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魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜  作者: 海神 アリア
第3章 聖なる乙女の光と闇

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第3章8話 【急募】バ先にシスターが来店した時の接客方法②

蒼蘭ちゃん達が、謎のシスター御一行をお持てなしするお話、後編でございます。

◆◆◆

 私が厨房に戻ると、ツバメさんが商品の梱包を終えていたので、私はパウンドケーキとカステラを受け取って席へ持って行く。


「お待たせ致しました。こちら、お持ち帰りの商品でございます」


 私の声にシスターと子供達、そして聖が振り返る。どうやら、聖は子供達に捕まってしまったらしく、彼らにあや取りを披露していた。意外な特技を持つ我が友人は、宛ら保育士のお姉さんの様だった。


「ありがとうございます。これで今日味わえた素敵な時間を、教会の子供達に分けてあげられます」


「『素敵な時間』だなんて、お褒めに預かり恐縮でございます、シスターお嬢様」


 私は『気立ての良いメイドさん』を演じながら、商品と一緒に一枚の紙を渡した。


「これは?」


「アンケート用紙です。もしよろしければ、今後の参考までにご協力頂ければと」


 私は厨房で、妖精淑女とアイコンタクトを取っていた。いや、厳密に言えば、ツバメさんの読心魔法でガッツリ会話をしていた。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と。


 菊梨花や雷葉の話を聞く限り、『シスター14』と呼ばれるこの少女は中々の腕前を持つ魔女である。仮に彼女が在野の実力者なら、今後ともお付き合い頂きたい所存だ。異世界人は強敵揃い、やっつけるのに是非とも強力して欲しい所だ。


 だが、同時に懸念点も存在する。ツバメさん、もといマギナさん曰く、彼女が異世界人、或いはその手先ではないかという点だ。


 メイド喫茶での情報収集、『悪魔騒動の黒幕』という本命の情報は釣れず仕舞いだが、それなりに有益な情報は得られている。具体的な釣果と言えば出所不明の魔術道具、『悪魔を呼び出すアイテム』の噂だ。影子ちゃんが使わされた道具もそうだが、それらは裏組織に流通されている。七夕祭りの失敗を踏まえたのか、黒幕は半グレ系や裏組織の魔女と知覚者を手駒に選んだみたいだ。そして、どうも複数の組織の裏で糸を引いているらしい。こうした有益な情報を掴む事が出来たのは、影子ちゃんとの縁がきっかけだ。


 そして、あくまでも噂なのだが……魔術道具を流通させているのは『女の子』らしいのだ。フードで顔を隠してはいるが、背格好は未成年の少女なのだとか。そこそこ名の知れた裏組織のボスが、女の子と怪しげな取引をしているのだとか。


 無論、女の子というだけで『シスター14(フォーティーン)』へ疑いをかけるのは間違っている。だが、あからさまな偽名を菊梨花達に名乗っているのは何故なのか?それに在野の実力派魔女、オマケに若くして教会勤めのシスターをやっているなら、当然目立つ。故に、名前もそれなりに売れている筈だ。しかし、ツバメさんもステラさんも彼女の存在を知らなかった。魔法機関に顔の効く彼女らも知らないとなると、確かにこの聖女は怪しい存在とも言える。


 何より『悪魔騒動』という異世界人が本腰を入れて動き出したタイミングで、都合よく謎の実力者が手を貸してくれた、というのは『余りも話が出来すぎているのではないか?』というのがマギナさんの主張だ。私も、彼女の懸念点には一応納得はしている。


(でもなぁ…………)


 子供達のシスターへの態度や、魔法お披露目大会を楽しんでいる子供達に向ける温かい眼差しをみるに、少なくとも『根っからの悪人』とは考えづらい。一応、学生の魔女を助けた事は事実な訳だし……。


 あー、ダメだ。頭の中で色んな考えがグルグルしてる。一度疑い始めたらキリが無い。『情報収集』ってのは、思った以上に大変なお仕事なんだな……。


「すみません、青色メイドの『セイラ』さん」


「え、あっ、はい!如何しましたか?」


 長考の沼に陥った私は、シスター14の言葉で覚醒した。


「こちら、一通り書き終えたのでお渡ししようかと」


「ああ、すみません!ありがとうございます」


 私は彼女から受け取ったアンケート用紙に目を通した。まず名前欄、そこには『ショコラ・ヴァレンタイン(シスター14)』と書かれていた。


「『ショコラ』さん……素敵な名前じゃないですか」


 思わずポロッと口にしてしまい、私は慌てて『聖女ショコラ』の顔を見た。が、彼女はなんだか嬉しそうだ。


「そうでしょう?私の名前は、お師匠様から最初に頂いた、素敵な贈り物でございますから。私の髪色が『チョコレート』を彷彿とさせることから、『ショコラ・ヴァレンタイン』の名を授けて頂いたのです」


「恩師から頂いた名前、とても気に入っていらっしゃるのですね」


「はい!私の師は、世界一凄い魔術師ですので!」


 胸を張る聖女ショコラを見て、私は魔法お披露目大会の時以上に、彼女の年相応な一面を見た気がした。


「ところで、『シスター14』というのは……?何やら皆様にこの渾名を名乗られているようですが……?」


「それはですね……数字の『14』とは、不幸の数である『13』を乗り越えた、【幸福の数字】だからです。『不幸を乗り越えた先の幸せを掴む』、私は常にそういった聖女であり続けたいのですよ。故に自身への信条として、そして周囲には親しみを込めて、この渾名を呼んで頂きたいのです」


 そう語る聖女ショコラの顔に、一差しの影が映り込んだ気がした。


「あ、勿論、無理にとは言いません。先程の様に『ショコラ』と呼んで頂いても、一向に構いませんので。何せ、世界一素敵で偉大な魔法使いからの賜り物ですので!」


 名前を褒められた事が余程嬉しかったのか、すぐさま明るい口調に戻った。


「畏まりました、『ショコラお嬢様』。いえ、『聖女ショコラ様』とお呼びした方が宜しいでしょうか?」


「私もまだまだ修行中の身ではありますが……『聖女ショコラ』、中々に素敵な響きですね」


 謎の魔女と、なんだか少し打ち解けてしまった。いかんいかん、情報収集という本来の業務内容を忘れるな、私よ。


「えーっと、『お嬢様のイチ押しメイド』では……『聖』をご指名ですか」


 ほう……聖に目を付けるとは、中々に『(つう)』なお客様の様だ。


「はい。ホノカさんの料理も確かに美味しかったのですが、ヒジリさんのあや取りやカードパフォーマンスも、穏やかな気持ちで楽しめましたので」


「成程、成程」


 察するに聖女ショコラにとっては、炎華の派手な火炎魔法と美味しい料理より、聖のおっとり系かつ手堅い接客が刺さったのだろう。当然、彼女らの魔法と接客は優劣つけ難い代物である事は大前提であり、聖女ショコラも其処は評価している。


 が、シスター14に異を唱える財閥令嬢が居た。


「ちょっと、シスター!?私は?このアディラ・ナヴァラトナの魔法はどう感じたのよ!?」


「えっと……アディラさんもフウカさんも、メイドさんではなかったので……」


「そりゃそうだ。残念だったな、お嬢」


 困り顔で発せられた聖女の返答と、それを聞いたギタリスト魔女の肩ポンにより、令嬢はすごすごと引き下がって行く。


 ……って事は、『メイド』としての私の接客は要改善って事か?お冷とタロットカードマジックでは、聖女の心は掴めなかったのか……ちくしょう、オレンジジュースさえ、手からオレンジジュースさえ出せれば……。


 いや、落ち着け、惺。冷静になれ、迷走するな、目的を見失うな。兎にも角にも、ショコラは私を、『運命因子』の名を書かなかった。と言う事は、彼女はシロなのか……?いや、裏をかいて、敢えて蒼蘭ちゃん以外の名前を書いた可能性も……?


 あーもーわっかんねぇ……。


「それでは、私達はそろそろ帰りますので、お会計をお願いしますね。さぁ、子供達。メイドさん達と魔女のお姉さん達にご挨拶しなさいな」


「うん!さようなら、お姉さん達!」


「とっても素敵で楽しい時間だったわ!」


 子供達の屈託のない笑顔を見て、少し卑屈になっていた私の心が晴れやかになった。彼女らのティータイムに、私も少しは貢献できた様だ。


「……ちょっと待って!最後に、君達に質問をさせて!」


 私は咄嗟に、子供達を呼び止めた。

 まだひとつだけ、聞ける事がある。


「どうしたの、青いおねーさん?」


「君達はさ……ショコラさんの事、好き?」


 つい先程出会ったばかりの『私』からの目線よりも、子供達から見た聖女ショコラがどう映っているのか、そちらの方がより信憑性が高い筈だ。この事をギリギリになって思いつく辺り、我ながらまだまだ未熟なメイドさんだ。


「うん!絵本読んでくれるし、遊んでくれるし、オヤツも美味しい!ぼく、シスター14の事、大好き!」


「それだけじゃないわ!お昼寝の時、寂しそうにしている子を、優しく抱きしめてくれるのよ。それに……」


女の子は突然、暗い表情へとなった。


「悪魔に取り憑かれたお父さんとお母さんに、儀式の生贄にされそうになった私とお姉ちゃんの事を、シスター14は助けてくれたの。あの夜、東京に初めて悪魔が現れた夜に、シスター14は来てくれたの」


思いがけない答えが返って来て、私は息が詰まった。少女が直面した過去の凄惨さと、辛い過去を持つ子供へ迂闊な質問をした事への罪悪感で、だ。


「ごめんなさい!辛い事を聞いてしまって……嫌な思いをさせるつもりはなかったの」


「ううん、大丈夫。メイドさんに悪気が無いのは分かっているし、私はシスターに出逢えたのがとっても嬉しかったわ。私は、シスターみたいな魔女になるのが夢なの!」


「そっか……本当に素敵な魔法使いなんだね。私も、シスターの事を少し知る事が出来ました。ありがとうございます、ご主人様にお嬢様」


 さて、これ以上、私から探れる事は無さそうだ。後は、私のお師匠様に任せよう。


「コチラは、アンケートにお答え頂いたお客様への、細やかな返礼でございます」


 お会計を終えた聖女ショコラに、レジに居るツバメさんが小さな封筒を渡す。真っ白な封筒に極彩色の蝶をあしらった代物で、思わず飾りたくなる程に幻想的だ。


「これは?」


「図書カード1000円分と、次回『魔女の家』が開かれた際にお使い頂けるクーポン券となっています。当店の扉が再びお嬢様と子供達の前に現れた時、再会の証としてご利用下さいませ」


「ご丁寧にありがとうございます。メイドさん達全員のサービスが行き届いた、素晴らしい喫茶店でございました」


 すると聖女ショコラは、伝票の額に幾らか上乗せをしてお金を支払った。


「このお金はお店へのチップです。そして、こちらは…素敵なメイドさんや見習い魔女達への、細やかな返礼です」


 聖女ショコラは小さな杖と紙を取り出すと、丸めた紙に杖で魔法をかけた。すると、ガラスで出来た花束が出来上がったのである。透き通る茎に、花弁は仄かに赤やピンクの彩りがなされている。


「わぁ、とってもロマンチックな魔法ですね!」


 幻想的な贈り物を見た私は、思わず感嘆混じりに、聖女の魔法への感想を口にした。


「お褒めに預かり恐縮です。この『ガラスの魔法』は、私のお師匠様から初めて教わった代物です。ガラスの靴やガラスの棺、綺麗で幻想的なインテリアを作り出せる魔法なのです。ですが、やはりガラスなのでご注意くださいね。特に割れたガラスを手で触るのはいけません、いけませんからね?」


 最後にシスターらしく諭した後、彼女は子供達を連れて店を後にした。


 聖女ショコラ……結局、あの子について大したことは分からないままだ。理解出来たのは柔和で子供に優しく、だが諭すべき時に諭す『教育熱心な一面』を持つ事、そして女の子を悪魔の儀式から助けた事だ。多分、善人か悪人かで言えば『善人』の部類なのだろう。最後に頂いた細やかな贈り物も、『お師匠様』なる人物への尊敬の念も、そうした印象を彼女に抱かせる。


(やっぱり、彼女はシロなのかな……?)


 再び思考の沼に足を踏み入れかけたその時、私の袖を引っ張る者が居た。ツバメさんだ。接客時とは打って変わって、彼女の表情は強張っている。


「あの……どうされましたか?」


 私は彼女が心配になり、声をかけた。


(少し、厄介な事になってしまったわ)


 ツバメさんからの返答は、音声ではなく念話で行われた。声に出さないという事は、それほど深刻な状況なのだろうか?私は、妖精淑女に倣って念話で彼女に問いかけた。


(と言いますと?)


(封筒に付けていた私の使い魔が、()()()()()しまったの。これでは、ショコラさんの調査がより困難になるわ……)


(『封筒の使い魔』……ってあの封筒の蝶は、ただのデザインじゃなかったんですか!?)


 私はてっきり、そういう絵柄の封筒なのかと思っていたが、どうやら発信機の役割を担ったマギナさんの使い魔だったらしい。そうとも知らずに『綺麗な封筒だなー』とか考えていた自分が恥ずかしい……。


(いいえ、決して恥ずかしい事じゃないわ!だって封筒には認識阻害の魔法をかけていたのだもの。普通なら、蒼蘭お姉様の様に『封筒の絵柄』だと思ってくれるのだから)


 心を読まれた私はツバメさん、もといマギナさんからの励ましを頂き、メンタルを持ち直した。


(えーっと……つまり聖女ショコラさんは、普通じゃ気が付かない様な認識阻害を見破って、更に使い魔の蝶が発信機の役割をしている事にも気がついて、封筒から剥がした、と?)


 状況把握を兼ねた私の質問に、お師匠様は頷いた。


 マギナさんの魔法を見破った以上、聖女ショコラはかなりの凄腕と見て間違いないだろう。そして少々厄介なのが、『使い魔を剥がされた』というだけでは、敵対者が否かの判断が出来ない事だ。仮に彼女が異世界側でないにしても、防犯や個人情報保護を理由に剥がした可能性だって大いにあり得る。


(それともう一つ、シスター14に関して共有しておきたい情報があるの)


(それは、一体どういった情報ですか?)


(彼女、()()()()()()()()()()()()()()())


(居なかったって……どういう事ですか?)


(実を言うとね、私はこのお店に来るお客様を事前に調べているの。具体的には、このお店で危ない事をしたり、他のお客様やメイドさんに危害を加えたりする悪い魔法使いが居るかどうかをね。悪い魔女の存在を予知したら、彼女らが実害を与えない様にこっそり手を回していたのよ。とは言え、情報収集の為に入店して貰ってはいるのよ)


 驚きの新事実に、私は舌を巻いた。裏でどんだけ動いているんだ、この大魔女は。そう言えば、四日前は営業中に突然椅子を取り替えたり、一昨日は忘れ物を取りに戻ってきたお客様をバックヤードへ連れて行ったりしていたな。アレも未来予知を経ての対策だったのだろうか?


(でも、未来予知でも観測出来ないなんて……そんな事あるんですか!?だって、マギナさんは何度も予知を通じて、私達に助言してくれたじゃないですか!バイト初日から続いている悪魔騒動だって、時間や場所を予知してくれたからこそ、A組の皆や魔法機関の職員さんが対応できたのでしょう!?)


 マギナさんの『大魔女』としての実力は、今更疑うべくもない。そんな彼女でも予知しきれない者が居るとは、俄には信じ難い。


(私でも予知しきれない人は居るわ。例えば、今目の前で念話をしている貴女とか。それと、貴女が運命を変えた人とか、ね)


(……へ?)


 マギナさんの言葉で、私は課外授業の栞について思い出した。あの時、私は『時間停止』の時魔法に目覚めて危機を脱した。だが、マギナさんが栞に挟んでいた助言の手紙にはこう書かれていた。


()()()()()()()()()()()()』、と。


(……そうか、『運命因子』!私と同じ力を持った魔女が、聖女ショコラの運命に介入したって事か!?)


 人々が辿る未来を変える、強力な運命の力。異世界人達が『運命因子』と称する力の持ち主は、直接その呼び名を使われた私だけではない。異世界の女神セフィリアに仕える使徒、『大神官』である。そして、その中の一人を私達は知っている。


 渋谷で出会った蟲使いの魔女、ショッピングモールにて出会した冒険者達、課外授業にて対峙した植物魔法の使い手。ある意味で、ここまで起きた異世界人絡みの案件に於ける、全ての黒幕。


『大賢者ラジエル』だ。


(って事は、シスター14はラジエルの側近!?そう言えば、シスターは自分の師匠を『世界一凄い魔術師』って言っていたよな……)


 悪い予感が脳裏を過り、私の身体を凍て付かせる。シスター14こと聖女ショコラが、何故マギナさんの予知に現れなかったのか。今日来ない筈の客を、誰かが喫茶店へ引き入れたとしたら……?そして、その『誰か』は、自分の弟子をこの店へ送り出す理由があるとしたら……?例えば、『自分が手に入れようとしている魔女が、この店で働いているから』だとしたら……?


 私の悲観的な予想は、頬を撫でる温かい手のひらによって遮られた。


(でも、少なくとも今日のところは大丈夫よ。だって、蒼蘭お姉様が無事にお仕事を終わらせる未来を見たのだから。それに聖女ショコラも帰ってしまった以上、今日出来る事はもう無いわ。だから、今は焦らず、喫茶店のお仕事を続けてくれれば問題ないわ)


(確かに……今の所ですが、彼女からは殺気や悪意は感じられませんでした)


(そうね、『お姉様から見た聖女ショコラの印象』も、立派な情報よ。先入観を抜きにした接客だからこそ、彼女からも過度に警戒をされずに済んだってところかしら?)


 成程、敢えて未来予知の件を黙っていたのはそういう事か。確かに、先に聞いてしまったらフラットな視線でシスターを見る事は出来なかっただろう。さて、聖女ショコラの目的は、一先ずの情報収集と言った所だろうか?確かにマギナさんの言う通り、向こうが今日中に事を構えるつもりが無い上に、こちら側から仕掛け様にも情報が少ない。故に今日のところは打てる手が無い以上、先ずは目先の仕事に精を出すべきか。


 私は頬を両手で軽く叩き、メイドさんモードに切り替える。そしてお仕事の続きに取り掛かろうとして、ある事を思い出した。


(姉貴はまだ戻って来ないのか……?)


 先ほど他の客の忘れ物を届けに行ったきり、そして大金の入ったアタッシュケースを置き去りにしたまま、姉貴はこの店に戻って来ていない。それに聖女ショコラ御一行はさっき、姉貴と同じ方向へ歩いて行った……。


「ツバメさん、ちょっとお姉ちゃんに電話させてください!」


「ええ、勿論」


 許可を得た上で、私はバックヤードへ引っ込み電話をかける。今日は何事もなく一日が終わる。その予知を信じるなら、姉貴の身に何かが起こるとは有り得ない。だが念には念を入れて、彼女の無事を確認して置くに越したことはない。


 それに、お姉ちゃんが()()危険な目に遭う事など、私は絶対に避けたいからだ。

徐々に不穏な雰囲気が立ち込めていますが、第3章はこうしたシリアス路線でお届けします。決して、『可愛くて発育良好なメイドさんが笑顔と元気と魔法の力で接客をする』だけの話ではありません。


さて、次回の更新ですが…この連休中の間に投稿しますが、具体的な日程は決めていません。と言うのも、次の話も前後編で、話の内容的に『間を空けるのは得策ではないのかなぁ…?』と考えており、三連休中に一気に投稿するか否かを迷っているのです。


優柔不断で申し訳ございませんが、最低でも一話、三連休中には投稿しますので、お付き合い頂けますと嬉しいです。

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