14 あなたしか見えない 儀式へ
13話聖女編後編を書き直しました。
13話聖女編後編を書き直しました。
13話聖女編後編を書き直しました。
13話聖女編後編を書き直しました。
既に読んで知ってしまった方本当にすみません。前話から読み直していただけると嬉しいです。
あまりにも楽しい時間が駆け足で過ぎ去っていき、来なくていいとすら思っていた日がとうとう来てしまった。
「どう、トレーネ君?聖女様の伝統的な衣装なの」
「すごくキレイ!」
「ふふっ、ありがとう。トレーネ君、仲良くしてくれてすごく楽しかったわ」
儀式の日、聖女の衣装である真っ白いドレスに身を包んだヴィックを、グランツに提案されて見送りに来ていた。
他に人目もあった為にローブにフード着用ではあったものの、もうヴィックはフードを捲ろうとは思わない。
グラーニエは準備があった為、家族と共に先に儀式の地へと向かっている。
「トレーネ君、本当にありがとう。わたし…………トレーネ君が大好きよ。トレーネ君に出会えてよかった」
「俺もお姉さんと一緒でたのしかったよ」
「どうか、わたしを忘れないで……そして願わくば、次の聖女様とも仲良くしてあげてね…」
いつもニコニコ笑っていたヴィックにしては珍しく泣きそうな顔で、近衛が止めに入るよりも早くトレーネを抱き締めて彼女はグランツにエスコートされ馬車に乗った。
儀式の地へと向かう一行を、トレーネはいつまでも見送っていた。
「どうした、坊主。聖女様が居なくなって寂しくなったか?」
屋敷に戻ったトレーネは玄関先の花を植え替えていたゼクスを見つけ、ふらふらと近寄って背中に抱き付く。
「仕方ねぇな。ちょっとこっち来い」
トレーネをはがして腰を上げたゼクスは道具箱の中からいくつか取って歩き出し、トレーネが来た事のないエリアを暫く進み大きな温室の扉を開けながら顔だけ振り返りニヤリと笑う。
「坊主、此処から何でも好きな花を選べ。俺には魔力はねぇが、花に関しちゃ上等な魔法使いだぞ」
「ゼクスさん……」
「ただ、この魔法で1つ気がかりなのは…………ロイエ。お前、数時間休み無しで馬を走らせる覚悟はあるか?」
***********
「もうっ、お母ちゃんったら泣いてばっか」
震える手でヴィックの首に花輪を通した母親は、ポロポロと大粒の涙を流す。
今日の為に仕立てられた真っ白のドレスは太陽の光によって特殊な生地がキラキラと輝き、前日から入念にエステとメイクを施されたヴィックは“神の花嫁”にふさわしい程に美しかった。
首には既に儀式に集まった人達によっていくつもの花輪が掛けられ、色とりどりの花がふわふわと風に揺れる。
「だって…………何故…」
「ねぇ、お母ちゃん……お父ちゃんとお姉ちゃんも。わたしね、恋をしたのよ」
「……………」
「それがね、こーんな小さな男の子なの。皆に紹介したかったんだけど、こんなトコに連れて来たら泣いちゃうわ」
「……優しい子、だもんね…トレーネ君……」
「だよね……あ、ねぇ、イデー大神官様。心だけは持って行くわたしを神様は許してくれるかな?」
「あぁ、もちろん」
「よかったぁ。わたし、聖女様になれて幸せよ。こんなキレイな服を着せてもらえて、小さな紳士に恋をしたんだもの」
「…………そうかい…」
その時、ふと何処かから声が聞こえてくる事に気付いた。少し戸惑うような、焦ったような、話し声と呼ぶには騒がしい声だった。
両親や姉も気付いたらしく周囲を見渡してみると、集まって何処かを見ていた兵士達が慌てた様子で半分に割れて道をあけ、その向こうから馬に乗ったロイエが姿を見せた。
よほど急いでいたのか猛スピードで駆けてきた馬から落ちるようにロイエが降りたと同時に馬が倒れ込み、手振りで馬を頼むとロイエは荒く息を吐きながらふらつく足取りでヴィックに歩み寄り、崩れ落ちるように膝をついて片腕で抱えていた箱を両手で持ち直しゆっくりと掲げ持つ。
「はっ、は………っ…聖…じょ、さまに……が主、より……っ、これを…」
「えっ……トレーネ君、から?」
「ロイエを休ませてやれ」
「はっ!!」
戸惑いながらも箱を受け取るとグランツの指示によりロイエは数人に運ばれていった。慌ただしく水を用意している様子を横目に、姉に箱を持ってもらって蓋を開けてみると真っ赤な花束に頬が緩んだ。
「わぁ、ブーゲンビリア!!」
「あら、素敵な贈り物じゃない。丁寧に育てられたのね、トゲも取ってあるみたいよ」
「ねぇ、お姉ちゃん。ブーゲンビリアの花言葉って《情熱》と……なんだっけ?」
「えーっと、《あなたは魅力に満ちている》だったかな?」
「ふふっ、知ってて贈ってくれたのかな?すごくキレイ。嬉しい……トレーネ君からのプレゼント…」
そっと花束を箱から取り出すと少し大きめのソレはヴィックが片腕で抱えるのがやっとだった。
トレーネがどういうつもりでブーゲンビリアを寄越したのか分からないものの、愛しい人からの贈り物を腕に抱きながら目を伏せ、今の自分の格好を思い浮かべながらゆっくりと目を開ける。
花束の包みもリボンも赤系統で揃えられていた。真っ白いドレスに映えるような鮮やかな色の花束に、もしかしたら…という想いを消し去る事は出来なかった。
「清き聖女よ、前へ」
「お手をどうぞ」
「あら、陛下にエスコートしてもらえるなんて思ってもみなかったわ」
皇帝に貴族、4人の大神官といった国の中枢とも呼べる人物達が集まった盛大な儀式は滞りなく進み、グランツの差し出した腕に手を添えて花束を抱え直したヴィックは鼻歌でも歌いだしそうな程機嫌が良かった。
祭壇へと歩く2人を、4人の大神官が鈴を鳴らしながら見送る。
「お父ちゃん……お母ちゃん、お姉ちゃん。わたし、すっごく幸せだわ」
「っ……」
「ホントはね、言っちゃダメなんだろうけど聖女様になりたくなかった。何故わたしが、って神様を恨んだりもしたわ。でもわたし、ホントに幸せだった」
祭壇の手前でグランツから離れて1人、祭壇を上がりながら神託を受けてから神殿で受けた聖女教育を思い出していた。
過去の聖女達は泣き崩れて祭壇に上がれない者や、恐怖から逃げ出す者がほとんどだった。程度は様々だが、代々の聖女は絶望と恐怖を抱えたまま神に嫁入りするのだと神官は言った。
「だから、せめて心だけは持って行くわ。この身は神様に捧げるけど、あの子を愛した心だけは誰にも渡さない」
全身を縛られて無理矢理嫁入りさせられた聖女も居たらしい。
しかしヴィックの手も、足も震えていない。想いを伝えていない後悔はあれど、恐怖は欠片も無かった。
「わたしね」
儀式のギリギリに届けられた花束が、愛しい人からの花束が、ヴィックに勇気をくれている。
聖女という存在がどういうモノなのか知らない彼からの花束に、何も意味など無いかも知れない。『がんばれ』という励まし程度のつもりだったかも知れない。
「聖女になれて」
それでも、もしかしたら…と思ってしまうのはヴィックの恋心の見せる幻想だろうか。
《情熱》と《あなたは魅力に満ちている》の花言葉を持つ花束が、無いかも知れないトレーネの恋心を無遠慮に伝えてくる。
「小さな紳士に恋をして」
最上段で立ち止まってくるりと振り返り、滝のように涙を溢れさせている家族を見下ろす。
「ホントに幸せだった」
そう言ってヴィックは笑った。
聖女の証であるピンク色の髪を風に踊らせたヴィックの、眩しい程の笑顔に家族の涙が止まる。再び背を向けると花束を抱え直して顔を上げ、最後まで笑顔のまま祭壇から飛び降りた。
歴代の聖女の中で、最初で最後の笑顔の聖女は憧れの存在として、国が滅んで以降も人々に語り継がれていった。
「トレーネ様、ただいま戻りました」
「……まにあった?」
「はい」
「そっか……ありがとね、ロイエ…急いでくれて……」
「我が主がお望みでしたら何なりと」
「ん、ありがとう……」
『わたしね、恋がしたいの。最初で最後でいいから、とびっきり素敵な恋をしたいの!!』
「そういえばトレーネ、ブーゲンビリアの花言葉ってなんだっけ?」
「えっとね、《情熱》と《あなたは魅力に満ちている》と、あとは――…‥」
あなたしか見えない
いつも閲覧、評価ありがとうございます。
ホント…………私がひゃっはあああぁぁぁぁぁぁ!!するとロクな事しないな。←活動報告で《アップは来月末になるかも》なんて嘘ついた奴
こっちも手直ししようかと思いましたが、なんだかんだで終わり方が気に入ってるので直してません。
次話は今度こそ《お城に行こうぜ☆》です。
【追記】
気付かない間に4000PV及びユニーク1500人突破してましたありがとうございます!!!!
暗い話ばかり続くのに(作者はこんなのだし)呆れずに読み続けてくれている方々、そして評価をしてくださった方々、感想を書き込んでくださった方々、本当にありがとうございます!いつも励まされてます!




