亡国の姫
「私が……皇帝の娘?」
「そうだ。」
薄々、セラは家族とは血が繋がっていないのでは無いかと思ったが、まさか皇帝の娘だとは思わなかった。
その綺麗な銀髪が確かに自分達家族とは違うという証拠になってしまっている。
「……順を追って説明しよう。」
セラは下を向き、動かない。
信じられないのだろうか。
「お前達が生まれる直前、帝国では大規模な飢饉が発生していた。それでも皇帝陛下は税を減らそうとせず、領主達の不満は高まって行った。」
「それについては覚えています。私も父と共に苦労しました。」
そう言えばセインはその頃を生きているのか。
恐らくまだ幼い頃だと思うが、大変な経験をしていたのか。
「そして、ついに領主達の不満が爆発し、殆どの者が皇帝陛下に弓を引いた。その首謀者が今の公王だ。俺や三神将は最後まで皇帝陛下のお側にいるつもりだったが、皇帝陛下からこう命令された。」
「……まさか。」
その後の流れに予想が付く。
私はセラの方を見た。
「そうだ。産まれたばかりのセラを引き取り、反乱軍に加担してくれとご命令された。そして、三神将が娘を守ってくれと。そうすればその後の国で三神将は潰されること無く、娘は平和に過ごせるからと。」
「ですが、我が父はご命令に背き、最後まで皇帝陛下の元に居ました。」
そういうことだったのか。
三神将の内、何故セインの父だけが居なかったのか疑問であった。
それも納得か。
忠将の名の通り最後まで皇帝に忠誠をつくしたということか。
「これまで徹底して秘匿してきましたが、勘づかれている可能性もあります。命を狙われるかもしれません。今回の奇襲ももしかしたら……。」
「……皇帝陛下は、罪を受け入れ、これ以上人が死ぬことが無いようにしたんだ。セラ。いや……。セラフィーナ。我々三神将は命をかけてお前を守る。セインも忠将の後を継ぐつもりだ。だから……。」
だからこれからは引きこもっていろとでも言うつもりなのか。
それは、酷というものだ。
「……嫌です。」
暫く黙っていたセラが口を開いた。
「私はセラフィーナ等と言う名前ではありません!私はトール・エルドニアの娘!カルラ・エルドニアの娘!そして、アルフレッド・エルドニアの姉、セラ・エルドニアです!命をかけて守られる筋合いはありません!」
セラが涙混じりに言う。
その勢いに、皆が口を閉じてしまう。
が、私は口を開いた。
「……姉上。」
「アルも何か言って!」
セラは自分が味方してくれると思っているようだが、私はただ自分の思いをぶつけるだけだ。
少し感情的になっているようだ。
「私はセラ・エルドニアの弟です。セラ・エルドニアは弟思いの最高の姉です。亡国の姫だとか、血が繋がっていないとか関係ありません。誰がなんと言おうとあなたは私の姉です。何があっても命をかけて守るつもりです。姉上と同じく、家族を命をかけて守りたいんです。何も気にすることはありません。」
「アル……。でも……。」
その言葉にセラは喜んでいるように見えたが、それを表に出そうとはしない。
あともう一押しだ。
ならば、この言葉を使うとしよう。
……少し気恥ずかしいが。
「あー……俺はお姉ちゃんのことが大好きだから。守りたいんだよ。」
「っ!アル!私も大好きだよ!」
すると、満面の笑みで抱きついてくる。
チョロい。
まだ中学生終わりくらいの年齢だが、十分美人だ。
正直、姉でなければ付き合いたい程の美人だ。
……ん?
もう姉では無いのか?
……いや、考えるのはよそう。
「……セイン。」
「はい。」
その様子を見ていた父上達が口を開く。
「俺は育て方を間違えたのか?」
「……分かりません。」
未だにセラは抱きついてくる。
「もう!やっとお姉ちゃんって言ってくれた!弟じゃなかったら結婚したいくらいだよ!……ん?」
まさか。
その結論に行き着いてしまうのはまずい気がする。
セラはかなり頑固というか、意志の強い女性だ。
「実は弟じゃないから結婚できる……?」
すると、セラはこちらを獲物を見るかのような目で見てくる。
「アル!結婚しよ!」
「嫌です。父上!止めて下さい!」
「……すまんな。」
「セイン!」
「申し訳ありません……。」
姫だから強く出れないということか。
ならば仕方が無い。
セラには可哀想だが、こうするしか無いか。
「姉上。そんなに強引に来るのなら嫌いになりますよ。」
「うっ!……ごめんなさい。」
そう言うと、セラは動きを止めた。
少し可哀想だが、仕方が無い。
だがまぁ、元気になったようで何よりだ。
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