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番外編 幼馴染みの初めて(後編)


 小百合にとってはやはり初めてで、その証がシーツに示された。

 俺は小百合を気遣っているつもりだけど、それ以上に彼女も俺の様子に一喜一憂している。


 その瞬間は少しだけ顔が強ばったものの……時間をかけることで何の不安も無く俺の表情を楽しむ余裕さえ生まれていったようだ。


 俺は小百合の温かさに包まれながら……不覚にも眠ってしまった——。




 目を開けると、小百合の顔が側にあった。

 彼女の髪の毛が、肌に触れくすぐったい。


 今、俺は小百合を右腕に乗せている。腕枕だ。


 小百合は抱きついてきていたけど、俺が少し動いたことで彼女も目を覚ましたようだ。

 ゆっくり目を開ける様子は、とても美しいと思った。



「おはよ。小百合すごく嬉しそう」


「うん。目を開けたら光くんがいるって思って。それに、やっと光君に追いついた気がして」


「なんだ、気にしてたの?」


「ううん。そういうワケじゃないけど、嬉しいの」


「俺も嬉しい」



 そして再び、顔を近づけ互いに触れる。

 こんどは、俺より元気そうな小百合に先導される。

 まるで、今までの溜め込んできた我慢を発散するように体を重ねる。


 そして果てると、再び小百合の温もりに包まれたまま意識が遠くなっていった。



 何度か繰り返し……目を開けると、外が暗くなっている。



 今度は小百合が先に起きていた。

 おれはけ心地よい疲れに包まれている。


「光くん、その……寝て起きて……こんなに何回も……しちゃったね……」



 ついつい無理をさせてしまっていたのだろうか。



「あ、ごめん、辛かった?」


「ううん。優しくしてくれたから大丈夫だし私もしたかったから……でもみんなそうなのかなって」


「他は知らないけど……俺はこんなに……初めてかも」


「初めて? そっか」



 小百合はにっこりと満足げに笑った。

 とても無邪気な顔をしていた。



「光くん。どうしよう?」


「小百合? どうしたっ? 大丈夫か?」


「……こうやって……光くんとくっついて……離れたくないって思って」


「……ふふっ」



 何かあったのかと焦ったけど、小百合の言っている意味が分かりほっとする。



「俺も離れたくない」


「でも、そろそろ両親が帰ってきそう」



 今は外は真っ暗で、もうすぐ八時になる。

 昼過ぎから体を重ね眠って……起きてまた重ねてを繰り返してこんな時間だ。


 小百合にとっては今日が初めてだし、最後までできないかもしれないと俺は思っていた。

 もしできても一回だけだと。


 最初こそかなり大変だったけど、一回休んだあとは小百合が離してくれなかった。

 俺は、どうして自分にそんな体力があるのか不思議だったのだが、何度も何度も……寝て起きては繰り返してしまった。


 今では、俺より小百合の方が元気そうだ。



「不思議。知らない光くんをいろいろ知ったような気がする」


「うん。俺も知らない小百合をいっぱい見たような」


「も……もう! 知らないっ!」



 小百合は、すねて俺と反対方向を向いてしまった。

 でも、俺の腕は解放してくれないようだ。


 こうやって恥ずかしがる小百合の姿は、とても新鮮に感じるし、とても可愛いとおもう。

 それに、本格的にすねてるわけじゃないし、そういうフリだというのも分かっている。


 俺は背中から小百合を抱き締める。

 すべすべした滑らかな肌が俺の胸に当たる。



「小百合、体は大丈夫か?」


「うん。全然平気。光くんの方が疲れているような……?」



 機嫌を直した小百合が俺の方を向いて抱きついてきた。



「そうだな。さすがに疲れた」


「じゃあ……もうちょっとこのままでいよ?」


「ああ」



 そのタイミングで、プルルルル……とスマホが鳴る。

 布団から出ずに、俺に抱かれたまま確認する小百合。

 


「どうした?」


「えーっと……お父さんとお母さんね……光くんのご両親と飲み過ぎたみたいで……帰れないからこのまま泊まるって」


「え……?」


「光君もいるから大丈夫だろ? って」



 俺のスマホも通知ランプが光っているので確認する。

 父からのメッセージが来ていた。



『光。千石さんの家にいるんだろ? だったら、今日は帰ってこなくていいぞ。

 っていうか帰るな。絶対にだ』



 ととと父さん。

 小百合が、俺に甘えながら聞いてくる。



「光くん、今日泊まって行く? ……だめ?」


「うん、そうする」



 即答すると、小百合は満面の笑みを浮かべた。



「じゃあ、もう少し休んだら、晩ご飯作るね」


「無理しなくていいぞ?」


「ううん、大丈夫。作らせて?」


「じゃあ、一緒に作ろっか?」


「うん!」



 その晩、一緒に作った食事に舌鼓を打ち、そして何年かぶりに一緒にお風呂に入った。

 互いに恥ずかしさで真っ赤になりながら。


 こうして二人にとっての初めての時間が過ぎていったのだった。




【作者からのお願い】


お読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] あまいなぁ~ [一言] ゆうべはおたのしみでしたね。
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