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 沙織の方を見てみる。彼女も同じく、私を見ていた。目を見開き、とんでもないものでも見ているかのような表情をしている。


「ぷっ、あはははははっ!」


 沙織のその間抜けな表情に、私は吹き出してしまった。


 ねえ、一体どんな気持ちなの。いじめていた奴が、実は殺人を犯していたなんて。あんた達より、よっぽどヤバいことをしていたって。


「英二……」


 私は胸に手を当て、彼のことを想う。彼が自殺する前日の夜のことを思い出す。





 環奈達に思う存分いじめられた日。身も心もボロボロになった私たちは、人知れず学校の屋上で寝転がっていた。


 仰向けになって、夜空を見上げる。星が綺麗な夜だった。


「ねえ、どうして庇ったりしたの?」


 星を眺めつつ、私は英二に尋ねた。彼がいじめられるきっかけとなったのは、私を庇ったことであった。


「だって、それは……」


 英二は言い淀んだ。私は彼を見る。か細い身体が、私と同じく仰向けになっている。


 英二は体育の授業を毎回休む程に病弱であった。だから男性の彼が女性の環奈たちにも、いいようにされてしまうのだ。


「瑠璃」


 私の名を呼んで、彼はこちらに向いた。少し緊張した声色だったと思う。こちらを向いた彼の表情も、真剣な様子であった。


 そんな調子で名前を呼ばれたものだから、私はドキっとした。男性に名前で呼ばれたのも初めてだった。


「君のことが好きだから、庇ったんだ」


 英二は言い放った。彼の顔は赤い。告白であることは明確であった。そう認識した途端、私の心臓は激しく鼓動し始めた。


 様々な感情がこみ上げてくる。驚き。戸惑い。緊張。しかし、最も大きい感情は……。


「嬉しい」


 私は、素直にそう言った。


「私も、英二が好き」


 続けざまにそう言った途端、涙がこみ上げ来た。ここまで堪え難い嬉し涙も、初めてだった。


「本当に?」


 そう尋ねた彼の声は、嬉しそうであった。


「うん」


 私は短くそう答えたあと、彼の手を握った。女性のような、小さな手。彼のその手から、私の手を伝って、彼の温もりを感じる。


「幸せ」


 私はそう呟いた。ずっと不幸なのだと、そう思っていた。つい呟いてしまうほど、幸せを実感できる日が来るとは、思いもしなかった。


「僕も」


 英二は私に同調して、そして再度、夜空に向き直る。私も同様に、星を眺める。


「きらきら光る……」


 夜空に点々と瞬く星空に、ぴったりな歌を歌う。


「お空の……」




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