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第3話 要するに半分以上が博士の趣味

 胡桃沢(くるみざわ)博士から差し出された麦茶を飲みながら、その後に受けた説明を要約するとこうだ。


 先ず、この世界には『魔法』が存在する。

 次に、その力を自在に扱えるのは女性のみである。

 そして、無論全ての女性が魔法を扱えるわけではなく、ごく一部の限られた者だけだ。

 最後に、『魔法』という存在を()()()()()()であれば、非常に稀ではあるが可能な男性もいると言う事だ。そして、そうした男性は『知覚者』と呼ばれているらしい。


「そして、君が着ている皮は魔法が扱える少女の身体だ。もちろん彼女は本来実在しない。だが(しずく)、君が世を(しの)び、己の身を守るにはちょうど良いだろう?」


「世を偲ぶ……?身を守る……?」


「今日君が消失しなかったのは、単なる幸運に過ぎない。だが、今後はどうだ?もしかしたら明日以降、君は何らかの魔法事件に巻き込まれる可能性もゼロではない。

 特に、魔法を感知する男性というレアな存在だ。もし情報が漏れれば、犯罪者共に狙われる可能性もある。」


「なっ……!?

 それは……かなりヤバくないですか?俺、死ぬ可能性があるって事ですよね?」


「まぁ、本来なら国家の保護対象として守られるのだろうが……。

 それでは面白くない。折角だし、君を守るついでだ。私の研究に付き合っておくれ。」


「研究って……?」


「端的に言うと、君のように魔力感知が出来る男性を魔女にする研究さ。君は魔法が扱える少女……魔女達の学校に通うのだ。そこに入れば、身を守る術も教えられるし、国の保護も受けられる。」


「この身体って、本当に魔法が使えるんですか?」


「使えるとも。例えば、このコップに水を注いでみてくれ。

 手から水を出す効果をイメージするんだ。」


「えっと……こうですか?」


 俺は空になったコップを口を手のひらで覆い、水を出す光景をイメージする。すると、手から出た水がトポトポと注がれていく。


「わっ!?本当に出た!?」


「そう、君の身体……瑠璃海(るりうみ) 蒼蘭(せいら)は水の魔女だ。だから、君は水を操る力を身につけたのさ。その美貌と発育良好なボディとセットでね♪」


「既に名前まであるんですか……。

 ところで胡桃沢博士。その……魔法の研究で女の子になるにしても、どうしてこんな……ここまで童顔で発育良好な容姿にする必要が?」


「はっはっは、君は面白い質問をするな!


 理由?『私の趣味だから』以外にあると思うか!?」


 博士は腰に手を当て、胸を張って返答した。

 変態が脅威的な頭脳と技術力を所有していると、とんでもない事が起こるようだ。俺は身をもって体感した。


「それで、結局君はどうするのだ?被験体となり、魔女学園……国が運営する、魔法の教育機関に編入するつもりはないか?学園では自衛のスキルも身につくし、今の君よりは安全な筈だ。

 悪い話ではないと思うのだが?」


 博士にそう言われて、俺は少し考える事にした。 要するに二択だ。魔女学園……『国の魔法教育期間』に入学するか、或いは普通に国の保護を受けるか。どちらを選んでも国家の保護を受ける以上、今の状況よりは遥かに安全だ。


 だが、より安全なのは前者だろう。

 まず、この世界には『魔法』という、未知の力が存在する。更に可能性の話とはいえ、今後その未知の力により、再び危険に晒される事もあり得るのだ。


 その力について、()()()()()()()()、だ。


 感知する事しか出来ないままだと、俺は余りにも無力である。何の知識も、対処法も、抵抗する手段も、或いは心構えすら知らないまま、だ。いつ訪れるとも分からない事象に、怯えながら暮らすのは嫌だ。想像しただけでも、気が休まらない。幾ら国が保護してくれるとはいえ、無力な人間のままでは限度がある筈だ。圧倒的かつ摩訶不思議な事象を目にした以上、そう考えざるを得ない。


 だが、身を守る術があるなら、また話は違ってくる。魔女学園と言うからには、魔法の知識を学べて魔法の使い方を身につけられる筈だ。博士も言った様に、自衛の技術を身につける事が出来たら心にも余裕ができる。


 それと……これは非常に俗っぽい理由だが、魔法には興味がある。絵本や小説の中にしか存在しないと思っていたが、実際には違う。そんな夢のような力は、知覚者の俺にとってすぐ近くの存在だ。なら、触れてみたいと思うのは仕方ないだろう。正直な所、そういった理由も有るには有る。無論、比率的には『自衛の知識や技術を学びたい』という理由の方が大きい。


 そう、決して、蒼蘭の身体に惹かれたとか、邪な考えや下心などは……下心とかは……。


「……分かりました。どうか、博士の実験を手伝わせてください。」


 俺は長考の末、博士の助手になる事を申し出た。

 彼女は、俺の返答にご満悦のようだ。


「さて、可愛い可愛い蒼蘭ちゃんをいつまでも全裸で居させる訳にはいかないな。早速お着替えと行こうじゃないか?

 おっと、その前に……『これ』は人目につくから外しておこうか?」


 胡桃沢博士は俺の頸に手を伸ばすと、ベリ……ベリ……と音を立てて金属のファスナーを剥がしてしまった。


「な!?

 え、それ取れるんですか!?

 でも……それじゃあ、どうやって脱げばいいんですか?」


「定期的なバイタルチェック以外は、蒼蘭ちゃんの姿でいて貰わないと困る。暫くはそのままだね。

 さて、先ずは……下着から付けようか♪」


 彼女が手にしたのは、黒色のブラジャー。

 ……とんでもないデカさだ。


「蒼蘭ちゃんは身長148cm、バストは95cmのIカップさ♪

 ブラジャーの付け方と共に、よ〜く覚えておくんだよ?」


「ちょ、ちょっと待ってください!

 本当にそれ……付けないとダメですか?」


「下着を付けないと、服に擦れて痛いよ?肌荒れにもなるし、何より支える物がないと胸の形が崩れてしまう。折角可愛い姿になったんだ。自分の身体は労わるように!

 兎に角、問答無用だ!」


 抵抗虚しく、俺は下着を付けられ服を着せられる。


 こうしてあれよあれよと言う間に女の子生活がスタートした。転校当日までに、魔法の初歩的な知識と訓練、そして『女の子』としての身の振り方……口調や仕草、着替えや身体の洗い方まで徹底的に叩き込まれた。


 そして今日が転校初日、そこは決してゴール地点ではない。色々な意味で、新たなるスタート地点に過ぎないのだ……。

惺くんが学園に入学する理由についての描写を追加しました。少し動機の書き込みが弱いと感じたのと、惺くんは割とじっくり考えるタイプなので、その方が良いかなと考えた次第です。

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