18 深夜の荒事
※※戦闘、及び流血描写にご注意ください※※
それは日付が変わって間もない頃。
「……よろしくお願いします」
「行ってらっしゃい」
いつものように添い寝をしていたロイエだったが不意に身体を起こし、既に待機していた寝ず番にトレーネを預けると音も無く部屋を出た。
気配を消して廊下を進みながら隠し武器を確認したものの先程まで寝ていたのでロクな武器が無く、そっと息を吐きながら懐のナイフを利き手に持つ。
同時刻、闇に紛れて動き出す侵入者の影があった。
ロイエがトレーネの部屋を出て1時間が経った頃には彼が縛り上げて転がしたのが2人、そして今まさに対峙している男で3人目だった。
「ハハッ!!この程度の腕で私を捕らえようとは!!」
「黙れ」
キンッと耳障りな音と立てながら、男とロイエが持つナイフが何度も交差する。
屋敷の彼方此方から感じる戦闘の気配と血の臭いに興奮し感覚が研ぎ澄まされていくを実感しつつ、思いっきり身体をよじって左から振り上げられたナイフを避け廊下を転がりながら受け身を取る。
「ほぅ、今のを避けるか。だが、次はどうかな?」
フードとマスクで顔を覆い隠した男が、ニタリと楽しげに笑ったのが薄明かりの中でも分かった。
奴隷ではあるものの戦闘用ではない上に年若いロイエが殺しのプロの男に体力で勝てる訳がなく、時間が経つにつれて少しずつ防御する事が増えていった。
次第に防御しか出来なくなった頃漸く男が遊んでいるだけな事に気付いて舌打ちをすると、男はニタリと口元を歪めて笑った。
そして再び男のナイフが振り上げられた時、ピタリと男の動きが止まる。
「っ!!なんだ!?」
「……なに、してるの…?」
「……トレーネ…」
「ねぇ……ソレ、俺のなんだけど。傷つけて許されるとおもったら甘いよ?」
「トレーネ、危な「下がれロイエ。命令だよ」
「…………申し訳ありません」
トレーネが滅多に使わない命令と背筋が凍る程の眼光に、ロイエは大人しく引き下がるしかなかった。
トレーネが来た方の廊下奥では寝ず番が苦笑いしながら両手を合わせていた。
「ねぇ、答えてよ。誰に許可もらって俺のモノにケガさせたの?ねぇ」
「う、ぐっ…が……、っ…」
「ロイエはね、死んでって俺が言うまで死んじゃダメなの。そういう約束したんだよ…………なのに俺の許可なくコロそうとしたの?なんで?」
容姿と相まって侵入者へ問い掛けるトレーネの声は、何処までも無垢に聞こえた。しかし無垢な声とは裏腹にトレーネが発する威圧は鋭く尖り、侵入者の身体を、そして思考を縛り付ける。
手を伸ばせば触れそうな距離で足を止めたトレーネが侵入者の身体を舐るようにゆっくりと視線を上げて首元まで到達した次の瞬間、侵入者の首が弾け飛び力の抜けた身体が床に沈んだ。
自分の担当区域を終えて駆け付けた使用人達がヒュッと息を飲んだ。
その光景を見ていた誰もが青ざめた顔をして動けなかったが、ただ1人、ロイエだけはトレーネに駆け寄って肩を掴んだ。
「トレーネ!!怪我は!?」
「…………ない」
「駄目じゃないか、こんな所に来たら危ないだろ?」
「だって……」
「トレーネに怪我が無くてよかった」
「…………ロイエ…」
「ん?」
「…………ねむい…」
「寝ていいよ、今度こそ起きるまで傍に居るから」
「ん……」
彼方此方の戦闘の影響で血生臭い廊下、つい先程侵入者を殺した幼い子供。
その全てを何事も無かったように振る舞う2人は、誰の目も異様に映った。
閲覧ありがとうございました。
舞台裏でも使用人は頑張ってる、系の話が書きたくて始めたら戦闘描写で詰まった。
戦闘参加の使用人の基本条件は《主人に覚らせない事》なのでトレーネにバレたロイエは後でアイトと家令からお説教。




