王宮入り
鋭い目付きをした男、天迅は不機嫌さ丸出しで仙人のような老人、宵と対面していた。
「いったじゃろう。明日また来ると。」
「ええ、聞きましたとも。そして、私が了承しなくともあなたが来るであろうことは想定内です。」
「ならばなぜそんなに不機嫌なんだ?」
「…貴方が私の承認前に例の件を了承したせいでしょう。」
天迅の手には例の件とやらの正式任命書類が握られていた。
「だから言ったろう?断れんと。」
「この、狸め。」
天迅がそれだけで人1人殺せそうなほどの殺気を放つが宵にはあっさりとかわされてしまう。
「天迅、いくら旧知の仲とは言え国の3本指には入る権力者、宵宰相にその言葉使いは無いだろう。」
老人は実はかなり身分の高い人だった。
「そんなものは今さらでしょうに。」
天迅は諦めたようにそう呟くのだった。
次の日、天迅はいつものボロ着ではなく、張りのあるキチッとした正装にみを包んで王宮の門前にたったいた。
「はぁ、もうここに戻ることはないとおもっていたんだがな。」
天迅はよく見覚えのある王宮の巨大な門を前に哀愁漂うため息をもらしたのだった。
「よくおいでなさいました。皇帝専属教育官、紫天迅殿。」
門番の言葉と共に天迅は王宮へと足を踏み入れたのだ。