島の商店
小石を握り締めて殴ったせいで、右手がジンジン痛むし、討伐に時間が掛かり過ぎて疲労困憊だけれども、何はともあれチュートリアル終了に顔はにやける。
そしてお楽しみボスドロップ!何だか色々落ちている。まず、初心者パック。中にアイテムを20個保管できる腰に装着するタイプのポーチと、体力を回復するヒールポーション十本、気力を回復するイエローポーション十本、魔力を回復するマナポーション十本、そして鍋と包丁が入っていた。
バッグは時間停止付きの優れものだ。生ものは時間経過で痛むので、ありがたい。それから料理のレシピ。これはこのダンジョンのボスの固有ドロップだ。そして最後に、燦然と輝く金色の鍵――これはこの島の所有者の証だ。
鍵を手に取ると、左の手首にくるりと巻き付いて消えてしまったが、見えなくなっただけで鍵そのものの機能は使えるので問題ない。
私はよれよれになりながらも立ち上がり、出口、ではなく来た方向に足を向けた。
勿論途中に置いてきた戦利品を拾いに行くためだ。ダンジョンから出ると、元いた場所にワープした。
島の東寄り、海の見える高台に一軒の家があるはずなので、そこを目指して歩いていると開けた場所に出た。小さな森の丁度真ん中あたりだ。
そこに煉瓦造りの可愛らしい家があった。私はあっと思い至り、その家のドアを叩いた。
中から出て来たのは、ローブを着てフードを目深に被った小柄なお婆さんだった。この人は――
「何の用かな」
「買い物がしたいです!それと買い取りをお願いします!」
そう、ここはお店なのだ。この島唯一の。ゲームではNPCだったお婆さん。二十四時間店を開けていた。この世界でも二十四時間営業なんだろうか、後で訊いてみよう。私は中に入り店の品揃えを眺める。
真っ先に目につく場所に陳列されていたのは、ローションやらコンドームやら、所謂大人の玩具だった。怪しげな色の媚薬とか緊縛用のロープとか、バラ鞭、布面積の少ない下着、低温蝋燭、触手の種まである。
家の外観にそぐわないラインナップにくらくらしていると、お婆さんがヒッヒッヒと笑いながら、
「お嬢さんにはちと刺激が強すぎたかの?これらはみんなワシが丹精込めた手作りじゃ」
衝撃の告白に二の句が継げずにいると、お婆さんに手招きされた。
「お前さんが欲しいものはこのあたりじゃろ」
「こんなに沢山!何でも揃っているんですね」
「輸入品だから、ワシの手作りじゃないがの。何か必要な品ががあれば取り寄せもできるの」
お婆さんに示された場所には食器やカトラリーなどの日用雑貨や簡素なワンピースやパジャマなどの衣類、普通の下着、タオルやリネン、石鹸、洗剤など細々としたものが豊富にあった。
初回だけのボーナスだがボス討伐で少し懐が暖かだった私は必要最低限のものだけを購入し、売れそうなものは売ってしまって店を後にした。
因みに店は朝八時から夕方六時までしか営業してないそうだ。買い物客は他にいないのか尋ねたら、趣味でやっているから構わないんだとか。




