真実
俺は膝をつきながらその痛みを感じ取っていた。
痛みは切り飛ばされた左腕の傷から発生している。
肩から先が切り飛ばされ、血が噴き出していた。
自分のHPが小数点以下の数値で減っているのを感じる。
このままでは出血多量で死ぬ。
その時だ。血が止まった。
正確には傷がふさがり、出血が止まった。
HPバーを見ると、HPは0.21で止まっていた。
俺は気配を感じて目の前を見る。
そこには一人のGMが目の前にいた。
唯一名前を知らない女GMだ。
「まずはおめでとう。そしてありがとう。君のおかげで邪神ゼレキアスは倒された」
女GMには何故か神殿の時にはなかった白い羽と天使の輪っかがついている。もしかして邪神の行っていた天使とはGMのことか? 薄々そんな気はしていたが。
「とりあえず今の君に邪魔そうなスキルと装備は外させてもらうよ。それからHPも全回復させよう」
そう言うと装備のいくつかとスキルが解除される。解除された装備は勝手にインベントリに入って行った。HPバーを見ると初期のHPである100になっていた。
混沌虹気などのHPを減らすスキルや装備が外された結果だろう。
「さて、ではどこから話そうか。君はこの世界の救世主となった。真実を知る権利があり、私は話さなけらばならない。一個一個話していこうか」
俺は長話になりそうだったので、玉座を取り出し、セロも取り出す。
左腕がないので少し手間取った。
「では話していこう。まずここは君が住む世界とは違う異世界ヴァルファルオールという」
異世界か、何となくそんな気はしていた。
「概ね、この異世界で生まれた邪神を地球のゲームの世界に閉じ込めて、ゲームプレイヤーに倒させようとしたって所か」
「理解力が高くて助かるね。大体その通りだよ。もっとも奴がゲームシステムを支配何て裏でしていたせいで勝ち目はなかった。そこを君は処理落ちという手段でゲームシステムを破壊し、この世界ヴァルファルオールに邪神を引き込んだ。システムは破壊され、それに守られていた邪神は君の手で滅んだ」
「奴が言っていたシステムはやはりゲームのシステムの事だったか。あいつがメタな発言をしまくってたが、あいつはNPCではなく中に人がいわば本物だったわけだ」
「そうだね。といっても実はVFOのNPCやモンスターって中に下級天使が入っているから、全部中の人がいる状態だったんだけどね。君は下級天使たちを倒すことで魂のレベルを限界まで上げ、そのプレイヤースキルで邪神を葬った。邪神が予想以上に強くて見てる側としてはドキドキもんだったよ。しかもあいつ裏でゲームシステムを着々と侵略していたらしくてマジで後一日で現実に復活するところだったし。君にはとても助けられた。しかし、言いにくいんだけど……」
「なんだ?」
俺は右手でセロを撫でながら尋ねる。
「君はこの世界にゲームで鍛え上げた魂で降臨してしまった。それに伴い地球の体は今の君に統合された。簡単に言えば君は異世界に体ごと来てしまったんだが、魂の質が高すぎて元の君に戻すことも、元の星、地球に戻すことも敵わないんだ」
「なるほど、元の俺、上倉三太郎には戻れないという事か、そして元の世界にも帰れないと」
「申し訳ないけどそういう事だね。君はこのヴァルファルオールでガンマとして生きて行くしかない」
この世界に生きて行くことになるのか。元の世界に戻れないと。……。
少し葛藤があったが俺は納得することにした。
家族や友人、ゲームのフレンドに会えなくなるは辛い。
けど心のどこかでこれで良かったのだと思っている自分もいる。
おそらく邪神が復活すれば地球もただでは済まなかったんだろうから。
俺一人の犠牲で救われたのならばそれでいい。
「分かった。いろいろ感じるところもあるが、俺はこの世界で生きて行くとしよう」
「ありがとう。そう言ってくれて助かったよ。そういや私の名前を名乗ってなかったね。主に裏方担当のGM、表向きの名前はグロム、真の名前はファズキエルだ。この世界の上級天使にしてVFOの世界を作った四大天使の一人さ」
グロムか、やはりGとMのイニシャルからGMの名前は来てるんだな。ゴとミを使ったやつがいないが四大天使だからそう言うものなのだろう。
「これからこのVFOに似て非なる世界を生きて行く君に二つのアイテムを授けよう」
そう言ってグロムが二つのアイテムを俺にさしだす。一つは本だ。題名はヴァルファルオールの常識。もう一つは小さいクリスタルだ。
「一つは説明不要だね。文字とかも乗っているから勉強するといい。もう一つのクリスタルは私たちと連絡を取れるものだ。真に困ったときに使ってくれればいい」
俺は二つのアイテムをインベントリにしまう。
「インベントリのアイテムは使えるから安心してくれ。さて君の願いを私たちに聞ける分なら聞かせてくれ。君は邪神を倒した救世主、願う権利がある」
そのセリフを聞いて俺は真っ先に一つの願いを思いついた。
「そうだな。お前たちにはもう必要なくなっただろがVFOの世界を続けてほしい。俺にとっては思い出のゲームだ。なくなってほしくないんだ」
「なるほど、分かった。続けていこう。今君の事でゴタゴタしてるけど、何とかして見せよう。他にはないかな? そうだ、左腕ないと不便だろう。これ以上君の体に何かするのは魂の関係で一回しかできないが、やらせてくれ」
「いや、それならこの世界の言語を俺にインプットしてくれ、左腕は自分で何とかする。異世界だから左腕を生やす手段もあるだろう」
「そうだね、確かに言語が通じないと不便だね。左腕は不甲斐ないけど自分で何としてくれ。では言語をインプットするよ」
そこで一瞬頭痛がする。
知らない知識が増えた。異世界の言語を俺が覚えたのだろう。
「他にはないかな?」
「特にないな。あったらお前たちに連絡するよ」
「ではそろそろ私はVFOの世界に行こう。三人じゃ対処しきれてないみたいなんでね。良き異世界ライフを遅れることを願っているよ」
「ああ、じゃあな」
そこまで会話を交わすと、グロムは天へと昇って行った。
異世界ライフか、取りあえず俺の目標として左腕を生やそう。
ステータスを見ると名前はガンマ、18歳、男となっている。
そして称号に『天使の知り合い』と『異世界の救世主』が追加されていた。




