさそうだ。

 よそ行きになったシルヴェステルに手を預け、ユスティーナは謁見の間へと急いだ。


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