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14 舞踏会

 



 舞踏会の会場に入ると、ザッとたくさんの視線がこちらに集まった気がした。


 舞踏会のため正装した今日のエリアスは美しく、とても格好よかった。ぽうっと見惚れている女性も多い。


「エリアス様よ、本日も美しいわね」

「隣の女性は誰?」

「ねえ、あの方って――――」

 ヒソヒソヒソ



 反対にシャーロットの評判は姉リーディアのおかげで最悪だ。陰口を叩かれるのも仕方のないことだった。


 うつむきがちになるシャーロットにエリアスが囁いた。

「シャーロット、僕は周りの声は気にならない。だから君も気にする必要はないよ」

「はい」


(そうだ、今日はせっかくエリアス様のパートナーになれたのだから…)


 シャーロットは知り合いの参加者に挨拶するエリアスの隣でそのパートナーに恥じないようにと精一杯微笑んでみせた。



 やがて、会場に音楽が流れはじめ主催者が舞踏会のはじまりを告げる。


 会場中央のフロアに次々と参加者が集まり、踊りはじめる。



「シャーロット、僕たちも一曲踊ろう」

「はい」

 差し出されたエリアスの手をとりシャーロットも中央へと進んだ。


 ドキン ドキン ドキン


 練習どおりやれば大丈夫、そう思っていたけれど。やはり周りに人がいるだけで全然違う。シャーロットがどんなに落ち着こうと自分に言い聞かせても体はガチガチで、思うように動いてくれない。

 楽しむ余裕なんてなかった。

 エリアスが途中、リラックスさせようと何か話しかけてくれたが残念ながら頭に入ってこなかった。


 ステップを間違えないように細心の注意をはらいながらなんとかダンスを終えた。

 それだけ注意したにも関わらず緊張で足がもつれ、バランスを崩したシャーロットをエリアスは平然と支えてくれた。

 もしその様子をダンスを教えてくれたスチュアートが見ていたらきっと怒ったことだろう。


(あんなに練習したのに…)


「ごめんなさい」

「ん?」

「緊張してしまって上手く踊れませんでした」


 落ち込むシャーロットを励ますようにエリアスは言った。

「そんなことないよ、十分だったよ。シャーロット、疲れたろう?何か飲み物でも―――」


「エリアス、来てましたのね」


 声をかけてきたのは色素の薄い金髪を綺麗に結い上げた美少女だった。ふんわりとした薄桃色のドレスがよく似合っていた。お姫様みたいだとシャーロットは思った。


「ロゼッタ。うちの両親の都合がつかなくなってね、代理で来たんだ。

 シャーロット、彼女は僕のいとこのロゼッタ。ロゼッタ、彼女はシャーロット、僕の恋人だ」


 エリアスの紹介にあわせてぺこりと挨拶するシャーロットを無視してロゼッタは言った。


「言ってくださったら、今回だってパートナーを引き受けましたのに」

「すまない、今回は最初からシャーロットと来る予定だったんだ」


 ロゼッタがほんの一瞬その美しい青い瞳を氷点下にしてシャーロットを見た気がした。


「でしたら、せっかく会えたんですものせめて一曲踊ってくださらない?」


「すまない、ちょうど休憩―――」

 エリアスがシャーロットの方をちらりと見て言いかけたがロゼッタが口を挟む。

「シャーロット様いいですわよね?他の女性と踊ってはダメなんて心の狭いことまさか言わないでしょう?」

 ロゼッタはにこやかに微笑んでいたが、有無を言わせぬ圧を感じた。

「いえ、あの…はい、どうぞ」

 その圧に負けシャーロットはつい頷いてしまう。


「エリアス行きましょう。シャーロット様も了承してくださったわ」

 ロゼッタが嬉々としてエリアスの腕をつかんで中央のダンスフロアへと行こうとする。


「シャーロット、大丈夫?」

 気遣うようにこちらを見たエリアスにシャーロットは無理やり笑みをつくる。

「大丈夫です。踊ってきてください。少し喉が乾きましたので飲み物を飲んできます」


「悪いな。すぐに戻るから」



 シャーロットは会場の隅、壁際によって2人のダンスを見る。

 美男美女のエリアスとロゼッタはまるで王子様とお姫様のようで悲しいくらいにお似合いだった。2人ともダンスが得意なようで流れるように美しいステップを披露していた。


(私もあんな風にエリアス様と踊りたかった…)


「あのお二人、とても美しいわね」

「本当、お似合いね」


 そんな2人のダンスは観衆の注目を浴び、見惚れている人も多い。


 音楽に合わせステップを踏みながら時折何か楽しそうに話しかけるロゼッタとそれに応えるエリアス。


 親密そうなその様子にシャーロットは胸がズキンと痛んだ。


 自分は悲しむ資格なんてないのに。エリアスとの関係は仮のものであって、本物の恋人同士ではないのだから。


 そう自分に言い聞かせてもこれ以上見ているのは辛くて、シャーロットは2人から目をそらした。



「やあ、シャーロット嬢」


 振り返ると立っていたのは先日侯爵邸で会ったエリアスの友人のケヴィンだった。





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