50
「・・・」
不意に、校長が目を開けて、僕らを見上げた。
緊張が走る。
「・・・何の話をしているのか、わからないんだが・・・」
だが、校長の口から出た言葉は、心底意外なものだった。
「え・・・?」
僕らは口をポカンと開けたまま、教頭を見る。
教頭は、バーコード禿のせいでよく見えている頭皮までもが青ざめていた。
「だって、生徒会活動を中止にするって、職員会議で決まったんじゃ・・・」
見ると、ほかの先生の中にも、顔が真っ青にっている人と、ぽかんとした表情で僕らを見ている人がいた。
「私は、そんな話一言も聞いていないよ」
校長が教頭を睨む。
青ざめていた先生たちはおびえたように立ち尽くす。
「こ・・・校長には、後で連絡しようと・・・」
「後じゃ遅いだろう!」
校長が机をバンと叩いた。
「大体、学校は生徒と教師で支えあって作っていくものだ。
それで生徒会をつぶすなんて、一方的に教師が押し付けるようなのは、教育とは言わん!」
いつも、おっとりしていて、やさしい校長が怒っている。
なんだか、怒った感じが佐崎と似てるな・・・
僕はのんきにそんなことを思ってしまった。
「私は生徒会をつぶす気なんか、これっぽっちもないよ」
校長が僕らを見て目を細めた。
「ってことは・・・」
あんなに騒がしかった職員室が一気に静かになる。
僕らは顔を見合わせた。
「ばんざーい!」
僕らの生徒会が、守られた瞬間だった。




