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さよなら現世

本日より毎日投稿して行きます!

よろしくお願いします!

 最近、同じ夢を見る。


「ここに!悪逆の限りを尽くした女帝セラフィーナを処刑する!」


 断頭台には銀髪の女性。

 自分の手には両手斧が握られている。

 

「この女は多くの民が死に、多くの民が苦しむ事が分かっていながらも帝国の再興という無茶な事をやろうとし、多くの犠牲を出してそれを成し遂げた!」


 眼の前には大量の民衆。


「だが、善政を敷くどころか税は重く、他国への侵略は繰り返し、少しでも反乱の意思があるとみなせばすぐに処刑した!こんな皇帝を許して良いのか!?」

「さっさと殺せ!」


 民衆の一人が石を投げつける。


「そんな奴とっとと殺せ!」

「消えろ!クソ女!」

「私の夫を返して!」


 それを皮切りに多くの石が投げつけられる。

 その何個かは銀髪の女性にあたり、血を流している。


「静まれ!」


 すると、民衆はすぐに静まり返る。


「この斧は諸君等の怒りそのものだ!諸君等が投げた石、それらの重みをこの斧は背負っている!私が諸君等の代わりにこれを振り下ろそう!」


 民衆から歓声が上がる。


「やれ!やっちまえ!」


 斧をしっかりと握り、断頭台の女性の前に立つ。


「さようなら……。セラ。」


 そのまま一気に斧を振り下ろした。

 そして、いつも夢はそこで終わる。

 昔から予知夢のような能力があるのか、夢で見た事は現実で起こってしまう。

 しかしこの時は、あまりにも現実からかけ離れた夢だったので気にしていなかった。




 これは、私がまだ日本という国の柴山勝幸という男だった時代の話である。

 私は日本競馬の若手の天才ジョッキーとして、世間から注目の目を浴びていた。

 デビューしてから殆どのレースで掲示板に入っていた。

 重賞も何度か勝ち、今度、ついに初となるダービー出走が待っていた。

 私は、当日乗る馬の調子を見に、牧場を訪れていた。

 

「どうも。調子はどうですか?」

「おお、最高だよ。こっちも君が初めてダービー勝てるかもかかってるからね。ちゃんと仕上げたよ。」

 

 彼はこの馬の調教師。

 数々の名馬を仕上げてきた人だった。

 

「馬、見ていくかい?」

「ええ、お願いします。」

 

 彼の案内の元、馬房を訪れる。

 そこには今度ダービーを共に走る馬、トップコスモスがいた。

 パッと見は元気そうだ。

 

「大分良さそうてすね。」

「あぁ。コイツも気合入ってるよ。」

 

 ぽんぽんと馬を叩く。

 トップコスモスもよく懐いているようで、調教師に寄り添っている。

 

「……一緒に頑張ろうな。」

 

 この馬には思い入れがあった。

 この馬の父親はかつて私の牧場で生まれた馬だった。

 地方所属のまま中央クラシック三冠路線に全て出走し、地方競馬の星と言われた。

 クラシック路線では勝てなかったがその強さから海外G1に挑み、勝利した。

 ……私が騎手になろうと決意した切っ掛けでもあった。

 

「……じゃあ、今日は失礼します。お忙しい所ありがとうございました。」

「もういいのかい?まぁ、忙しいだろうしね。あぁ。気を付けてな。」

 

 私はそのままその場を後にした。

 外にはタクシーを待たせていた。

 そこに向かって、一人歩いていた。


「ん?」


 が、タクシーはあるが、扉は開いたまま運転手の姿は無かった。

 ボンネットの上にはタバコの箱とライターがある。

 

「おかしいな……。」

 

 ケータイを取り出し、電話をかけようとする。

 が、何か気配を感じ顔を上げる。

 

「っ!」

 

 気付いた時には遅かった。

 眼の前にはヒグマがいた。

 遠くの方には子グマが見える。

 親子連れだ。

 親熊は既に腕が振り上げられている。

 ここは山が近い。

 眼の前も道路を挟んで茂みだ。

 そこから来たのだろう。

 タクシーの運転手は逃げたのだろうか。

 それとも襲われたのか。

 これが北海道の怖い所だ。

 いつ熊に遭遇するか分からない。

 そんな事を考えているとヒグマの腕は振り落とされた。

 それを最後に記憶は途絶えた。

 

 

 

(ん?)

 

 目が覚めると私は誰かに抱きかかえられていた。

 一瞬病院かと思ったがどうやら違うようだった。

 

「……アル。おはよう。」

 

 全く見覚えのない黒髪の女性に抱きかかえられている。

 その隣には見覚えの無い男性。

 そこで私はある疑問を覚えた。

 

(抱きかかえられている!?)

 

 そう、自分の身長は決して高い方では無かったが、だとしても抱きかかえられているというのはおかしいのだ。

 そもそもアルというのはどういうことだろうか。

 そして、女性の背後にある鏡が目に入った。

 

(……は?)

 

 私は驚いた。

 何故ならば、見慣れた自分の姿ではなく全く見覚えのない幼児がその女性に抱きかかえられていたのだ。

 

(成る程な……。)

 

 そこで初めて、私は異世界に転生したのだと悟った。

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