訓練
まずはひたすら撃つ。それが教官にさせられた訓練だった。
ホルダーからリボルバーを抜き、構え、撃つ。
それが終わったら、弾を込めて、ホルダーに直す。
それの繰り返しだ。
気がつけば三時間ほど訓練していた。
最初とはうって変わって的には六発中五発は当たっている。
「充分だな。さて教官俺はそろそろ行くぞ」
「ダメダメだ。お前その弾でビッグラットが何発掛かるか知っているか?」
「二十発だろ?」
「そうだ。リボルバーはピストルと違って基本の威力が低いからな。そこで考えろ、二十発撃たれる間にビッグラットは何をする?」
当然向かって来るだろうと俺は答える。
「その通り。そしてお前は無残にやられる。今までお前の動きを見てきたが六発全部撃って弾を込め直すまでに、三十秒以上かかっている。無駄な動きを一切しないと考えても、 二分かかる。今のお前の腕じゃクリティカルは狙えないだろうからな。とするとだどう考えても勝てないだろ?」
「だが、俺は狩りに行きたいのだ」
「そうか、そうだな。だったら訓練をしたくなることを見せよう」
そう言って教官は俺のリボルバーを手に取る。
弾を六発込めると的に向かって、銃を構えた。
しかしそれは不思議な構え方だった。
銃を持つ右手は普通だが、左手を撃鉄に添えている。
「よく見とけよ、オラっ」
そう言うとダダンダダンっと銃弾を撃つ音が響いた。
一秒足らずの出来事だったが、的を見ると六発の穴が空いている。
まさか一秒足らずの間に六発撃ったのか?
「これはファニングショットっていってな。ワンアクションのリボルバーでしかできないテクニックよ。撃鉄を左手で押すことで連射するんだ」
「おお!」
VFOにはアーツというものが存在する。職業レベルが上がると覚えるいわゆる技だ。だが、これは純粋なるテクニック、できたら気持ちいいだろう。
「出来たらかっこいいと思わねぇか? 訓練をしていくならいつか教えてやるぜ」
「仕方ないな。ファニングショットのために訓練してやろう」
その後も訓練を続け、俺の初日は訓練だけで終わった。
そして俺の訓練の日々が始まった。
俺はファニングショットを覚えたいがために始めた訓練だが、徐々に銃が使えるようになるのは楽しかった。
動かない的が百発百中になり、動く的が百発百中になり、動きながら百発百中になり、動きながら動く的に百発百中になり、とどんどん俺のプレイヤースキルは上がっていった。
気がつけば俺はVFOをやって一か月になり、七月二十日となっていた。
「今日から夏休みか」
七月二十日から俺の通う高校は九月一日まで休みである。
これで朝から晩までVFOを出来ると言う訳だ。
俺はいつも通りログインすると、ギルドに向かう。
今では第三の町トレスまで解放されており、ギルドは空いている。
訓練所に真直ぐ向かうと、いつもいる銃の教官にであう。
「来たか」
「来たぞ、さあ訓練だ」
「そのことなんだが、そろそろ免許皆伝をやろうと思ってな」
「ん?」
免許皆伝? そう思った次の瞬間に俺の前にはホログラムが浮かんでいた。
『銃の教官の試練
銃の教官の試練を突破し、免許皆伝しろ。
報酬、称号・ボーナス・アイテム
YES・NO』
クエストだ。俺は即座にYESを押す。
称号はボスを倒した時などに貰えるものだ。有名なものだと第一の町ウノの西にある森、迷いの森に出るボス、キングウルフを倒すと貰える。
この称号を持っていると第二の町ドスに行けることが出来る。
たぶん俺が貰う称号も何かしらの効果を持っているに違いない。
ボーナスは確か、経験値や金、、珍しいものではスキルポイントやステータスポイントだ。
アイテムはアイテムだ。
「始めるぜ」
そこから教官の試練が始まった。
飛んで行くバルーンをすべて割ったり、かごから出てきたネズミをぶち抜いたり、試練は言うほど難しいものではなかった。
今の俺なら百発百中だ。
「合格だ。これなら余裕で免許皆伝をやれる」
教官が言うとホログラムでクエストクリア! と空中に文字が出てきた。
『称号、リボルバーの免許皆伝を取得しました。
経験値を取得しました。
職業経験値を取得しました。
エクストラスキルポイントを手に入れました。
エクストラステータスポイントを手に入れました。
アイテム、初心者の弾(改)を手に入れました』
いろいろ貰ったな。
俺は早速ステータスを見てみる。
見るとレベルが30になっていた。
は?
職業レベルも30になっていた。
!?
さらにはスキルポイント(エクストラ)が100増えていた。
エクストラスキルポイントの意味はよくわかんが、かなり多いことは間違いない。
そしてエクストラステータスポイントが30増えていた。
え?
レベル9まで貰えるステータスポイントはレベル1につき2何だが。
多くないか?
さらには初心者の弾(改)、初心者の弾の十倍の威力があるんだが。
「はっはっは、豪華だろ! それだけ基礎は大事なんだ。最近は基礎訓練をしないで外に出る輩が多くてな。お前みたいに根性のある奴は久しぶりだったぜ! というかリボルバーの免許皆伝をしたのは俺が担当した奴では初めてだ! おめでとう!」
「そうだなダークマスター。感謝するぞ」
「だからダークマスターじゃなくて教官と呼べって! じゃあ約束通りファニングショットを教えてやるよ。と言っても実はこれ職業レベルが上がれば必然的に覚えるアーツなんだけどな。たぶんお前の場合自力でやった方が強いから、覚えて損はないはずだ」
その後俺はファニングショットを教えて貰った。
案外簡単で、一秒に六連撃ちすることが二時間ぐらいで出来るようになっていた。
ただ左手で急いで撃鉄を降ろすためぶれが生じる。
目的の場所に全部打ち込むには訓練が必要の様だ。