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僕は引っ越してからまだ1週間弱の部屋の電気をつけた。
引越しして一週間弱での久しぶりの学校。
何なんだ・・・執行部だなんて・・・
僕はベッドに勢いよく寝そべった。
数学は得意だ。でも、僕じゃなくたって・・・僕じゃ・・・
「人殺し」
「瀬斗、君が違うからだよ!」
佐崎君と泰葉の言葉が重なる。
「何が違うんだよ・・・」
口に出してみた。
僕は人殺しなんだ。僕のせいで両親は・・・
「違うからだよ!」
何が違うって言うんだ。
僕は普通じゃないんだ。
普通って何だ?
違うって何だ?
僕はまた答えのない疑問を自分で繰り返していた。
「・・・」
やめた、やめた。
僕は気分を変えるためにシャワーを浴びようと思い、起き上がった。
人との壁を作りたい。
僕が僕じゃなくなるかもしれないから。それが怖いから。
じゃあ、僕って何だ?
お湯を出しながら僕はまた考える。
止めようとしても、止まらない。
そして、気づいた。
自分が一番怖がっているもの。
それは、人とのかかわりでも、自分じゃなくなるかもしれないことでもなかった。
僕が一番怖がっているのは、自分自身。
僕が怖い。自分自身が怖い。
妙な感覚に駆られ、僕はお湯を止めた。
僕は暗闇の中で一人たたずんでいる。
誰もいない。真っ暗な場所。
そこに、笑顔の妹が現れた。
となりには、笑顔でいるもう一人の「僕」。
そして、妹と「僕」はつぶやいた。
ヒトゴロシ
ヒトゴロシ
ヒトゴロシ
いやだ・・・止めてくれ・・・
ふと声がなくなり、妹が消えた。
「僕」の顔が仮面のようにひび割れる。
「ヒトゴロシ・・・オマエハダレダ?」
僕は・・・僕は・・・
「わぁぁぁぁぁ!」
自分の叫び声で目が覚めた。
夢・・・
僕は汗ばんだ額をぬぐった。
オマエハダレダ?
あの声が頭に響く。
僕は誰だ?
自分を見失っていた。
もう、どうしていいのか分からなかった。
ただ、苦しかった。




