両親に捨てられた私
ゲームのメニュー画面開くかな?と思い付きでメニューと呟いてみる。ゲームでよく見ていた半透明のウィンドウが機械音と同時に開いた。項目が並んでるうちのステータスをタップして開く。
イリス・バーネット 16歳 【覚醒】
レベル1
HP 20/110 MP 0/0 SP 50/50 神力 ∞
状態異常 飢餓
称号
女神の加護 【パッシブスキル】
女神の愛し子に与えられる称号。魔力に替わり神力が無制限に使える。但し覚醒する必要がある。
前世ゲームの中ではグレーだったスキルの色が、今は緑色に反転している。現在は効果を発揮しているようだ。
覚醒って前世の記憶を思い出した事なのかも。でも神力って何だろう、ゲームでは無かったような。やっぱりMPはゼロだ。魔力がないんだ。だから今私はこんなことになっている。
この世界に於いて魔力は絶対的な力だ。魔力量の多寡は両親から遺伝する。貴族は魔力量の多い伴侶を求めるので、畢竟魔力の多い子供は貴族に片寄る。
しかし貴族だけでなく、あらゆる人間、種族、動植物、魔物にも魔力は宿っている。世界は魔素に覆われており、あらゆるものが魔素を取り込み魔力と言うエネルギーに変換して利用している。魔力は生命エネルギーと密接に関係していると考えられており、魔力がないというのは死に直結する。
魔力なしは極々稀に生まれてくるらしいのだが、生後すぐに亡くなるらしく、そういった人の情報はほとんどない。
魔力の色や質も遺伝するらしく、それを調べて子が実子なのか判定することもできる。その方法は神殿が専有していて神殿に喜捨することで、神官に調べて貰える。
私の両親は共に金髪だ。瞳の色は父が青で、母が緑だ。父は黒髪の私が生まれたことで、母の不貞を疑い、すぐに神殿に実子判定を依頼したらしい。結果は魔力反応なし。つまり実子ともそうでないとも判定できない。仮令魔力が無くても、容姿が両親のどちらかに似ていればまだよかったのだが、私は両親のどちらにも似ていない。母が不貞したかどうかはもう知る術がないけれど、母にはどうやら懇意にしていた幼馴染みがいたらしい。
納得のいかなかった父は母の不貞を理由に無理やり離婚した。私の事も母や母の実家に引き取るよう迫ったが、それを拒否して、母は私を置いて出て行ったらしい。母は最後まで不貞を認めず、父の子であると言い張っていたそうだ。その後の母について、幼馴染みと結ばれることはなく、裕福な商家の後妻に納まったという。
父は母と離婚し、後妻を迎えるが、後妻には長らく子ができなかった。子ができない事でまた離婚すれば、さすがに貴族としての体面が悪い。私は父の実子として出生届が出されているからだ。父は後継者選びに悩むことになる。このままでは実子かどうかも疑わしい、魔力なしの私を後継者指名しないといけなくなるからだ。