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魔女学園のTS生徒〜被検体の俺は美少女の皮を着せられ、魔女学園(女子校)へ編入する事に〜  作者: 海神 アリア
第3章 聖なる乙女の光と闇

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第3章5話 魔女っ子メイドの蒼蘭ちゃん、今日もお仕事頑張ります!

さてさて、シリアスめだった前回とは打って変わり、今回は看板メイドちゃんのお仕事風景をお楽しみくださいませ。

 ◆◆◆

(暁虹学園女子寮、生徒の自室にて)


 私の名前は瑠璃海(るりうみ) 蒼蘭(せいら)、魔女学園の高等部1年生です。今日も魔女見習いとしての1日が始まります!


「ん〜!今日も良い天気!」


 私はカーテンを開けて、お日様の光をいっぱい浴びました。今日は7月13日の日曜日。試験休みの最終日で、月曜日から始まったメイド喫茶のアルバイト、その最終日なの!だから、今日はいつも以上に気合いを入れて、お客様にご奉仕するぞー☆


 寝癖を直して、朝ごはんを食べて、歯磨きと洗顔を済ませたら、行ってきますのお時間です。私はお師匠様のカフェ『魔女の家』へ、ウキウキ気分で歩きます。お日様もセミさんも元気いっぱい。だから私も、負けないように元気にご挨拶!


「おはようございます!」


「おはようございます、蒼蘭さん。本日は普段以上に張り切っていますね」


 最初に挨拶を返してくれたのは、お師匠様の助手にして『魔女の家』の店長、ステラさんです。お仕事中のステラさんはカッチリとしたタキシード姿に、目元を隠す仮面を着けています。アルバイト初日にステラ店長の格好を見た時は、中々に格好良いと思いました。


「はい、今日は色々と『特別な日』ですので!それに、少しでも皆さんのお役に立てるように頑張ります!」


「分かりました。それでは、本日もよろしくお願いしますね」


 ステラ店長とのお話も終わって、私は更衣室へ向かいます。


 ◆◆◆

(更衣室にて)


「ふんふんふ〜ん♪」


 メイド喫茶の制服に着替えて、ツインテールにした髪の上にヘッドドレスを着けて、サテンの手袋をすれば、メイドさんへの変身完了です!


 最後に、鏡の前で身嗜みのチェック、そして『仕上げの御呪(おまじな)い』。


「私は可愛いメイドさん、私は可愛いメイドさん、私は可愛いメイドさん、私は可愛いメイドさん、私は可愛いメイドさん、私は可愛いメイドさん、私は可愛いメイドさん、私は可愛いメイドさん、私は可愛いメイドさん…………


 鏡よ鏡よ、鏡さん?世界で一番可愛い女の子は誰かしら?」


「それは勿論、メイドの蒼蘭お姉様です!」


「わぁ、嬉しい!


 ……って、うわああっ!?」


 何と私の後ろには、いつの間にかお師匠様が立っていたのです!


「マ、マギナさん!?

 み、見ました……よね?」


「うふふ。可愛いメイドさんの可愛い御呪い、今日のお姉様はとっても張り切っていて可愛らしいわ♪」


「あぁ……」


 鏡の中のメイドさんは、顔が真っ赤になっていました。そんな私を見て、お師匠様ことマギナさんはクスクスと笑っています。この人、とっても凄い魔女なのですが……イタズラ好きな妖精さんでもあるのです。というより、何だか私にはイタズラ好きな一面ばかり見せている気がします。


「そんなに恥ずかしがらないで。鏡に問うまでもなく、お姉様はとっても可愛いメイドさんなのだから」


「うう……分かりました。私、今日もお仕事頑張ります!」


「ええ、その意気よ。さて、私も『準備』をしないとね♪」


 お師匠様はバレリーナの様にくるりと回り、とある魔法を唱えました。


「『鏡合わせの仮面舞踏(マス・カレイド)』」


 マギナさんの身体が光に包まれると、なんと彼女は二人に増えたのです!それだけでなく、光の中で浮かび上がるシルエットは、いつものツインテール姿のお師匠様から、違う姿へと変身していきました。


「お着替え完了でございます。不肖『ツバメ』、当店のスタッフとして、本日も精一杯ご奉仕致しますわ♪」


「あー、あー、コホン。

 よし、ボクも変身完了だ!『執事ロイ』、今日もお嬢様方に素敵なひと時をプレゼントするよ☆」


「おぉ……」


 光魔法の屈折現象と、認識阻害魔法を合わせた、お師匠様の変装技術です。一人は渋谷で初めて会った時の『ツバメさん』、お淑やかな大人のお姉さんです。もう一人は喫茶店がオープンした時に見せてもらった、男装少女のロイ君です。お師匠様曰く、ミドルネームの『ロイジィ』から取ったとの事。魔法自体も凄いですが、やっぱりマギナさん……ではなく、ロイ君のビジュアルも途轍もない破壊力です。朝陽を連想させる煌びやかな髪と虹色の瞳といった端正な顔立ち。その美貌から繰り出される、『活発でイタズラ好き』な表情は最早破壊兵器と言って差し支えありません。男装執事ロイ君、なんて恐ろしい妖精さんなのでしょう……。

 もちろん、服装はロングスカートなクラシカルメイドなツバメさんも、目を見張るほどの美しさです。こんな美人なメイドさんに微笑みながら紅茶を注いで貰えたら、中世貴族のティータイム気分を味わえること間違いなしです。


 因みにお師匠様が姿を変えている理由ですが、『大魔女が情報交換の場を提供している』と大っぴらに明かしてしまうと、魔女の皆様は緊張してしまい、帰って話が盛り上がらないのだとか。故に店長役はステラさんが勤め、念の為に彼女も軽く変装をしているという事です。更にツバメさんやロイ君がお客様と雑談を交える事で、より効率的な情報収集を行うのです。私も見ましたが、来店するお嬢様方からの人気はお二人とも確かな物でした。


 でも、気圧されてはいけません。私だって、仮にも『魔女の家』の看板メイドを任されたのです!今日も頑張って、お嬢様方にご奉仕するぞーー!!


 ◆◆◆

「お帰りなさいませ、お嬢様♪」


『魔女の家』に戻られたお嬢様方を、満面の笑顔でお迎えするのが一番基本のお仕事です。開店直後に三人の魔女様が帰ってきてくれたので、私はとびっきりの笑顔でお出迎えします。お席にご案内して、お嬢様方がメニューを見終わったら、私にお声がかかります。


「チーズケーキを一つ、チョコレートパフェを二つ、それとサイダーカクテルを三つ、お願いします」


「畏まりました、お嬢様方♪」


 私は厨房へ注文を伝え、すぐにホールに戻ります。開店後から少しずつ、お帰りになる魔女様が増えてくるからです。でも、大丈夫。ホールのメイドは私だけではありません。先程のお師匠様扮するロイ君は勿論、ここには頼れるメイドさんが働いています。


「オススメですか?やっぱり夏なので、パフェ全般や『季節のフルーツシャーベット』がオススメですよ」


 丁寧な物腰で注文を取っているのは、癒し系眼鏡っ子メイドの聖ちゃんです。『癒し系』と言うのは雰囲気だけの事ではなく、実際に傷を治せる凄いメイドさんなのです。


「1番テーブルの注文、ケーキとパフェ2つ、それとサイダーカクテルも用意できたよ!」


 キッチンから声が聞こえたので、私は急いで向かいました。厨房ではギャル系メイドの炎華ちゃんが、店長と一緒にドリンクや料理を準備しています。料理は基本的に前もって準備をして、食料品を長期保存できる魔術道具に入れておきます。普通の冷蔵庫とは違い、味も落ちないし衛生面も完璧な優れものなのです。勿論、追加料金とお時間を貰った場合、『作りたて』の料理を用意する事もあります。その時に大活躍するのが、料理が得意な炎華ちゃんなのです!


「お待たせしました、ご注文のお料理とドリンクです!」


 炎華ちゃんから受け取ったご注文の品を、私は笑顔でテーブルに運びました。勿論、ただお料理を運ぶだけじゃありません。


「美味しくなる御呪いは如何しますか?」


「当然、お願いするわ」


「畏まりました、お嬢様♪」


 私は満面の笑顔で、手のひらでハートを作って、


「美味しくな〜れ、萌え、萌え、キュン♡」


 おまじないをかけました。三人のお嬢様も、一緒に笑顔でおまじないをかけてくれました。私は、それがとても嬉しかったです。お客さんが喜んでいると、『誰かに幸せを運べる魔女』に近づけているって実感できるからです。

 …ううん、私はまだまだ修行中の見習い魔女。それにまだ開店して間もない時間です。私は今日も沢山頑張って、喫茶店に来るお嬢様をいっぱい笑顔にするのです!


「『せいら』ちゃーん、注文お願いしまーす!」


 また他のお嬢様からお呼びがかかりました!蒼石(サファイア)メイドの蒼蘭、早速急行しまーす!


 ◆◆◆

(昼休み、休憩室にて)


「あぁ〜疲れたぁ〜……」


 私は椅子に座り、背もたれに身体を預けた。ヤバい、体力を消耗し過ぎた……。


「流石に午前中から飛ばし過ぎだって……。ペース配分は大事よ、セーラ?」


 一足先に休憩を取っていた炎華からの正論に、私は顔を覆うしかなかった。


「うう……お嬢様の仰る通りです……」


「いや、あーしも今はメイドさんだから……。ほら、お昼ご飯食べて元気だしな?」


 炎華に促されるまま、私は賄いのオムライスを食べ始める。因みに、今の炎華はキッチン担当なのでネイルをしていない。魔法の世界では、簡単に付け外しの出来るネイルチップが存在するのだ。


「そうそう、『例の計画』は順調かね、蒼蘭クン?」


 私はオムライスを飲み込み、指揮官炎華に敬礼をする。


「準備は万端であります、葡萄染(えびぞめ)大佐!何度も練習しましたし、必ず成功させます!」


「ん、よろしい。そんじゃ、その為にも張り切り過ぎない範囲で頑張ろ?」


「うん、炎華のお陰でちょっと落ち着いた。ありがとうね」


「どういたしまして。それじゃ、あーしは一足先に戻るから」


 炎華が手をヒラヒラさせて、休憩室を後にした。彼女の言う通り、私達には大事な『計画』がある。その為にも、今日を無事に乗り切る必要があるのだ。この休憩時間で、少しでも英気を養わなくては。


 ◆◆◆

(昼休み終了後)


「いってらっしゃいませ、お嬢様♪」


 また一人、お客様をお見送りした私は内心でホッと息を溢した。時計を見ると、もうすぐ午後の3時だ。昼頃とおやつタイムが、喫茶店において一番忙しい時間帯である。そして今日、理由は不明だが『とても忙しくなる』未来が確定しているのだ。


 私だって、いい加減学習した訳である。振り返ってみれば何かしらの行事やイベントの時、決まって何らかのトラブルに巻き込まれているのだ。だから十中八九、メイド喫茶でのアルバイト中にも『何か』が起こる筈だ。そう思って私は毎晩の様に、自室で(バイトで着るものとは別の)メイド服を着て、未来予知をしていたのだ。


 だが、いつ見ても『何事もなく』仕事を終える未来しか見えなかったのだ。強いて言えば、『今日のアルバイトは物凄い疲れる』という事だけは分かった。疲労困憊の状態で、アルバイト代の入った封筒を受け取る未来が見えたのだから。


 まぁ、疲労の原因に心当たりがない訳じゃない。何を隠そう……本日は最終日、しかも『看板娘の蒼蘭ちゃん』がフルタイムで出勤をする日だ。普段の『蒼蘭ちゃん』は、午前中と午後のどちらかしか出勤しておらず、入れ替わりで『ヘルプバイトの茜ちゃん』が勤務している。


 これは異世界人側の裏をかく為でもあり、正体を隠した私が接客をする事で異世界人達の情報を客から探る事を狙った作戦だ。……まぁ結局、『悪魔騒動の首謀者』みたいな核心的な大物情報は釣れなかったが、それはそれで今日の布石にもなる。


 既に街頭で配ったチラシや店内の張り紙で、メイドさんのシフトは公開されているのだ。『運命因子』のフルタイム出勤、異世界人が喰らいつくとしたら今日だろう。無論、このカフェには様々な罠が設置されており、異世界から来たご主人様・お嬢様が暴れようものなら、すぐさま確保に移れる設計がなされている。


 まぁ当然ながら、『今日確実に異世界人が来る』という保証はない。同じ空の下で産まれたお嬢様方へのご奉仕も、立派なメイドの仕事である。そうこうしている内に、再びお嬢様のご帰宅だ。


「お帰りなさいませ、お嬢様♪」


「随分と楽しそうに愛想を振り撒いているじゃない?やっと愛玩動物(マスコット)としての自覚が出て来たのかしら?」


 やって来たのは異世界からのお嬢様ではない。正真正銘、ガチモンの財閥令嬢。1年A組のアディラ・ナヴァラトナであった。フリフリの愛らしいメイド服を着た知人に対し、普段の2割増しな高飛車オーラを放っている。アディラ嬢は私の頭のてっぺんからつま先まで、スカートのフリルから胸元のボタンまで、まるで美術品や骨董品を品定めをするかの様にしげしげと見つめた。そして、


「うふふ、()()()()()()()()()()()()、愛らしい愛玩動物(マスコット)メイドさん?」


 査定を終えた財閥令嬢からは、含み笑い混じりな『看板娘』の評価を受けた。


「……今日の私はメイドさんなので!お嬢様方にたっぷりの愛情を注ぐのがお仕事です☆」


 私はすかさず笑顔とVサインで迎え撃つ。そりゃ、メイド姿を揶揄われた事に対して、ムッとする気持ちも無くはないが……元々、このメイド姿を知り合いに晒す事など覚悟の上だ。そして、『看板娘の蒼蘭ちゃん』を見たご令嬢が揶揄わない筈がない事など分かりきっていた事では無いか。この程度で怯む雨海惺ではない。


 そうこうしている内にアディラ嬢の後ろから、見知った顔が続々と入店して来た。


「おー、かなりサマになってるじゃん!」


「瑠璃海ちゃん、このお店ってチェキやってる?雷葉、チェキ撮りたい」


 生徒会所属の双子、奏風歌と奏雷葉もアディラと一緒にやって来た。となると、後もう一人のお嬢様がいる筈だが……。


「あれ、菊梨花……お嬢様は?」


「あー、そうだった……。ちょっと待っててくれ」


 風歌は一旦店の外へ引っ込むと、若干顔が青ざめた菊梨花を連れて来た。


「だ、大丈夫!?まさか、異世界人にやられたとか?」


 私が菊梨花に話しかけると、彼女は風歌に肩を借りた状態で返答した。


「いいえ、誰かに傷を負わされた訳ではありません。ただ、恥ずかしながら……」


「……恥ずかしながら?」


「……"出た"のです」


「何が?」


「それは雷葉から説明する。単純な話、『悪魔』の他にも『幽霊』が出て来たって事」


 雷葉がスマートフォンの写真を見せて来た。そこには、悪魔達の周囲を取り囲む様に、骸骨を模った白いモヤの様な物が浮遊していた。そういや、菊梨花って『幽霊』が苦手だったっけ……。それにしても、(しもべ)を呼び出すタイプも居るのか…ここ最近の悪魔騒動、一筋縄では収まらないようだ。


「と、とにかく、お席へご案内致します!」


 私は彼女らを4人用の席へご案内した後に、


「聖、ちょっと良い?」


 頼れる友達に耳打ちでヘルプを頼んだ。


「え?な、何!?」


「菊梨花の事、お願い。貴女の『リラクゼーション・オーラ』が必要なの」


「あ、う、うん!そういう事なら、私に任せて、蒼蘭ちゃん!」


 聖は分かってくれたらしく、パタパタと足音を立てながらA組四人衆の席へ向かってくれた。何やら彼女の顔と耳が赤い気がしたが……いや、気にし過ぎか。何はともあれ、聖の精神安定魔法のお陰で、菊梨花の顔色はあっという間に良くなった。


「ありがとうございます、白百合さん」


「どういたしまして。私に出来る事があれば、何なりとお申し付けくださいな」


『迷い込んだ旅人を手当するメガネっ子メイドさん』という、何かのファンタジー小説にありそうな光景が、聖と菊梨花のやり取りで思い浮かんだ。彼女の治癒魔法と柔らかな表情が、この木組みの喫茶店と合わさる事でそのビジョンを生み出した。端的に言えば、『絵になる』というヤツだ。私が学園で最初に知り合ったこの友人、やはり只者ではないな。


「よーし、私も頑張らないと!」


 私は両手をグッと握って意気込んだ。だが、それが良くなかった。ガッツを入れるつもりで力んだ結果、胸元が引っ張られてしまい、『プチンッ!』と音を立てて、ボタンが弾け飛んだのである。


「わぁっ!?」


 プラスチック製のボタンは勢いよくお嬢様の元へ、アディラ嬢達目掛けて突っ込んで行く。このままボタンが財閥令嬢の額に炸裂すれば、彼女からの不評を買うこと間違いなしだ。


「はあっ!」


 だが、なんと聖が、飛来するボタンを空中でキャッチしてくれたのである。


「おぉ……!」


 余りのタイミングの良さと聖の反射神経を見て、喫茶店内の客がどよめき立つ。


「ありがとう、聖!お陰でボタン、どっか飛んで行かずに済んだよ」


「ま、待って、蒼蘭ちゃん!ボタン、すぐ直すから!」


 何やら聖が慌てている。一瞬、私にはその理由が分からなかった。が、周囲からの視線で察した。厳密には彼女らが見つめる箇所…ボタンが取れた事で露わになったシャツの下にあるブラジャーと、胸元がはだけた事により強調された、看板娘が持つ特盛サイズの乳房(おっぱい)だ。


「あ、えっと……お願いします、聖先生!」


「よ、よし!じゃ、サッと直しちゃおう!」


 聖は若干慌てた様子で、キャッチしたボタンを私のシャツの『胸元』に押し当てた。


 もにゅん。


「ひゃんっ!?」


「あ、ご、ごめん!大丈夫、蒼蘭ちゃん!?」


「大丈夫、大丈夫!慣れない感触で、ちょっとビックリしただけだから!」


 自分の胸を『誰かに揉まれる』感覚は、未だに若干慣れない所がある。自分で揉むのと他人に揉まれるのとでは、感覚がどうしても違うのだ。私が女の子になってから約3ヶ月、頻繁に自分のを揉んではいるが、誰かに揉まれる機会などそうある物では無いからだ。


 とは言え、善意でボタンを修繕してくれる友人に対して漏らす声ではなかった。そのせいで、私達はお嬢様方からの視線とどよめきと、財閥令嬢からの舌打ちを一身に受ける事になったのだから。大いに反省せねば……。


 ◆◆◆

 さて、このアルバイトは普通の接客業とは違い、怪しい人物の有無にも気を張る必要があるから、どうしても細かいところにまで気を向けてしまう。

 例えば、3番テーブルの2人組だ。20代半ば頃のお嬢様方は午前中からずっと、ドリンクやら軽食やらをチマチマと注文して、このカフェで粘っている。そんなにメイドさんが好きなのかと思いきや、特に記念撮影を頼む訳でもなく、ただ飲食をしているだけだ。怪しいと言えば怪しいが……グレーな段階で行動に移すわけにもいかない。


 他に怪しい人物と言えば……5番テーブルのお客様、コチラはお一人様だ。年齢は高校生から大学生くらいだが、先程から何だか落ち着きが無い。かと言って、喫茶店の内装や雰囲気を楽しんでいる訳でもなさそうだ。『魔女の家』に来たのだから、遊園地に来た子供の様にワクワクすれば良いものを、この人は少し表情が険しいくないか?それに、ちょくちょく私の事をガン見しているような気が……?


 うーん、一度疑い出したら誰も彼もが気になるし、怪しく思える。私が注文を取っている時、胸部に視線を送ってくる客も怪しく感じるし、先程の聖の驚っぷりも気になると言えば気になる。いや、止めよう、これ以上はキリがない。特に前者は殆どが蒼蘭ちゃんのおっぱいを一度はガン見しているし、そもそも魔女達の交流の場が『メイド喫茶』というのもツッコミどころだろう。これ以上、アレコレ気にするのはダメだ。今の私はメイド喫茶の可愛い看板娘。お嬢様の前で、難しい顔をするのは御法度である。


 私は頬を軽く捏ねた後、笑顔で仕事に戻る。その直後、カランコロンとドアベルが鳴り、新しいお嬢様がお帰りになられた。さぁ、今こそ気を引き締めて、そして満面の笑顔でお出迎えする時だ!


「お帰りなさ…………いませ、お嬢様」


 可愛い看板娘の満点笑顔が、単なる営業スマイルへと変わった瞬間である。何故なら…………


「わぁ!とっても可愛いわよ、蒼蘭ちゃん♪」


 目の前にいるのは只のお嬢様ではなく、()()()()()()()()()のだから。

「これの何処がシリアス章やねん」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、何卒最後までお付き合い頂けますと幸いです。


次回は金曜日更新予定です。

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