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2050年 第一次魔法戦争  作者: 望月陽介
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第4話 気持ち

 俺のキックは空気を切る。俺は地面に叩き落される。

「ふははは」

俺の蹴りは避けられた。避けないという読みは外れた。

「お前がどれだけ正当化しようと、罪は消えない。俺の家族をめちゃくちゃにした妖精野郎ども俺は許さない。」

何を言って……。

 胸の鼓動が一度だけ、大きくなる。体全体が揺れ動くほど、心臓は大きく揺れた。

「遊びは終わりだ!俺はお前を倒す。必ずな!」

俺の5m程度上空で、彼は剣を持ち上げている。そこに多くのカラスが集まっている。とてつもない魔力を感じる。

「せっかく、機会を与えてやったのに。耳を持たないのはお前もだったか。」

どうする。どうするどうする。

白刃取りで守れる技ではない。避けられる技でもないはずだ。

「サイ、一緒に考えてくれ。あの技を防ぐ方法を」

サイに頼るしかない。俺には思いつかない。

「なあ、レイヤ。お前は守ってばっかでいいのか?」

サイ?

 こんな時に説教だろうか。サイはひどく落ち着いて、まるでもうすぐ死ぬみたいな声で、話す。

「攻めろって?」

「師匠の言葉を忘れたのか?例え、魔法だろうが殴り合いだろうが、力の根源は心。気持ちにある。って。」

気持ち……。

「あいつの気持ちは怒りで満ちてる。なんか、かわいそうじゃねえか。」

確かにそうだ。クロウは妖精への怒りでいっぱいだ。あいつの戦う理由は復讐にある。復讐するために、あいつは強くなっていき、戦い続ける。

「あいつの家族は、きっと復讐なんかしても喜ばない。」

俺は、なんとなく分かっている。クロウは、苦しみ続けていること。多分、10班の誰よりも、苦しみながら戦っている。

「助けたいんだろ?ならその気持ちをぶつけるしかないんじゃねえか?」

俺の攻撃技は、少ない。でも、これに賭けるしかない。

マジックブレイカー。攻撃が決まれば、その部分の魔法を解除する。しかし、その攻撃には一切の強化もかからない。

 あいつが出そうとしている技は、恐らく最も強力な技だ。長いチャージ時間を要している。もしかしたら、反動もあるかもしれない。

 知るか、そんなこと。何もしなければやられるだけだ。

「行けよ。お前は何も間違っちゃいない。」

サイ……。

「助けようぜ、あいつを!」

俺は拳に力を込める。奴の大剣は大きな黒い翼と化していた。




「行くよ!」

俺は木刀を構える。あまり人を傷つけたくない。やはり武器を使うのは好きではない。

 武器を使って攻撃すれば、武器からの感触しか感じられない。それは、相手に失礼というか、罪悪感を、あまり感じないと思う。

 アニメやドラマで、喧嘩を通して友情が作られるという場面はよくある。それは、拳を通して、相手の気持ちが伝わるからではないだろうか。

 だから俺は、もし間違っても当たらないようにと、俺は剣を振り下ろした。

 はっ。

 俺は全身に恐怖と、威圧を感じる。なんと俺はしりもちをついてしまう。なんて恥ずかしいんだ。

 俺は剣を振り下ろすと、クロウは片足をずらしただけで軽く避けると、彼は一瞬で急接近してきた。もしこれが戦場なら、致命傷を食らっていたに違いない。そして、その眼光は、殺人級の鋭さだった。まるで、「適当にやってんなら殺すぞ」と言われてかのようだった。

 しかし、もっと恥ずかしい思いをしていたのは、タロウくんだった。彼は頭を手で守っていた。マリアさんは木刀を寸止めし、にやっと笑っていた。教官は何かを書いていた。鉛筆が音を鳴らすくらい。

 俺はそっと立ち上がると、みんなも教官の方を向いて、指示を待っていた。

 戻り方でなんとなく分かる。ロジィさんは、なぜかユウキさんの後ろにいた。あの巨体でも、後ろに回れるほど早く動けるらしい。キリマル君は、俺と同じ、真剣白刃取りをしたらしい。膝をついていた。タロウくんは泣いているのか、顔を押さえている。マイさんは、木刀を奪っていた。タツヤくんは両手を不思議そうに見つめていた。俺も驚いてマイさんを見つめる。彼女はウインクを俺にする。驚き、目をそらしてしまった。

 書き物を終えると、教官は手を止める。

「午前中の訓練はこれで終わりだ。午後は射撃訓練をする。」

そう言って、宿舎の方に戻っていく。俺達も歩き始める。タロウくんが離れてうつむきながら歩いている。俺は近づく。

「大丈夫?」

「き、君は……。ああ!これから、よろしくね!」

俺の顔を見た途端、突然笑顔になる。俺もへまをしたことを思い出して安心したのだろうか。

「よ、よろしく。」

 俺は、初めての誰かとの会話に少し安堵する。孤立だけは避けたいから。

 視界に教官の後姿が入る。そこで、俺は、質問したかったことを思い出した。

 全員を追い越し、俺は教官に追いつく。

「教官。質問があるのですが。」

「どうした、青木。」

歩きながら、顔を向ける。案外、穏やかな表情で驚く。

「俺たちはどのように選ばれたのですか。」

他にもたくさん質問はある。全部で何班あるのか。なぜ、班ごとに生活し、訓練するのか。何年訓練するのか。

 しかし、一番気になったのは、選ばれた理由だ。

「二日目にして、聞いてくるとはな。」

どうしてか、嬉しそうに見えた。

「いいだろう。今日の訓練の後、俺の部屋に来い。選んだ張本人に会わせてやる。」


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