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 私はゾッとした気分に陥って、思わず回想を中断した。


 すぐに私は周囲を見渡す。ステージの中央にいる私。それを怪訝な目で見る学校の生徒たち。ステージ袖にいる沙織と取り巻き。背後にいるギターとベーシスト。


――そうだ。きらきら星なら歌えるじゃない。あんた上手いでしょ。それでも歌ってきなさいよ。


 沙織は確かそう言って私をステージに追いやった。何故、きらきら星なのか。私が上手いとは、どういうことなのか。


「沙織、英二に何かしたの?」


 私は沙織の方を向いて、そう尋ねた。すると彼女は、困惑していた表情から、途端に楽しそうな笑みを浮かべる。


 非常に不気味で、嫌悪感のある笑みであった。


「きらきら光る」


 沙織は、その笑みのまま、件の歌を口ずさみ始めた。そしてステージ袖から、ゆっくりとこちらに向かってくる。


「お空の星よ」


 一歩ずつ、ゆっくりと近づいてくる。不気味な笑みを携えて。きらきら星を歌いながら。


「瞬きしては」


 嫌な予感がする。知ってはならない事実を、知らされてしまうような。そんな気がする。


「みんなを見てる」


 沙織はそして、私の目の前まで来た。ニヤニヤした表情で、彼女は私を見つめる。


 沙織はさらに一歩近づいた。彼女との距離はもう、目と鼻の先。彼女はそのまま私の耳元に顔を近づける。


 そして、こう囁いた。




「あたし。英二と、ヤッちゃった」




 それを聞いた瞬間、サッと風が通り過ぎて行った気がした。私は頭が真っ白になる。何も考えられず、何も答えられない。ただ、私は沙織を呆然と見続けるしかできなかった。


「あたし見てたんだ。英二が瑠璃に告ってるところ。だからその帰りにね、英二を逆レイプしちゃった」


 沙織は楽しそうに真相を語る。




「だから自殺しちゃったんじゃない? あいつ、あたしの中でイッちゃったし」




 沙織の言葉を聞きながら、私は徐々に頭が回り始める。


 英二が自殺なんて変だと思っていた。だって前日の夜に、私たちは付き合い始めたのだ。これから一緒に頑張っていこうと、誓い合ったというのに、翌日に自殺なんてありえないと思っていた。


「なんて、酷い」


 私は呟いて、跪いてしまう。


 英二は沙織に犯されてしまった。したくもない性的行為に負けて、絶頂を迎えてしまった。その時の私への罪悪感は計り知れないものだろう。


「瑠璃はあいつとヤッてないんでしょ? ごめんね、あいつの童貞をあたしが奪っちゃって」


 沙織はそう言って私をあざ笑った。

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