ラスボス戦
弾丸が邪神の目に命中する。
それに邪神は怯むことなく剣を振るってきた。
(まじかよ)
覚悟はしていたが邪神は強いらしい。HPバーが減っていない。実際にはほんの少しは減っているのだろうが目に見えるほどの変化はない。
(一応、レベル9999の敵を一撃で葬れるんだがな)
剣の速度はかなり速い。
レベル9999の最強敵の三倍くらい速い。
だが避けれないと言う訳ではない。
「ほう、避けるか。攻撃はカスだがやるではないか」
「塵も積もれば山となるってな! その攻撃でお前は死ぬんだよ!」
俺は二丁拳銃で魔王の目に弾丸を浴びせる。
邪神、ラスボスというからには相当強いのだろう。
事実、一手で格の違いを見せてきた。
だからフィードバックがある影人形は使わない。
使うのはフィードバックがない、悪意の腕と悪意の目だ。
俺は千に及ぶ悪意の腕と悪意の目を展開した。
邪神が手を伸ばす。
そしてそこから波動が出た。
危機管理は反応していない。
だが、その波動に当たると悪意の腕と悪意の目は消えてしまった。
「アクティブスキルは我には効かぬ。封印させてもらおう」
悪意の腕と悪意の目を出現させようとするができない。
こいつチートかよ、アクティブスキル封印何てやってきた敵いなかったぞ。
それにゲーム用語を使うなんてやはりこいつはどこかおかしい。
いままでNPCが放ったゲーム用語何てアーツとエクストラアーツぐらいだってのに。
「さて、お前はどこまで耐えれるかな」
そこから邪神の攻撃が始まった。
大剣を振るい、そこから斬撃が飛んで来る。
俺は天駆スキルで宙を蹴りそれを躱しながら邪神に攻撃を加えていく。
「これも避けるか。少し速度を上げようか」
剣が振るわれ、そのたびに少しずつ邪神の剣は速度を増していく。
どんどん上がり、最終的にギリギリ避けれるほどの速度になった。
「最高速度でも切れないか。天使の手先と侮って居ったわ」
そこまで言うと邪神がその場から離れる。
口から黒い液体が噴き出したかと思うと、地面に当たった黒い液体がモンスターに変わっていく。
「速度で及ばぬなら数で行こうか」
次々と現れるモンスターの数々、どれも黒いモンスターで見たことがない。
しかも一匹倒すのにアーツで威力を上げた弾丸で三発も掛かる。
厄介な技を使いやがって。
「我の眷属をたった三発か。その攻撃力は見直さなければならんかもしれんな」
どんどん増えていく黒いモンスター。
処理が追いつかない。
さらに邪神までもが戦いに参加してきた。
「これならどうだ」
しかも三体に増えやがった。
偽物は三発で倒せるが、速度が邪神と全く同じでやばいほど厄介だ。
「ふむふむ、ここから難易度はさらにあがるぞ。付いて行けるかな?」
「すぐにその余裕を消してやるよ、邪神」
そこからは激戦だった。
様々な手で俺を倒そうとする邪神ゼレキアス。
誘導してくる魔法の矢や、全体攻撃、無数の雨のような魔法、どれもが対処するのが厄介極まりない。
しかも一回アクティブスキルを使い、そこに波動を当てられるとそのアクティブスキルは使えなくなる。
俺は完全に不利な戦いを強いられていた。
それでもプレイヤースキルで乗り越えていく。
一瞬で一時間が過ぎ、すぐに二時間が過ぎた。
ここの中は邪神が言うには十倍加速度空間が使われているらしい。存分に相手してやろうとか言っていたが、それでも俺には限界がある。
それは夕食だ。夕食は九時だから八時間、今日は遅くなるかもしれないといってあるので最大で十一時ぐらいか、そう考えても俺が邪神が戦えるのは百時間だ。
この百時間の間に奴を倒さなければならない。
俺と邪神の破壊のロンドは続く。
あっと言う間に十時間が過ぎた。
ここでやつのHPは一割ぐらい減ってきた。
そこらへんで危機を感知したらしい。邪神の口数が減り、あの手この手で俺を殺そうと攻めてくる。
音速を軽く超えた戦い。
人間の処理速度を超えた高いが繰り広げられている。
弾丸が宙を舞い、剣が振り下ろされる。
戦いは時間が過ぎていくほど派手になる。
邪神がどんどん攻撃の手を増やしていってるのだ。
どれも初見の攻撃だからたちが悪い。
対して俺の攻撃はただ撃つだけだ。
アーツで強力にした弾丸を奴の目に撃つ。これだけだ。
だが最終職業である神を裁く銃の名は伊達ではない。
勝負にはなっている。
九十時間が過ぎた。
奴のHPバーは残り一割だ。
「エクストラアーツ! ゴッドジャッジメントバレット!」
俺は最終エクストラアーツであるゴッドジャッジメントバレットを発動する。
ゴッドジャッジメントバレットは今まで撃った全ての数の弾丸の数に応じて威力が上がる弾に今装填されている弾丸を変換するアーツだ。
装填されているのは合わせて12発。
俺はゴッドジャッジメントバレットを奴の目に当てる。
目に見えて、奴のHPバーが減る。
行ける。正直負けを覚悟した場面が何回かあった。
だが行ける。
俺は奴に勝てる!
「ぐうっ、この我が負けるというのか!」
俺が弾丸を命中させていく。
奴のHPはどんどん減っていき、残り一発でやつのHPをゼロに出来るところまで来た。
そして残っている弾丸は一発。
これなら勝てる!
「これで止めだ!」
俺が弾丸を撃つ。
邪神の目に命中し、HPは減って……。
「ははははははははははははは!」
HPバーが砕け散らない!?
邪神の高笑いがその場に広がる。
「言ったはずだ、このシステムを我が掌握している限り我のHPを削り切ることは出来ん!」
「どういうことだ!」
「そのままの意味だよ。ゲームの世界である限り、我は倒せないのだよ。我がそのシステムを掌握しているからな。天使どもはそんなことを知らないだろうがな。いやこの戦いを見ているだろうからもう知っているか」
何を言っているんだこいつは。
いや、これがヒントか。
俺が勝つ道は、一つ!
俺は諦めない。
俺は、インフィニティバウンドバレットというアーツを発動する。
無限に跳弾する弾丸を放つアーツだ。
「無駄だ! 何も我には効かぬ!」
俺はその言葉を無視してインフィニティバウンドバレットを放つ。
俺は自分の弾丸でも一発喰らえば死ぬため、自殺行為に等しい。
だが、奴の行っている意味を理解すればこれしか方法はない。
「とち狂って自殺に走ったか」
そうではない、唯一の勝ち筋に向かって俺は戦っているのだ。
俺はインフィニティバウンドバレットを放ちまくる。
全ての邪神の攻撃を避け、自分で撃った弾丸をインフィニティバウンドバレットで跳ね返す。
その空間にどんどん弾丸が溢れてくる。
「そうか! 貴様の狙いは! だが、させぬ! させぬぞ!」
邪神が今頃俺の狙いに気付いたのか焦った声を出す。
邪神の猛攻が今まで以上に激しくなる。
頭が痛い。
教官と戦った時以上だ。
持てよ、俺の頭脳!
どんどん俺の逃げ場は無くなり、邪神の攻撃は激しさを増していく。
スタミナも自動回復が追い付かなくなりじりじりと減り始めた。
だが! ここで負けるわけにはいかない。
邪神の攻撃がスローに見える。
俺の動きもスローになっている。
走馬灯?
いや違う、これは俺の狙っていた目的。
処理落ちだ!
「や……ら……せ……は…………せ………ぬ………………!」
どんどんスローリーになる世界。
邪神の大剣から飛んで来た斬撃が俺の腕を切り飛ばさんと飛んで来る。
かすれば俺の負けだ。
だがもう避けるスタミナがない。
インフィニティバウンドバレットはあと一秒は当たらないだろうが、斬撃は一秒もあれば当たる。
一秒ではスタミナの回復は追いつかない。
(ここまでか)
極限まで遅くなっていく世界で俺は死期を悟った。
ここで俺は……死ぬ。
その時、世界が砕けた。
空間にひびが入り、割れる。
その瞬間、世界は速度を取り戻した。
辺りは荒野だった。
斬撃が俺に迫り、そして……俺の左腕を切り飛ばした。
俺の左腕が宙に舞う。
俺のHPバーが半分に削れる。
俺は右手のリボルバーの引き金を引いた。
弾丸が、邪神の額に命中する。
「ま……」
邪神の言葉はそれが最後だった。
邪神の上にはHPが存在しない。
いつの間にか消えていた。
邪神の額に弾丸がめり込み、邪神が倒れる。
邪神がさらさらと風にさらされる砂の様に消えていく。
インフィニティバウンドバレットが地面に当たり今までとは違う法則で跳弾する。
奇跡的に俺には当たらず、すべてどこかに飛んで行った。
俺はその場に倒れ込む。
HPバーは残りのHPを0.5とあらわしていた。
どういうことだ? 目的通り処理落ちしたなら俺はリアルに戻っているはずだが。
それにHPに1以下など存在しない。
この荒野は何処なんだ?
様々な疑問が浮かんでは消えるがひとまずいえることは一つ。
「俺は邪神に勝った!」




