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4章 5話 本能

 次に連れてこられたのは、美志緒先輩の部屋だった。

 先輩はベランダにいる俺達に気づくと、桃音さん同様、すぐにサッシを開けてくれた。

 先輩の部屋に上がるのは、停電したあの日以来だ。


「今日も来たな。ん? もう一匹いるな」


 オモチから俺に視線を移す先輩。


「俺の子分だ」

「またかよ!」


 オモチの嘘に、俺は食傷気味に声を荒げる。

 二匹の猫がじゃれているようにしか見えない美志緒先輩は楽しそうに笑う。


「仲が良いんだな。ちょっと待ってろ」


 そう言い残し、キッチンへ行った。

 冷蔵庫から焼き魚の乗った皿を取り出し、戻ってくる。

 オモチの野郎、ここでも飯をねだっているのか。


「美志緒が出してくれる焼き魚は絶品なんだぜ」


 火々野が猫は肉食と言っていたが、やっぱり魚も好きなようだ。

 皿の上には二尾のあじの塩焼き。

 食べてみると絶妙な塩加減で、すごく美味しい。

 出来立てはさらに美味しいんだろうけど、猫舌が邪魔をして、結局冷めるまで待つことになりそうだ。


 俺とオモチは、あっという間に食べてしまった。

 美志緒先輩に「ごちそうさまでした」――先輩には「にゃー」としか聞こえないが――と言おうとすると、先輩は突然部屋着を脱ぎ始めた。

 何事かと混乱する俺をよそに、オモチが、


「今日も走りに行くのか?」

「あぁ、勉強が終わったからな。今日は天気が良いし、気持ちよく走れそうだ」


 勉強机の上に、閉じられた参考書とノートがある。

 先輩の勉強が終わったところに、ちょうど俺達が現れたらしい。


「オモチもどうだ? 一緒に走らないか?」

「俺はいいよ。野生の力は半端じゃないからな。美志緒のことも守ってやれるぜ」


 オモチがそう言うと、美志緒先輩が笑みを零した。


「なんだよ美志緒。俺は本気で言ってるんだぜ」


 オモチは、先輩に虚勢を張ったと思われたのが不満なようだ。

 美志緒先輩は首を横に振り、


「オモチを疑ってるわではない。ただ少し前に、同じようなことを言われたのを思い出してしまってな」


 俺は頬が熱くなるのを感じた。

 俺がきまりを悪くしている間にも、先輩は動きやすい格好に着替えていく。

 スポーツブラに白のショーツという下着姿が眩しい。

 長く細い手足やきゅっと締まったウエストなど、健康的な肉体美が魅力的だ。


 そして、女性的なライン、とりわけ胸や腰のあたりの曲線は、絵画に描かれる女性のようで、芸術的でさえある。

 それから、ジョギングウェアに身を包み、最後に背中に流れる艶やかな黒髪を一つに纏めた。


 先輩は姿見の前に立ち、俺達に背を向け、身嗜みのチェックを始めた。

 先輩がわずかでも動くと、ポニーテールが揺れる。


 ゆらゆら。


 知らず知らずのうちに、目で追ってしまう。

 体の奥から、得体の知れない衝動が込み上げてくる。

 気がつくと、前後左右に揺れる髪の毛の束に飛びついていた。


「どうした? 食べ足りないのか?」


 美志緒先輩が俺を捕まえようとするが、お互いの位置的に上手くいかない。

 少し強引に捕まえようとしたとき、先輩がバランスを崩した。

 そのまま先輩は転倒し、当然俺も巻き込まれる。


 床に叩きつけられると覚悟したが、何かがクッションになり助かった。

 前足で触ってみると、柔らかいのにしっかりとした弾力があるのが分かる。

 これは……美志緒先輩の引き締まったお尻だ。

 先輩は起き上がると、俺を抱きかかえ、


「大丈夫か? 次はもっとたくさんご飯を用意しておくからな」


 本当に面倒見の良い人だ。

ビジネスとしてのラノベを完成させたい。

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