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15 舞踏会 (2)

短めです

 


「やあ、シャーロット嬢。見違えたよ、とても綺麗だね」


 振り返ると立っていたのは先日侯爵邸で会ったエリアスの友人のケヴィンだった。

 今日は肩までの薄茶色の髪をハーフアップにしてサイドを編み込んでいてお洒落で格好が良かった。


「ケヴィン様、ありがとうございます。ケヴィン様もとても素敵です。

 …あの、先日はダンスの途中で気を失ってしまい、ご迷惑をおかけしました」


 前回、侯爵邸でケヴィンにダンスの練習相手になってもらったとき、シャーロットは寝不足がたたって途中で意識を失ってしまった。目覚めたときにはすでにケヴィンはいなかったので謝罪もできていなかった。



「気にしないで。こちらこそごめんね。疲れていたようだったのに気づけなくて」

「いえ」


 そこでケヴィンは視線をフロアで踊るエリアスとロゼッタに移した。つられてシャーロットもそちらを見る。

 ちょうど2人は息ピッタリに華麗なターンを披露していた。


「2人はいとこ同士だって聞いた?エリアスは君と付き合う前はよくこういう舞踏会のパートナーに彼女を連れていたんだ」

「そうなんですね」


「絵に描いたような美男美女だ。お似合いだと思わない?」

「………そう、ですね」


「嫉妬した?」

「いえ、そんな資格ありませんし。私は仮の恋人ですから」


「そう言いながら君は本心ではもう一度エリアスに好いてもらいたいと思ってるんじゃないの?」

「いいえ、そんなの無理だってわかってますから」

「なぜ?」

「こんな私を好きになる人なんていませんから」


 優秀な姉リーディアとは違い、何をしても凡庸なシャーロット。あんなに練習したダンスも満足に踊れなかった。


「ふうん………そうだ、これよかったら。僕もさっき飲んだけど美味しかったよ」


 ケヴィンが渡してきたのはオレンジ色のドリンクだった。


「ありがとうございます」

(オレンジジュースかな?)


 忘れていた喉の渇きを思い出してシャーロットは渡されたグラスを口元へ近づける。


 すると突然シャーロットの背後から手がのびてきてグラスを奪い取られた。

「えっ?!」


 シャーロットがびっくりして振り返るとそこにはエリアスがいた。

 いつの間にかダンスが終わってこちらに戻ってきたようだ。

 驚くシャーロットをよそにエリアスはごくりとシャーロットから奪ったグラスを飲み干してしまった。


「……ケヴィン、これは酒だな。彼女は今禁酒してるんだ」

 じろりとエリアスはケヴィンを見る。


「おっと、それはごめん。今度から気を付けるよ。確か、酔うと人格が変わって男好きになってしまうんだっけ?」


「…………」

 何と答えたらいいかわからなくて恥ずかしくてシャーロットはうつむいた。

 シャーロットに変装した姉リーディアが夜会に出席しては男性をとっかえひっかえしているのは有名な話だった。

 男好き―――そう言われてしまっても仕方がなかった。


「ケヴィンいい加減にしろ」

「ごめん、ごめん。悪気はなかったんだ。そろそろ行くよ」

 エリアスが咎めるように言うと、ケヴィンは肩をすくめ離れていった。



「シャーロット、僕の友人がすまなかった」

「いえ」


「これは普通のジュースだから」とエリアスが手渡してくれたグラスをお礼を言って受けとる。


「何か軽く食べるかい?」

「あまり食欲がないので大丈夫です」


「そっか、じゃあ、少し休憩しようか」


 エリアスはそう言うと、少し元気のないシャーロットを気遣うように外へ連れ出した。




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