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THE SHAM & spirit  作者: プレミアムなすび
4/5

1.3

「あなたは誰ですか? 私のオーナーかコンダクターはどちらにいますか?」

 問いかけにジョニーは驚きと戸惑いが混ざったまま答える。

「俺の名前はジョニー・グラント。俺はただの通りすがりでオーナーだのコンダクターだの全く知らない」

 彼女は微笑んだまま

「ではオーナーかコンダクターがどこにいるか教えてください。ジョニーさんが起動できたのなら近くにいるはずです」

 と返す。

「俺が起きた時には周りには誰もいなかった。しかし、ここまでくるまでに俺やあんたのような耳当て人間は5人いた。そいつらのことか?」

「……アクティブドールのことですか? アクティブドールはオーナーにもコンダクターにもなれません。ジョニーさんは人間の干渉を受けずに起動したのですか?」

 ジョニーは混乱した。自分を含む耳当て人間はアクティブドールという存在らしいが、『ドール』とつくからにはマネキン人形のようなものだろうか。しかし自分は人間であるし『起動する』とも言わない。彼女はきっと勘違いをしているのではないか。背後の窓に映る耳当てがついた自分の姿とPL-2003を交互に見比べた。

「待て、俺は人間……」

 彼がそう説明しようとした時、

「さっきから何を話している?」

 部屋の入り口に白衣を着た女が立っていた。この施設の持ち主だろうか、しかしながら豊満なバストが見えるくらい胸元が開いたセーター、左が短く右が長いズボンと研究者らしからぬ格好をである。ジョニーとPL-2003を交互に見ると、不敵な笑みを浮かべる。

「異常起動したドールが二体か……いい収穫ね」

 女の背後にアクティブドールの男達が並ぶ。

「ガーデナー、奴らを起動した状態のまま確保せよ」

 男達は早々に部屋に入ると二人を組み伏せた。

「ちょっと待ってくれ! 一体どういうことだ!」

 ジョニーが激しく抵抗するも固く掴まれた腕は全く動かない。一方、PL-2003は抵抗することなく女の方を見据えていた。まるで自分に意思などないように。

「あなたのような良い子は好きよ。でも」

 ねっとりとした女の目線が、PL-2003からジョニーに移る。

「悪い子も好き。ただただ従順だけじゃつまらないもの。だから、最後にとっておくわね」

 左足に巻いたホルスターから手に収まるサイズの機械を取り出し、PL-2003に近づく。

「その子に何をする気だ!」

 ジョニーの叫びを無視して女は機械からコードを引っ張り出すと、先端を彼女の耳当て下部に差し込んだ。すると描かれた青い円が緑に変色した。

「管理端末に接続しました。……オーナー及びコンダクターを葉室スミレに登録。……登録が完了しました。何なりとお申し付けください、スミレ様」

 拘束が解かれたPL-2003は、コードを外し立ち上がると微笑んだ。耳当ての円はいつの間にか青に戻っている。

「次はあなたね」

 スミレはジョニーにも嬉しそうに近づく。新しいおもちゃを見つけた子供と同じ足取りだった。

「やめろ! そもそも一体何なんだそれは!? それで何をする気だ!?」

「つべこべ言わない」

 しゃがみ込み、彼の耳当てにコードを差し込んだ。威勢を張ったジョニーは糸が切れた人形のように地面にくずおれる。

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