5.罠は造るもの
さて、人間たちが帰ったのですることがなくなった。
『音魔法』を使うにしても現時点では聞こえる音が出てるかどうか分からない。音が出てしまっていたら新しい獲物が寄って来ないから、使うに使えないんだよ。
『風魔法』だって同じ理由で使えない。
じゃあ、何ができるかというと『想造』と『罠作成』ぐらいかな。さっきの獲物で学んで試したい事もあるし。
今回メインで使うのは『罠作成』だ。このスキルは作れる罠がリストアップされ、その中から設置したい罠を選ぶ。最後に場所を決定して設置完了となる。まるで箱庭ゲームでもやってる気分だね。
で、作ろうと思う罠は落とし穴。それもただの落とし穴じゃない、落ちた相手を確実に倒すものだ。
残念なことに『罠作成』で作れる落とし穴は深さもないし、ただ落ちるだけのもの。これじゃあ落としても良くて足を挫くだけだろうし、すぐに這い上がってこれる。追撃できる方法があれば十分強いんだろうけど、自分は簡単にはできない。
それにスキルやらがあるこの世界では、不意の一撃ほど強い攻撃はないだろう。確かスキルの中に自分を強化できるものがあったはずだから、それを使われてしまえばたとえ不意を突けても倒せなければ、十分反撃のチャンスはできるだろうね。
まず、適当な場所に落とし穴を作る。その後すぐに『想造』で物を落とし罠を動作させる。できた落とし穴だった穴を目標にして、もう一度『罠作成』で落とし穴を作る。元落とし穴の中に、落とし穴を作ることができた。そしてまた罠を動作させた。
これで元の穴の深さの2倍になった。つまり穴を作るための作業だ。落ちたら骨折ぐらいはするかもしれない。
できた穴の上に『想造』で縦長の八面体の物体を作る。材質は鉄でいいかな。
創造された物は重力に従ってまっすぐ落ち、落とし穴の底に刺さった。
ふむ、いい感じに刺さったね。これを何回かしたら、棘底の落とし穴になる。落ちたら落ちた時の速度のおかげで、簡単に刺さってしまうだろう。
最後に非常に脆い素材で蓋をして、改良版落とし穴の完成だ。
ちゃんと『罠作成』のリストに入ってるから、罠として動作するだろう。
……ただこの名前は何なの?『不帰還』って。確かに落ちたら帰れないだろうけど、その名前は中二病みたいで嫌だよ。
「罠発動!『不帰還』!」とか叫べば一部の人は盛り上がるんじゃないかな?自分は無理だけど。
とりあえずこの落とし穴を量産するのは、効果を試してからかな?
……結局やることがない。新しい罠は獲物が来ないと試せないし、結構スキルを使ったからMPも残り少ない。MPを使い切って寝てしまうのも手だけど、せっかくなら落とし穴が動作したところも見てみたいんだよね。
スキルポイントが8だけあるから新しいスキルでも探してみようかな。見るだけならタダなんだし。
探すのは……そうだな、獲物を呼び寄せるスキルとかが欲しいね。そんなスキルがあれば罠に掛けやすくなりそう。
【スキル:『誘惑の香り』獲得にはスキルポイントが5必要です】
おお、取って下さいと言ってるようなスキルがあるじゃないか。きっと匂いで獲物を寄せ付けるスキルなんだろう。
匂いを出せる範囲が狭くても『風魔法』があるから遠くまで届かせることができるから、まさに今の自分にピッタリのスキルだね。
問題があるとしたら、アクティブスキルかパッシブスキルか分からない事かな。アクティブスキルならいいんだけど、パッシブスキルだった場合は、常に匂いを放って危ないスキルになる気がするから悩み所だ。
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【スキル:『誘惑の香り』を手に入れました】
悩んだ末に取っちゃったよ。怖いけどステータスを見てみる。
……よかった~。アクティブスキルだったよ。
パッシブスキルだった場合の解決法も考えてたけど、杞憂だったね。ちなみにその解決法は、常に『風魔法』で匂いを撒き散らさないようにする方法だ。
一見これで完全に解決してるようにも見えるけど、匂いが濃縮されてしまう。MP切れでの睡眠や何かの拍子に『風魔法』が解除されたとき、濃縮された匂いが拡散して大変なことになることが予想できた。
じゃあ、試しに使ってみよう。
『誘惑の香り』を使っても変化が分からないけど、たぶん匂いが出てるはず。この匂いを『風魔法』で自分から見て落とし穴の方へ飛ばす。これで匂いを嗅いだ生き物は落とし穴に向かって歩いてくるはずだ。
少しの間待っていると『音波感知』の範囲内に動くものが入ってきた。四足歩行だしなんかの獣だろう。
獣は一直線に落とし穴へと向かっていく。よーし、そのまま来い。急いでも事を仕損じるだけだと分かっていても、つい気合が入ってしまうね。
獣は数歩歩いた後、突然前のめりになり地面へと飲み込まれていった。
【スキル:『格上補正』がレベルアップしました】
【レッドボアを倒したことにより、経験値を手に入れレベルが上昇しました】
【レベルが最大値になりましたので、進化が可能です】
デジャヴかな?前もこの並びだったような気がする。
なんにせよ、これで罠の効果が実証されたね。今後はこの罠を主流にしていこうか。それともまた新しい罠でも作るかな?っと、色々考える前に『誘惑の香り』と『風魔法』は切っておかないと。
さて、レベルも上がってまた進化できるようになった。今回はどんな進化先があるのかな?
【進化可能な進化先は次の通りです】
『ユニークプラント』
『プレデーションプラント』
『マイナーウッド』
『マイナーフラワー』
多いね。そして恐ろしい選択肢がある。
プレデーションプラントはたぶん『捕食』のせいかな。『捕食』ができるようにするため、進化先が用意されたんだろう。食虫植物のようになるのか、口ができて食べれるようになるのか分からないけど、あまり選びたくない選択肢だ。
自分には『吸収』があるから、わざわざ『捕食』使う意味がない。
そうなると残った選択肢はこのまま草で居続けるか木か花になるかだ。
匂いで獲物を呼び寄せるんだから花になるってのも面白そうだし、大きさを求めて木になるのもいいかもしれない。
草は今の純粋な強化だから新鮮味はないね。だけど一番安定していると思う。考えすぎかもしれないけど、一度木や花になると草には戻れない気がする。草が成長して木や花になるのはまだありえるけど、逆はないはずだからね。
……草かなぁ。木や花になって目立つのは今の自分には向いてない気がするし、将来性がある方が良いだろう。
それじゃあ、ユニークプラントに進化だ。
【ユニークプラントに進化します】
声が聞こえた後、前と同じように意識が遠のいていく。これに耐えられたら進化した時の情報が分かり易いんじゃないかなと思いながら、素直に身を任せる。
気絶みたいな感じだけど、まあ、おやすみなさい。
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おはようですけど、こんばんは。起きたら夜になってました。
進化する時の睡眠は半日も寝てないんじゃないかな。前は夜から朝だったし今回は逆だった。もしかしたら1日以上経ってるかもしれないけど、それは判断することできないね。
さあ、今回もステータスを見てみよう。どんな変化があったかな?
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名前:***** 種族:ユニークプラント LV1
状態:-
ステータス
HP:201/201 MP:32/32
攻撃:8 物防:16 器用:21
魔力:23 魔防:10 知能:21
速度:4 幸運:15
振り分け可能ポイント:29/29
<アクティブスキル>
光合成LV4、想造LV3、複製LV3、自己ステータス閲覧LV-、罠作成LV2、風魔法LV3、音魔法LV4、吸収LV3、捕食LV1、誘惑の香りLV1
<パッシブスキル>
言語理解LV-、貯水LV4、格上補正LV2、音波感知LV4、称号知識LV2、スキル知識LV1、魔法並列使用LV2、睡眠攻撃LV1、成長LV1
使用可能スキルポイント:23
<称号>
『異世界人』『意志ある植物』『弱食強肉』『罠師』『贋作師』『称号収集家』『スキル収集家』『捕食者』『ユニークモンスター』『成長する者』『称号愛好家』
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新しく手に入ったのは『成長』のスキルと3つの称号かな。
『成長』は経験値の獲得量が上がるスキルらしい。
称号の『ユニークモンスター』はユニークと名が付く魔物に与えられて、スキルポイントが追加でもらえる。『成長する者』は短期間で急成長したら貰えて、『成長』のスキルが手に入る。『称号愛好家』は一定数の称号を手に入れることが条件で、『称号知識』のレベルを2にしてくれたみたい。
ちなみに『称号知識』は名前を知っている称号の説明が見れるようになった。
やっぱり進化はいいね。進化した後のステータス確認が楽しすぎる。『成長』のおかげでレベルが上がりやすくなったから、これからも楽しみにさせてもらおう。
それより、『称号愛好家』があるってことは『スキル愛好家』もありそうだね。条件はスキル数20個とかかな。だとしたらもう1個スキルを覚えたら手に入りそう。
スキルポイントもたっぷりあるし、何か取ってしまおうか。『スキル知識』も『称号知識』と同じなら持ってないスキルの説明が見れるだろうし、今後の役に立ちそうだからね。
……そういえば『超音波』ってスキルあったよね。もしかしたらこれ、ポイント使わなくても取れるんじゃないかな?
『音魔法』で超音波を発生させる事は理論上は可能だと思う。同じ音だし『風魔法』から『音魔法』がでたこともあるから、きっとできる。
よし、今日はとことん『音魔法』を使ってやるか。『音魔法』を使いまくってもMPが回復し続けるだろうから今夜も徹夜になりそうだ。