演習 罠
「さて、アルフレッド様は上手くやっているでしょうか。」
伝令は何も来ていない。
という事はまだ策の途中ということだ。
「何にせよ、今は信じて待つだけですね。」
私に出来ることは言われたことを忠実に守るだけだ。
レイン殿もかなり良くやってくれるだろうし、不安になる必要は無いだろう。
レイン殿ならば確実にアルフレッド様のために尽くすだろう。
心配は無い。
「……ん?」
すると、無数の足音が聞こえてくる。
馬の足音だ。
「……来ましたか。」
木刀を構える。
演習のため木刀だが、真剣のつもりでやる。
準備は万端である。
「さて、やってやりますか。」
森の切れ目からアルフレッド様達がやってくる。
やはり、策は成功したようだ。
「セイン!後は任せた!」
「任されました!」
私達を追ってきているのはフレンの部隊だ。
恐らく、別働隊は先回りして挟撃してくるつもりだろう。
もう間もなく眼の前に敵が現れるはずだ。
セイン一人を残し、そのまま素通りする。
暫くした後、少し先に旗が立っているのが見えた。
相手の旗だ。
「来たぞ!」
眼の前に敵の軍が現れる。
数は恐らく三百。
こちらの機動力に合わせて動いていた筈なので、かなり疲弊しているはずだ。
「迷うことはない!突っ込め!全ては作戦通りに進んでいるぞ!殲滅しろ!」
「ちっ!絶対に通すな!フレン様の軍が来てくれるはずだ!それまで持ちこたえろ!」
敵の指揮官らしき男が叫ぶ。
両軍が衝突する。
混戦状態になり、馬から引きずり降ろされる者や、自ら馬を降りて戦う者。
相手の疲弊も相まってか、中々良く運んでいる。
相手の望みはフレンの部隊か。
が、戦闘が長引くもフレンは現れない。
「くそ!フレン様はいつになったら……。」
「隙あり!」
ほんの一瞬の隙を見逃さず、敵将を打ち取る。
と言っても殺したわけではないが。
(演習だから躊躇なくやれたが……実戦なら私は斬れるだろうか……。)
少し考える。
すると、指揮官を失い、しかも疲弊していた敵は瞬く間に散り散りに逃げていく。
ここは勝てたようだ。
「ア、アルフレッド様。」
「ん?どうした?」
倒した敵将が駆け寄ってくる。
「お見事です……。フレン殿はどうされたのですか?」
「あぁ、フレンならな……。」
「はぁっ!」
雑兵を蹴散らす。
敵はかなり疲弊している。
正直、自分の敵ではない。
「流石は剣聖の息子。強いな。」
「お褒め頂き光栄です。っと!」
フレン殿の称賛の声を聞きながら雑兵を倒していく。
既に五十人近くは倒している。
自分を素通りしようとする者から率先して倒していく。
「まさか一人で足止めとは。ならばアルフレッド様の軍は二百五十……いや、本陣になるということは三百か?……成る程、我々の別働隊の数と同じか。読まれていたか……。流石はアルフレッド様だ。」
「そちらも、流石は猛将フレン殿。その通り、お見事です。」
フレン殿が言った通りである。
アルフレッド様の策はこうだ。
セラ様の陣容が本陣に四百、その他二部隊はそれぞれ三百と予測した。
これは戦の定石で典型的な割合の編成だ。
そして、圧倒的不利を察したアルフレッド様はこの定石を崩し、本陣を三百、別働隊を二百五十と一人という編成にした。
それに通常本陣はそう簡単には動かない。
派手に動き回る敵部隊をまさか本陣だとはと思わない。
旗指し物を減らし、縦列で移動することで数を惑わした。
つまり、百程度だと思わせ、執拗に追撃をさせたのだ。
挟撃させるように誘導した。
そして、疲弊した所を私とアルフレッド様がそれぞれ撃滅する。
そういう算段だ。
「総員、下がれ。私がやる。」
「……さて、本気を出させてもらいますよ。」
やはり、こうなるか。
既に相手の術中に嵌まったと分かれば相手はこの状況をいち早く離脱したい筈だ。
それに、兵を無駄に失うわけには行かない。
ならば、フレン殿が出てくるだろう。
このフレン殿の部隊の足止めを私に任せたのは私しか止められる人が居ないからだろう。
「では、行きますよ!」
「来い!どれ程成長したか見させてもらうぞ!」
ここ数年はフレン殿と手合わせをしていない。
幼い頃から剣聖である父に稽古を受け、父を失ってからは父に稽古を最後まで受けたトール様に鍛えてもらっていた。
軍略についてもフレン殿からたくさん教わった。
今、成長の証を見せる時だ。
さぁ、本気を見せてやるとしよう。
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