厨二病と迷惑な輩
俺は訓練所を出てある場所に向かって歩いていた。
目指すは闇ギルド黒い果実だ。
中にザクロ含む六人組がいればよし、いなければNPCを脅迫して誘き出すまでだ。
情報では闇ギルドの中は戦闘が出来る空間になっている。
通常町では攻撃してもダメージが通らない。ゆえに戦闘はPvPでは以外起きない。
だが闇ギルド内では町の外と変わらない空間になっているので、ダメージも通るし戦闘もできる。
俺はゆったりと、されども遅くはないスピードで目的に向かって歩く。
「あの私は組みません、通してください」
「そんなつれないこというなって、俺ら強いから一緒にプレイできるとお得だよ」
「そうそう、俺ら攻略組だからよ。逆には向かうとどうなるか分かってる?」
町の大通りで、それも堂々と男五人が女一人に絡んでいた。
どうやら男たちが女をパーティに入れたいらしい。
パーティは基本的に六人だ。第二回武闘大会も六人のチーム戦だったらしいしな。
嫌がる女を無理やり誘う男ども、何とも古典的なパターンだ。
しかし誰も止めようとしない。
当たり前か、GMコールがあるしな。
そんな時だった。
男が一人、間に割って入った。
「やめろよ、彼女嫌がってるじゃないか」
普通の剣士っぽい格好をしている男は正義感が強いらしい。
だが、
「何だ? 文句あんのか?」
「文句あるっていうなら、かかって来いよ。PvPで相手しやる。だが言っておくけど俺らレベル50台の攻略組だぜ。お前なんレベルよ」
「くっ」
どうやら正義感の強い男はレベルがそこまで高くないらしい。
くやしそうにすごすごと下がっていった。
おい、それでいいのか。
「ということだから、邪魔者ものもいなくなったしパーティに入ってくれるよね」
五人組の男がまた女に絡みだす。
このまま見過ごしてもいいが、せっかくだ。
闇ギルドに乗り込む前の肩慣らしと行くか。
「おい、そこの群れないと女一人にも関われない雑魚共」
ひとまず挑発する。
「あ? 何だお前、ムカつくなぁ。だれが雑魚だって?」
「お前らだよ。何だったらここでPvPして証明しようか?」
「上等だ。俺が相手してやるよ」
そう言って反応した男がこっちに向かって来る。
それをみて女がおろおろしている。
「おいおい、俺は雑魚共っていったんだ。五人同時じゃないと証明できないだろ。そんなことも分からないのか?」
「は? お前ひとりで五人相手にするってのか? 舐めやがって」
「ハンデもやろう。そうだな、俺はバフの葉巻を吸うから吸ってる間はお前らに攻撃しないでやるよ」
「どこまでも舐めくさりやがって! 潰してやる!」
殺気立った男たち。
俺はPvPを申し込む。
即座に承諾されましたとメッセージが返って来る。
俺が申し込んだPvPはバトルロイヤル。
道具あり、の時間制限なしのデスマッチ。
「俺はスキルのせいでAGIとLUK以外1だ。つまり一回攻撃当てれば勝てる。簡単だろ、雑魚には無理だがな」
「あの、大丈夫なんですか? 五対一で葉巻のハンデ、さらには一発喰らったら負け何て……」
女が心配そうにこちらを向いている。
「そうだぜ、今なら土下座で許してやるよ。といっても有り金とアイテムはすべて貰うけど」
「虫けらに下げる頭はないな」
「クソが、やっぱ潰す」
PvPが始まった。
相手は二刀流の剣士、大盾を持った盾男、弓を持った男、杖を持った男、杖を持った男2だ。
バランスは良い様だ。
まず剣士が切りかかって来る。それを最小限の動きで躱す。インベントリから葉巻を取り出す。
上から三本の弓が飛んで来る。これも最小限の動きで躱す。葉巻を口にくわえる。
その間に杖を持った男2が呪文を叫んだ。
すると天に魔法陣が現れ、その中から羽の生えた狼が出てきた。召喚士だったか。俺はマッチを取り出して葉巻に火をつける。ブドウ味だ。
盾を持った男の突撃を掻い潜り、杖を持った男の魔法をギリギリで躱す。そこに剣士が突っ込んでくる。単調だ。避けるのは簡単だった。
だが、一応連携はかなりできる様だ。じりじりと端に追い詰められてきている。
遅いけどな、葉巻を吸い終わっても端に追い詰めることは出来ないだろう。
そうこうしていると、剣士が叫んだ。
「エクストラアーツが溜まった。これでてめぇを潰してやるよ!」
エクストラアーツ。職業ごとに決まっているアーツで、習得にはクエストをこなしたりしなければならない。戦闘開始からチャージが始まり、一回だけ使えるアーツだ。
「俺のエクストラアーツは自信を加速していくアーツだ! お前に勝ち目はない。フルドライブ!!」
次の瞬間剣士が青い粒子に包まれて、スピードが上がった。でたらめに剣を振り、加速していく。ただ加速していく剣士に周りがついていけてない。連携がおざなりになった。
それを利用して、俺はわざと真ん中に行き包囲される。
魔法使いが炎の攻撃を俺に向けて撃つ。
だが、その線上には剣士がいる。
俺が避けると、剣士が舌打ちして避ける。
俺は相手の位置関係をうまく操作して、同士討ちを狙う。
すると攻めあぐねる。
すぐに剣士のエクストラアーツは終わった。
「くそっ何で当たらないんだ!」
「よし、俺も溜まった。これで終わりだ。シューティングスター!」
弓矢を持った奴がそう言うと、矢を上に放つ。
矢は光を纏っており、上空で輝くと、無数に分かれた。
流星か。
千を超える矢は俺に降り注ごうとしていた。
(さすがに避けきれないな)
俺は二丁の銃を上に構えると同時に撃つ。
俺に当たらないように、最低限の弓矢を撃ちぬく。
周りに矢が降り注いだが、俺は無傷だ。
「なっ、化け物かよ」
「さて」
葉巻が吸い終わり、光の粒子となって宙に消えた。
「こちらの番だ」
俺は持っていた弾を撃ち尽くした二丁拳銃から手に放す。
自由落下していく二丁拳銃はイベントリの裂け目に吸い込まれていく。
俺はコートの中から弾が入っている銃を二丁取り出す。
そこからは圧倒的だった。
こちらを向いたものから死ぬ。
時間にして二秒もかからずに、PvPは終了した。
「くそっ」
男たちが毒づく。
「おい、雑魚共。今の攻略組のレベルは60代だ。最低でもそこまでレベルを上げてから攻略組を名乗るんだな。それから攻略組なら嫌がる女に構ってないで攻略しろよ」
「覚えてろよ!」
そういって男たちが去って行こうとするが、その前に現れるものがあった。
「はーい、GMのガムでございます。遅ればせながらGMコールでやってまいりました」
頬にGMとのマークが付いた男だ。執事服を着ており、銀髪をオールバックにしたイケメンだ。
「実はPvPの途中から来ていたんですがね。ジャマするのも悪いかなって姿を見せませんでした。で、そこの五人組ですが、どうやらマナー違反ですね」
そう言って、ガムはホログラムで映像を見ている。ホログラムには男たちが女に絡む姿が映っていた。過去の映像だろう。
「GMとして一週間のアカウント停止を下します。今後はマナーを守ってVFOの世界をお楽しみください」
次の瞬間、五人の男たちが強制ログアウトされた。
残ったのは、俺とガム、絡まれていた女と正義感の強い男だ。
「あの! ありがとうございました!」
女が俺に礼をする。
「目障りな雑魚を蹴散らしただけだ。俺は行く」
俺はすたすたとその場から離れた。
後ろからガムの「かっこつけたがりの厨二ですね~」と聞こえるが無視だ。
というかお前はGMコールされたらすぐにこい。
肩慣らしは終わりだ。
俺は闇ギルド、黒い果実に引き続き向かった。




