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僕は周辺を探し回った。
もう、ここの町にはいないかもしれないけど、でも、探さなきゃいけない。
何があったのかはわからない。
でも・・・何があっても、僕はあいつの唯一の家族だ。
僕は忘れかけていた。
家族は、一番大事にしなきゃいけない存在だって。
身勝手に部屋に閉じこもって、話にも耳を貸さない。
僕は、自分が家族にどれほど迷惑をかけていたか、改めて感じた。
先生たちは、学校に不登校生がいるのが恥ずかしいって、そんな感じでずっと話しかけてきていた。それを感じ取っていた僕は、絶対学校なんて行かないと思った。
父さんも母さんも、そう思ってると思っていた。
でも、父さんと母さんは、本気で僕のことを心配していたんだ。
今更になって、すごく申し訳なかったと思う。
僕は、今元気で学校に通っているよ。
父さんと母さんの気持ちに気づけなくて、ゴメン。
「泰葉・・・やす・・・」
もうどれくらい歩いただろうか?
僕は、誰も入らないような古い倉庫で、人影を見た。
小さな少女の影が、壁にすがっている。
「泰葉!」
「こないでよ」
僕が駆け寄ろうとすると、少女は・・・泰葉は冷たく言い放った。
「あと、あんたに気安く名前で呼ばれる筋合いないんだけど?人殺しの癖に」
そういう泰葉の目はすごく冷たかった。
でも、僕はその目を跳ね返すように口を開いた。
「何で帰らないんだよ」
「は?あんたなんかにそんなこと言われる筋合いないじゃん」
「何で帰らないんだよ!」
いつもと雰囲気の違う僕に、泰葉がビクッとする。
「言えよ、ここで何してたんだ。ちゃんと言えよ」
「あんたなんか・・・あんたなんか大っ嫌いよ!」
泰葉はそう叫ぶと、倉庫の奥のほうへ進んでいってしまった。
僕が追いかけようとしたとき、携帯がなった。
「・・・もしもし」
「あ、裕介だけど」
「佐崎・・・」
「どうだった?」
「妹、いたよ。迷惑かけて悪かったな」
「そっか、よかった」
「うん」
「じゃ、またな」
「うん」
僕はすぐに電話を切ると、泰葉の後を追った。




